今春、社会人になります。親に「会社に入ったら財形貯蓄を始めなさい」と言われました。どのようなメリットがありますか?
配信日: 2025.03.06

なお、財形貯蓄を利用するには、従業員が所属する企業などが、あらかじめ制度を導入していることが必要です。

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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一般財形貯蓄
一般財形貯蓄は使用目的を問わず、従業員(年齢制限なし)が、金融機関などと契約を結んで原則3年以上の期間にわたって、毎月の給与やボーナスから控除(天引き)により積み立てていくしくみです。財形年金貯蓄や財形住宅と異なり複数の契約もできます。
貯蓄開始から1年たてば自由に払い戻しできます。財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄と違い利子等に対する非課税措置はありません。他の預貯金同様、利子等に対し20%課税されます。結婚や出産、教育などのライフイベント費用や病気など不意な支出に備えることができます。
積立限度はありませんが、生命保険3000万円、郵便貯金1300万円を限度とするなど、貯蓄商品によって制限が設けられている場合があります。
財形年金貯蓄
60歳以降に年金として受け取るための老後の資金づくりを目的に、55歳未満の従業員が金融機関などと契約(1人1契約)を結んで、5年以上の期間にわたって定期的に給与からの控除(天引き)により積み立て、60歳以降の契約所定の時期から5年以上20年以内(保険商品の場合、終身受け取りもできます)の期間にわたって年金として支払いを受けることを条件に、利子等に対する非課税措置を受けることができます。
年金以外の払い出し(一括払い等)を行うと要件違反として原則、非課税措置はなくなり、残額は財形年金貯蓄として認められなくなりますので、全額解約となります。また、利子等に一定の条件で課税されます。
財形住宅貯蓄
住宅の取得または住宅の増改築(リフォーム)等を目的に、55歳未満の従業員が金融機関などと契約(1人1契約)を結んで5年以上の期間にわたって定期的に給与からの控除(天引き)により、積み立てていくしくみです。建設・購入・リフォームする住宅には、床面積などの要件があります。
財形住宅貯蓄の契約者が居住する住宅の取得、または住宅の増改築(リフォーム)等工事を行ったことを証明する書類を金融機関に提出することで、利子等に対する非課税措置を受けることができます。
なお、住宅の建設・購入・リフォーム以外の払い出しは要件を満たさないため、利子等に課税されます。
従業員のメリット
従業員は、結婚、出産、マイホーム購入などのイベントで必要となる資金を、給与天引きにより手間なく確実に貯蓄ができます。毎月の積立額は給与明細で確認できます。
財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄には、利子等に対する非課税措置があります。具体的には、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄あわせて元利合計550万円(生命保険等の場合は払込額で385万円、財形住宅貯蓄の場合は550万円)まで利子等が非課税とされます。
財形持家融資を利用できます。財形持家融資は、一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄を行っている従業員が利用できる住宅ローンです。
融資限度額は、財形貯蓄残高の10倍以内で最高4000万円まで、住宅の建設・購入・リフォームに要する費用の原則90%以内となっています。償還期間は35年以内、5年固定金利で5年ごとに金利が見直されます。
社会人になったら、自分に合った財形貯蓄を選んで積み立てを始めてみてもいいかもしれません。
出典
独立行政法人 勤労者退職金共済機構(財形制度とは?)
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。