年収103万円の壁が「123万円」に!「パートの配偶者」や「アルバイトの子ども」がいなくても“減税”になるって本当? 年収600万円の人を例に影響を解説
配信日: 2025.03.02 更新日: 2025.03.03

しかし、この税制改正によって、ほとんどの人が減税となるのです。本記事では年収600万円の人を例にして、どの程度、どのタイミングで減税となるのかを解説します。

執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
年収103万円の壁が123万円の壁になるというのはどういうこと?
これまで「年収103万円の壁」は主に2つの意味を持っていました。まずはそれがどう変わったのかを見ていきましょう。
所得税が課税・非課税となる境目の年収が変わった
103万円の壁の1つ目の意味は、所得税がかかるか、かからないかの境目ということです。そもそも給料にかかる所得税は以下の手順で求めます。
1.「給与収入」から給与所得控除を引いて「給与所得」を求める
2.「給与所得」から各種控除(基礎控除など)を差し引いて「課税所得」を求める
3.「課税所得」に定められた税率をかけて所得税を計算する
2024年までは給与所得控除として最低額55万円、合計所得が2350万円以下の人は基礎控除として48万円と、最低でも合計103万円の控除を受けられました。給与年収が103万円以下の場合、給与収入が控除額以下となるため、所得税がかからなかったというわけです。
2025年からは給与所得控除の最低額が65万円、基礎控除が58万円(年収2350万円以下の場合)となったため、最低でも123万円の控除を受けられることになります。これにより、年収123万円までは所得税がかからなくなったのです。
家族の扶養に入れる年収の基準が変わった
2つ目は、税制上の扶養に入れるかどうかの境目という意味です。これまでは、例えば学生のアルバイト収入が103万円を超えると扶養から外れ、扶養者(親など)の税金負担が増えていました。
2025年からは給与収入が103万円を超えても123万円以下であれば、税制上の扶養となれるため、家族の税負担を気にせずに働けます。
なお、配偶者の場合は配偶者特別控除があるため給与収入が160万円まで、19歳から23歳未満の子どもの場合は新設された特定親族特別控除により150万円までは親の税負担を気にする必要はありません。
基礎控除10万円アップは多くの人に恩恵がある
ここまでで、夫婦共働きの家計やアルバイトの子どもがいない人にとって、今回の税制改正は無関係と感じるかもしれません。
しかし、多くの人は基礎控除が48万円から58万円に引き上げられることの恩恵を受けられます。基礎控除は所得が2500万円以下であれば全ての人に適用できるため(今回の改正で10万円アップとなるのは所得2350万円以下の人のみ)です。
基礎控除が10万円増えると、10万円×所得税率分だけ税負担が減ります。所得税率は所得が高い人ほど税率が高くなる累進税率です。年収600万円の場合、所得税率が10%であることが多いため、10万円×10%で年間1万円の税負担が軽減されます。なお、家族の状況やそのほか各種控除の適用によって異なる場合があります。
ただし、住民税に関しては基礎控除額が43万円のまま据え置かれるため、住民税の負担が減ることはありません。
税負担が減るのはいつから?
基礎控除10万円アップは2025年から適用されます。したがって、1月の給与から手取りが増えるのかなと期待する人もいるかもしれませんが、残念ながらそうはなりません。
2025年の税制改正大綱には「給与等および公的年金等の源泉徴収については、2026年1月1日以後に支払うべき給与等または公的年金等について適用する」と明記されています。
したがって2025年は年末調整にて改正後の税金計算を行い、年末調整の還付が増える(もしくは追加徴収が減る)という形で減税を実感できるのです。
身近なお金に関するニュースに目を向けよう
2025年の税制改正は、パート配偶者や学生アルバイトが働きやすくなるという点に注目されがちです。しかし、独身の人や夫婦共働き、学生の子どもを持っていない人でも多くの人の税負担が減る内容になっています。
このように、自分には関係がないと思った話題が、実は関係することもあるのです。現在、税制が見直され、大きな変化が起きようとしています。自分は対象外だと思う話題にも、興味を持って接してみると新たな発見があるかもしれません。
出典
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1199 基礎控除
国税庁 No.1195 配偶者特別控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
財務省 令和7年度税制改正の大綱
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士