4月~6月に残業をすると「手取り」が減ると聞きました。これってどういうことでしょうか?
配信日: 2025.04.08


執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。

ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
4月~6月の残業は損?手取りが減るのはなぜ?
まず前提として、勤務先から支給される給料から税金や社会保険料などを差し引かれた金額が「手取り」になります。
実は、社会保険料の中には4月~6月に支払われた報酬に基づく標準報酬月額で計算される仕組みになっているものがあります。そのため、その時期に残業が多いと受け取る報酬額が上がる=給料から天引きされる社会保険料が高くなる=手取りが少なくなるといわれるのです。
ただし、「4月~6月分の報酬」ではなく「4月~6月に支払われた報酬」をもとに決まる点に注意しましょう。たとえば3月に働いた分を4月に支給する勤務先の場合は、「3月~5月の残業が多いと手取りが減る」ことになります。
なお、4月~6月に支払われた報酬を基に計算された社会保険料が反映されるのはその年の9月からです。勤務先にもよりますが、実際に手取りが変わる(天引きされる社会保険料が増減する)のは9月もしくは10月になるでしょう。
4月~6月の給料額が影響する社会保険料とは?どうやって金額が決まる?
給料から天引きされる社会保険料のうち、健康保険料と厚生年金保険料の金額は、「標準報酬月額」によって決まります。標準報酬月額とは、勤務先から受け取る給与などの報酬を金額ごとに区切ったものです。
たとえば、報酬月額(毎月の給与など)が29万円~31万円の人は「標準報酬月額30万円」となります。
全国健康保険協会東京支部の「令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」によれば、「標準報酬月額30万円」の人が負担する健康保険料は1万4865円、厚生年金保険料は2万7450円です。
標準報酬月額は、毎年4月~6月の報酬額をもとにして9月から改定されます(定時改定)。ただし、昇給や降給などがあって報酬額が大幅に変わった場合は、定時改定の時期以外でも「随時改定」が行われます。
前述の例の人が、3月~5月に残業が増えて4月~6月の給与額が上がり、報酬月額が31万円~33万円になったとしましょう。その場合、「標準報酬月額32万円」になり、従来から1等級上がることになります。
その結果、負担する健康保険料は1万5856円(+991円)、厚生年金保険料は2万9280円(+1830円)に増えます。
社会保険料が上がると手取りが減るので嫌だと感じる人も多いでしょう。ただし、厚生年金保険料を多く払っている分、もしものときの傷病手当金や将来受け取る厚生年金などの金額が増えるというメリットもあります。
まとめ
4月~6月に受け取った給料が多いと、その年の9月以降に社会保険料が上がり、手取りが減る可能性があります。3月~5月が繁忙期で残業が増えやすい人は要注意です。
ただし、目先の手取りが減ったとしても、健康保険や厚生年金から受け取れる金額が増えるという面もあるため、一概に損とは言えません。
社会保険料の仕組みやルールを知っておくと、「急に手取りが減って驚いた」「給与明細を見てもよくわからない」といった事態を防げるでしょう。
出典
日本年金機構 Q.標準報酬月額は、いつどのように決まるのですか。
全国健康保険協会 標準報酬月額・標準賞与額とは?
全国健康保険協会 標準報酬月額の決め方
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー