パートの妻が「年収178万円の壁」を気にして“働き控え”…社会保険料で「手取り減」でも、年200万円稼ぐほうが“将来的に得”ですよね? 老後の年金がいくら増えるのか試算
結論からいえば、目先の手取りは一時的に減ったとしても、将来の年金受給額まで含めて計算すると、社会保険料を払ってでも年収200万円を目指すほうが長期的には有利になる可能性が高いといえます。
本記事では、178万円の壁の正しい意味から、社会保険加入による年金増額の仕組み、さらに将来の年金まで含めた損益分岐点の考え方までを順に解説します。
FP1級、CFP、DCプランナー2級
年収178万円の壁とは?
「178万円の壁」とは、2026年から適用が始まる所得税の非課税ラインです。これまで「103万円の壁」と呼ばれていた基準が約30年ぶりに大幅引き上げとなり、年収178万円までの給与収入には所得税が課されなくなります。
ただ、178万円の壁はあくまで所得税に関する基準であり、社会保険の加入義務とは別の話です。社会保険への加入義務が発生する「106万円の壁」や、夫の扶養から外れる「130万円の壁」は引き続き残るため、2つを混同すると予期しない手取り減につながりかねません。
178万円という数字の根拠は、最低賃金の上昇率にあります。1995年度に全国平均611円だった最低賃金が2024年度には1055円と約1.73倍になっており、当時の103万円にこの倍率を当てはめると約178万円になる計算です。
壁を越えて働くと将来の年金が増額するメリットも
社会保険に加入して働くと、目先の手取りは減りますが、将来の厚生年金が増えるという重要なメリットがあります。厚生年金は国民年金(基礎年金)に上乗せされる「2階建て部分」として支給されます。
扶養内(第3号被保険者)では得られない、自身の報酬に基づいた老後の収入源を積み上げられるのがメリットです。将来受け取れる厚生年金の増額分は、「年収×加入年数×0.55%」で概算できます。
※正確には5.481/1000という係数に基づきますが、ここでは計算しやすい0.55%で概算します 。
例えば、年収200万円で10年間社会保険に加入した場合、年間約11万円(月額換算で約9200円)の年金が上乗せされる計算です。
また、年金以外にも、在職中に病気やけがで休んだ際の傷病手当金や、出産時の出産手当金など、扶養内では受け取れない給付が手厚くなる点も見逃せません。民間保険に頼らずセーフティーネットを得られる安心感は、数字以上の価値があるといえるでしょう。
将来の年金まで含めた年収の損益分岐点とは?
社会保険料を払ってでも年収200万円を目指すべきかは、将来の年金受給額まで含めた総合的な損得で判断する必要があります。年収200万円で社会保険に加入した場合、年間手取りは約170万円前後(※)となりますが、支払った保険料は将来の年金という形で回収できる仕組みです。
※社会保険料には健康保険や雇用保険も含まれますが、ここでは将来の年金額と比較するため「厚生年金保険料」に絞って算出しています。
年収200万円で10年間加入した場合、年金は年間約11万円増え、65歳から85歳の20年間受け取ると累計で220万円の上乗せになります。一方、支払う保険料のうち「将来の年金として還元される厚生年金保険料」は10年分で約187万円です。
20年以上受給すれば支払った保険料を上回る計算ですが、年金は一生涯続く「終身受給」です。単なる貯蓄とは異なり、長生きすればするほど増え続ける「長生きリスクへの保険」としての価値があります。
まとめ
年収178万円の壁は所得税に関するラインであり、社会保険の106万円・130万円の壁とは別物です。壁を越えて社会保険に加入すると目先の手取りは減りますが、将来の厚生年金が増えるという大きなメリットがあります。
年収200万円で10年間加入した場合、年金の増額分の累計は220万円(65歳から85歳の20年間受給の場合)になる計算であり、支払った厚生年金保険料の総額約187万円を上回ります。将来の年金まで含めた総合的な損得で判断すれば、社会保険料を払ってでも稼ぐほうが長期的には有利になる可能性が高いといえます。
出典
厚生労働省 最低賃金(全国加重平均)の引上げ額と引上げ率の推移
執筆者 : 高柳政道
FP1級、CFP、DCプランナー2級

