年収「103万円の壁」が改定されても、本当の課題は「130万円の壁」? それぞれで「引かれる金額」とは? 税負担を比較

配信日: 2025.03.30 更新日: 2025.04.01

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年収「103万円の壁」が改定されても、本当の課題は「130万円の壁」? それぞれで「引かれる金額」とは? 税負担を比較
「年収103万円の壁」が「123万円」に引き上げられると話題になっています。これにより、「パートやアルバイトで働いている人の負担が減る」と思う人も多いでしょう。しかし、103万円の壁はそもそも「所得税」が課税されるかの基準であり、手取りが大きく減るわけではありません。
 
本当に影響が大きいのは、「106万円の壁」や「130万円の壁」と呼ばれるものです。では、103万円の壁を超えたときと、106万円や130万円の壁を超えたときでは、実際にどれほどの違いがあるのでしょうか? 本記事で解説します。
浜崎遥翔

執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

年収103万円を超えるとどのくらい負担が増えた? 年収105万円と比較

「103万円の壁」とは所得税が課税されるかどうかの基準となるものです。これまでの税制で103万円を超えた場合の税負担について、年収103万円と105万円の税負担を比較しながら見てみましょう。
 
所得税は「課税所得金額×税率」で求めますが、年収がそのまま課税所得となるわけではありません。年収が103万円の場合も、105万円の場合も、給与所得控除55万円と基礎控除48万円を差し引けるため、課税所得は年収103万円の場合は0円で所得税はかかりません。
 
一方、年収105万円の場合の課税所得は2万円となります。課税所得が194万9000円以下の場合の税率は5%なので、年収105万円のときの所得税は年間1000円にとどまるのです。
 
103万円を超えて所得税が課税されることになったとしても、税負担は「103万円を超えた金額の5%」増えるだけなので、それほど大きく手取りが減るわけではありません。
 

年収106万円の壁を超えると負担が大きくなる?

103万円の壁は超えても影響は小さいのですが、106万円の壁は状況が異なります。社会保険料の負担によって手取りが減るからです。
 
以下の5つを全て満たした場合、勤務先の社会保険への加入が必要になります。

●週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
●月収が8万8000円以上
●2ヶ月を超えて働く見込みである
●学生ではない
●従業員数が51人以上の企業に勤務している

この月8万8000円という基準を年収に換算すると、約106万円になるため「106万円の壁」と呼ばれています。
 
会社の社会保険に加入すると、給与から健康保険料と厚生年金保険料が天引きされます。月収が9万円(年収108万円)の場合で協会けんぽ(東京都)に加入している人を例にすると、健康保険料(40歳以上・介護保険を含む場合)として2025年度は月額5060円、厚生年金保険料として月額8052円の支払いが必要です。
 
106万円の壁を超えない場合は全く負担がなかったものが、年収がたった2万円増えただけで年額15万7344円の負担増となるのです。
 
ただし、社会保険に加入すると、将来の年金額が増えるほか、病気やけがで仕事を休んだ際に傷病手当がもらえるといったメリットもあります。負担増だけを見るのではなく、長期的なメリットも考慮することが大切です。
 
なお、NHKなどの報道によると、「月収8万8000円」という基準は、2026年をめどに撤廃されると言われています。これにより週に20時間未満に抑えることによって、年収106万円を超えても社会保険に加入しなくても良くなる見込みです。
 

130万円の壁は影響が大きい

企業の規模が小さく(従業員50人未満)、106万円の壁に該当しない人が意識すべきは「130万円の壁」です。
 
年収130万円を超えると、配偶者の社会保険上の扶養から外れます。国民健康保険と国民年金に加入しなければならず、保険料負担のため手取りが大きく減ることになるのです。
 
年収132万円のケースを例にすると、国民健康保険料は自治体によって異なりますが年間約12万5000円、国民年金保険料は年間約20万円であるため、合計で32万5000円ほどの負担増になります。社会保険料控除により、所得税や住民税が減りますが、大幅な手取りの減少は避けられません。
 
さらに、厚生年金に加入するわけではないため、将来の年金額が増えない単純な負担増となってしまうのです。
 
ただし、厚生労働省は「繁忙期に労働時間を延ばすなどで収入が一時的に増えた場合、事業主の証明があれば扶養のままでいられる」という仕組みを作っています。そのため、130万円を一時的に超えたからといって、すぐに扶養から外れるとは限りません。
 
とはいえ、継続的に超えていると判断された場合、大きな手取り減となるため、130万円を超えないように働くか、手取りの減少が気にならないくらい年収を増やすか考える必要が出てきます。
 

103万円の壁より、社会保険の壁に注意

103万円の壁が123万円に引き上げられても、実際の所得税の負担増は数千円程度にとどまり、大きな影響はありません。しかし、106万円や130万円の壁では社会保険の加入や扶養からの脱退によって、年間10万円以上の負担増になる可能性があります。
 
特に130万円の壁を超えると、国民健康保険と国民年金の加入が必要になり、年間30万円以上の社会保険料負担が発生します。今回の税制改正で103万円の壁は変わりますが、社会保険の壁は依然として大きな影響を及ぼすのです。
 
年収106万円や年収130万円という数字については、引き続き意識しながら働くようにしましょう。
 

出典

国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1199 基礎控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
厚生労働省 社会保険適用拡大 対象となる事業所・従業員について
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
 
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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