働き方や家計にかかわってくる「子育て支援制度」を知ろう
配信日: 2019.03.27 更新日: 2024.10.10
なぜ、今回、この制度を取り上げたかというと、これから出産を予定しているご家庭や、すでに乳幼児のお子さんのいるご家庭にとって、働き方や家計と密接にかかわってくるからです。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
目次
出産後、「出産手当金」と「育児休業給付金」により収入の目減りが補われる
以前の記事でもお伝えしましたが、出産してから8週間が経つまでがいわゆる「産後休業期間」です。
8週間なので、2ヶ月間です。労働基準法では、この期間、お母さんは働いてはいけません。つまり、お母さんが働くことができるようになるのは、赤ちゃんが生まれてから2ヶ月が経過し、その翌日からになります。
そして、産前休業(出産前6週間)から産後休業(出産後8週間)までの間に支給されるのが、健康保険による「出産手当金」です。
このタイミングで職場復帰せず、育児休業を取得する場合、原則として、お子さんが1歳になるまでが育児休業期間となり、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。
このように見ていくと、赤ちゃんが生まれた以降、原則として1歳になるまでの間、出産手当金と育児休業給付金により収入の目減りが補われるようになっています。
いつ職場復帰する?子どもはどこに預ける?
FP事務所をしていると、どのタイミングで職場復帰をしようかと悩まれている、妊娠中のお母さんと面談する機会があります。
その際は、もし職場復帰をするなら、お子さんの保育・教育環境を保育園、幼稚園、こども園などのうち、どこにしようと思っているかについて確認していきます。このとき、出てくる話が「子ども・子育て支援新制度」についてです。
仮に2019年10月から「保育園・幼稚園の無償化」が始まるなら、小さいお子さんを持つご家庭にとって、この「子ども・子育て支援新制度」への見方が少し変わってくると思います。
保育園や幼稚園などの利用料が無償化されるのは、以下のような乳幼児が対象になっています。
(1)住民税非課税世帯の0歳から2歳児の子供たち
(2)幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3歳から5歳の全ての子供たち
前回の記事で、すべてが無償化されるわけではないというお話をしました。原則的には、0歳時から2歳児のいる住民税非課税世帯と、3歳児から5歳児のいるご家庭で、保育園や幼稚園に通園した場合に、園料などが無償化される予定です。
0歳児~2歳児のいる住民税非課税世帯の「保育園・幼稚園の無償化」について
少し話を前に戻しますが、出産から2ヶ月間は、お母さんは働くことができません。
その代わり、この産後休業期間は産前休業期間と同様、収入の目減りを健康保険による出産手当金で賄うことができます。そして、原則として、この期間は赤ちゃんを保育園などに預けられない期間であるため、無償化などは関係ありません。
その後、産休期間が終わり、次に用意されている育休を取らずに、このタイミングで職場復帰をしようとする場合。また、育休取得後、原則として子どもが1歳になってから職場復帰をしようとする場合、これらのタイミングで初めて無償化云々の話が出てきます。
このときの無償化の対象は0歳児~2歳児のいる住民税非課税世帯です。
この場合、子ども・子育て支援新制度のもとでは、保育の必要がある場合、3号認定(保育認定:満3歳未満の保育を必要とする子ども)がされ、保育所・認定こども園・地域型保育のいずれかにお子さんを預けることになります。
このようなご家庭では、園料などの無償化により支出の軽減が図られ、かつ、お母さんの働き方も考慮した保育サービスを受けることができます。
ここで確認しておきたいことは、保育所・認定こども園・地域型保育の違いです。保育所はいわゆる保育園です。共働き世帯や親の介護などの事情で、家庭でお子さんを保育できない保護者が利用することができます。
認定こども園は、幼稚園と保育所の機能をあわせ持った施設です。利用できる保護者は、0歳児~2歳児までは保育所と同じです。
地域型保育は、家庭的保育(保育ママ)や小規模保育、事業所内保育、居宅訪問型保育と、少人数の単位で0歳児~2歳児の保育を行う事業となっています。利用できる保護者は、保育所や認定こども園と同じです。
このように見ていくと、昔に比べ、かなり保育の環境にバリエーションがあるといえます。
子どもが3歳~5歳の「保育園・幼稚園の無償化」について
一方、子どもが3歳~5歳の場合、1号認定(教育標準時間認定:満3歳以上の小学校就学前の子どもで、学校教育のみを受ける子ども)、もしくは2号認定(保育認定:満3歳以上の小学校就学前の子どもで、保育を必要とする子ども)となり、これらの場合、幼稚園・認定こども園・保育園のうち、いずれかに子どもを通わせることになります。
1号認定と2号認定の違いは、教育なのか、保育なのかという点になります。教育の場合は幼稚園、保育の場合は保育所、そして、両方をあわせ持っている認定こども園の場合、1号認定でも2号認定でも受け入れられるということでしょう。
そして、子ども・子育て支援新制度のもとでは、この期間の子どもたちは、原則、園料などが無償化される予定です。
「子どもとの向き合い方」「どのように働くか」「家計の収支」は一体化して考える必要がある
日本の子育て支援制度は、今や、働き方改革とワンセットで実施されています。
産休期間中の出産手当金、育休期間中の育児休業給付金は、仕事を休んでいる間の収入減をカバーするためのお金です。そして、2019年10月より、職場復帰後はお子さんの年齢によって幼稚園や保育園など利用料が無償化され、子どもにかかる家計支出が軽減されていくでしょう。
このようにして、さまざまな形で仕事と家庭の両立支援が行われています。みんなで働くことで収入を増やし、消費を活性化させ、この国の経済を良くしていこうという大きな枠組みの中で語られるようになりました。
妊娠後から産休、育休、職場復帰。そして、子ども・子育て支援新制度による乳幼児の保育や教育。
小学校就学前のお子さんを持つご家庭にとって、「子どもとの向き合い方をどうするか」「どのように働くか」、そして「家計の収支」については、もはや一体化して考える必要がある項目になっているような気がします。
ここにややこしさや問題が多くはらんでいるわけですが、何を知って、何を選択するかは自分次第です。
ややこしいから噂に惑わされない、問題が出やすい事柄だから頭の中を整理して考える。複雑な社会制度を生きる私たちには、このような力が以前と比べてさらに求められているのではないでしょうか。
次回は、「結婚・子育て資金の一括贈与」についてお伝えしていきます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)