「退職金2000万円を3%の定期に入れた」と自慢していた父から、1年後「金利3%→0.3%」と“10分の1になった”と連絡が…もしかして銀行に騙された? 要注意な“特別金利”の仕組み
しかし、この高金利が適用されるのは当初の預入期間のみで、満期後に手続きをしなければ自動的に通常の店頭金利へ切り替わることがあります。この仕組みを知らないと、「3%で運用中のはずが、いつの間にか0.3%になっていた」という事態に陥りかねません。
本記事では、退職金特別金利定期預金の仕組みについて解説し、実際に受け取れる利息をシミュレーションします。また、満期後に使える有効な活用術についても紹介します。
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。
現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。
「年3%」は最初の数ヶ月だけ! 満期後は自動的に通常金利へ
退職金向け特別金利定期預金の中には、「年利3%」など高い金利を適用するプランもあります。通常の定期預金の店頭金利は年0.4%程度であることが多く、それと比べると数倍の水準です。
しかし、このような特別金利は、大口預金を獲得するための銀行側の戦略として用意されているもので、利用にはいくつかの制約が設けられているのが一般的です。
多くの銀行で、退職金向け特別金利定期預金は預入期間を1年未満とされていて、高金利はその期間のみに適用する設計になっています。さらに、投資信託やファンドラップといった別の商品と同時に契約することを条件にしている銀行もあり、定期預金のみで申し込める商品は限られます。
初めは高金利で預け入れても、満期を迎えた時点で手続きをしなければ、自動的に同じ期間の定期預金として継続され、その際は通常の店頭金利が適用されます。そのため、「高金利で運用できている」と思い込んでいると、気づいたときには想定と数10万円単位の差が生じていることになりかねません。
実際の手取り利息はいくら? 金利3%の実態を計算してみると
では、実際の手取り利息はいくらになるのでしょうか。退職金2000万円を年3%の定期預金に3ヶ月間預けた場合の受取利息を計算してみましょう。
この場合の「金利3%」は年率表示であり、実際の預入期間は90日です。そのため計算式は2000万円×3%÷365日×90日となり、税引前で約14万8000円の利息がつく計算です。預金利息には20.315%の税金がかかるため、税引後の手取りは約11万8000円となります。
その後、自動継続されて通常金利0.3%で9ヶ月間運用した場合の利息は、税引後で約3万6000円程度になります。1年間の合計は約15万4000円で、年間実質利回りに換算すると0.77%程度です。
仮に、2000万円を1年間3%の金利で預けていたら税引後で約47万8000円となります。「年3%の定期預金に退職金を預けた」と勘違いをしていると、実際の受け取り利息との差は32万4000円になるということです。
「年利3%で定期預金を預け入れた」とは言っても、それは最初の数ヶ月分にしか適用されないという認識が抜けていると、受取利息の感覚と実態は大きくずれてしまいます。
満期のタイミングで動くのが最善の対応
特別金利の恩恵を最大限に活かすには、満期を迎える前に次の預け先を検討しておくことです。すでに利用した銀行では特別金利の再利用はできないことが多いですが、別の金融機関の退職金専用定期預金は、退職日から一定期間内であれば申し込みが可能なケースがあります。各行の公式サイトで条件を確認してみてもいいでしょう。
また、満期が近づくと、銀行から連絡が入る場合もあります。その際はぜひ、他行への預け替えも含めて大切な退職金の運用相談の機会として活用してみてください。
まとめ
事例のように、退職金の特別金利が1年後に下がっていたのは、高金利の適用が当初の預入期間のみに限定されており、満期後は自動的に通常の店頭金利へ切り替わる仕組みになっていたためです。
年利3%のままなら得られたはずの利息と比べると、その差は約32万4000円にもなり、期待がはずれたような気分になってしまうかもしれません。まずは、現在の金利を把握し、他行への預け替えや、別の金融商品を検討してみてはいかがでしょうか。
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種

