最近よく聞く「静かな退職」に少し共感しています。無理して働かないほうが楽ですし、コスパもいいと思います。問題はどこにあるのでしょうか?
出世を本懐と考える、昭和~平成を生きたビジネスパーソンからすると信じられないような価値観ですが、従業員の立場からするとワークライフバランス重視やメンタルヘルスに配慮できるといったメリットもあるように感じられます。
では、一体どのような問題点があるのでしょうか? 本記事で解説していきます。
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
目次
「静かな退職」とは? 労働に関する価値観が変化した?
仕事を優先するあまり、心身に不調を来してしまった。家族との関係性が悪化してしまった。にもかかわらず、不況に陥ったらあっさりリストラされてしまった……。
かつて従業員側は、「つらくても頑張ればマイホームを建てられるし、子どもも育てられる」と信じて疑いませんでした。しかし、バブル崩壊後の長期的な景気後退を経て、期待していた結果とは異なる現実に直面したことで、仕事を最優先とする価値観に大きな変化が生じていきました。
その結果、企業に尽くすのではなく、労働はあくまでも自分の人生を営むための「手段」と割り切る人が増えています。出世や創造的な挑戦を避け、自身のライフバランスを崩さないように立ち回るこうした姿勢は、今や「静かな退職」として社会的な関心(あるいは懸念)を集めるようになっています。
「静かな退職」の問題点とは? 使用者と労働者の価値観のミスマッチ
会社員は自身の「時間」を売ることで収入を得ている、と見ることもできます。しかし、ワークライフバランスを重視するあまり「無理をしない働き方」に終始してしまうと、労働者自身のスキル向上に制限をかけてしまうという問題点が生じます。
ただし、時間を売るだけの単純労働は、より安価な労働力、例えば現代においてはAIやロボットに仕事を奪われてしまう恐れがあります。
現に、産業革命期における急激な機械化は、熟練職人たちの労働条件の悪化や失業を招きました。現代の会社員に期待されているのは、単なるルーティンワークではなく、より難易度の高い仕事や高付加価値を生む業務です。
業務の質や量を自ら強化し、簡単には代替できない価値を提供することは、自分自身の収入を高めるだけでなく、雇用を守る「防衛策(バリアー)」を築くことにもつながります。
「静かな退職」が通用するのは、将来価値(ポテンシャル)の高さでカバーできる若いうちだけかもしれません。年齢を重ねるにつれて使用者側が期待する人物像とのミスマッチが広がり、結果として「静かな退職」的な働き方を維持すること自体が難しくなっていくという現実があります。
「静かな退職」はだめなのか? 楽をするのではなく、キャリアを築く時間に
「静かな退職」には、「使用者の期待に応えられない」「簡単に代替できるスキルしか獲得できない」といった明確なデメリットがあります。
これらは会社員を続けていくうえで無視できないリスクですが、もし「静かな退職」によって生み出した時間を、自身のスキルアップやキャリアアップのために投資するのであれば話は変わってきます。
例えば、難関資格の取得に励んだり、将来の起業を見据えて準備や人脈作りに充てたりするなど、前向きな目的があるならば、「静かな退職」は検討に値する戦略的な選択肢といえます。
また、出世から距離を置き、残業もしないとなれば、現役時代の収入が減少してしまうことは否めません。当然、将来受け取る退職金や老齢年金の額も減ることになります。
余暇で得た時間を単なる消費や娯楽に費やすのではなく、個人型確定拠出年金(iDeCo)やNISAなどを活用し、老後の資産形成を計画的に進めていく視点も忘れてはなりません。
まとめ~「静かな退職」の問題点は成長性の有無~
ワークライフバランスを重視し、負荷の大きい役職や業務から距離を置く「静かな退職」は、個人の成長性を鈍化させる恐れがあります。
成長性の鈍化は将来的な市場価値の低下を招きます。「代替できない価値の提供」が行えなければ、収入減少だけでなく、将来的にAIへ置き換わることによる失業リスクすら生じかねません。
「静かな退職」を選択する際は、単に業務の手を抜く(楽をする)のではなく、それによって得られた「空き時間で何をするか」を明確に描いたうえで進めることが重要です。
執筆者 : 菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表

