
近年、大学の進学率が増えるにあたり、大卒と高卒の年収格差が注目されていますが、どれくらいの差があるのでしょうか。本記事では、生涯年収とはなにか、基本的な知識から大卒と高卒の年収格差について詳しく解説します。

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生涯年収とは
生涯年収とは、人が一生涯のあいだに手にする賃金の総額のことです。給与の総額になるため、手取りとは異なります。
一般的に手取りとは、所得税や住民税・社会保険料などの税金を引かれて、手元に残ったお金のこと。何が引かれるかは、企業ごとに異なることが多いため、給与明細をもらったら「額面収入」と「手取り収入」の確認が大切です。
大卒と高卒の年収格差
高校卒業を間近に控えると、大学に進学するか、高卒で就職するかで悩む人も多いでしょう。しかし、大卒か高卒かという学歴だけではなく、給与面などでさまざまな違いが出てきます。
この見出しでは、大卒と高卒の年収格差について詳しく解説します。生涯年収や平均年収・初任給の差などを見ていきましょう。
生涯年収の差
まず、大卒と高卒の生涯年収の差について見ていきましょう。独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表しているユースフル労働統計2019「生涯賃金など生涯に関する指標」によると、2017年の統計では図表1のような結果が出ました。
【図表1 学校卒業後、フルタイムの正社員を続けた場合の60歳までの生涯年収】
高卒 | 高専・短大卒 | 大学・大学院卒 | |
---|---|---|---|
男性 | 2億1000万円 | 2億2000万円 | 2億7000万円 |
女性 | 1億5000万円 | 1億8000万円 | 2億2000万円 |
高卒と大学・大学院卒の生涯年収の差は、男性の場合6000万円、女性の場合は5000万円もの差が出ることがわかりました。
なお、会社規模によっても生涯年収が変わることがわかっています。大学・大学院卒の男性の場合、企業規模1000人以上の会社だと、生涯年収が3億1000万円まで達しますが、企業規模10~99人の会社だと2億円になり、その差は1億1000万円です。
平均年収の差
次に、厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」より、図表2で大卒と高卒の平均年収を見ていきましょう。
【図表2】
高卒 | 専門学校卒 | 高専・短大卒 | 大学卒 | 大学院卒 | |
---|---|---|---|---|---|
男性 | 295万円 | 309万3000円 | 345万5000円 | 391万9000円 | 465万2000円 |
女性 | 218万円 | 263万4000円 | 258万円 | 288万3000円 |
男性の場合、高卒の平均年収は295万円ですが、大学卒は391万9000円となり、その差は96万9000円と約100万円近い年収の差があります。
続いて、女性の場合、高卒の平均年収は218万円、大学卒は288万3000円であり、その差は70万3000円。こちらも約70万円も変わってくることがわかりました。
初任給の差
一般財団法人 労務行政研究所の「2021年度 新入社員の初任給調査」によると、全産業の2021年度の初任給は、図表3で挙げる結果となりました。
【図表3】
高卒 | 短大卒 | 大学卒 | 大学院卒 | |
---|---|---|---|---|
21年度 | 17万2049円 | 18万3680円 | 21万3003円 | 22万9759円 |
高卒の初任給が17万2049円、大学卒は21万3003円であることから、初任給の差は4万954円です。なお、前年度初任給と比較した上昇率は、大学院卒が0.2%、短大卒と大学卒が0.3%、高校卒が0.4%となっています。
高卒でも年収をアップする方法はある?
大卒と高卒では、初任給や平均年収、生涯年収に差が生まれますが、専門スキルを身につけることで年収格差を縮められる可能性があります。専門スキルを身につける方法は、下記を参考にしてください。
●専門スキルが身につく企業に勤める
●働きながら専門学校などに行き、資格を取得する
また、課題解決力や交渉力、リーダースキルなどの「ポータブルスキル」は、どんな企業でも応用可能です。今の会社に勤めながらでも、十分に身につけられるものが多いので、資格ばかりにとらわれず、さまざまなスキルを探してみてください。
本当にやりたいことを見つけることが大切
高卒と大卒では、生涯年収・平均年収・初任給で大きな差がありますが、大卒でも大企業かそうでないかによって生涯年収が変わってきます。このことから、学歴問わず大企業に就職することで、生涯年収を上げられる可能性が見えてきました。
また、スキルアップをして、専門スキルを身につけることでも、年収アップにつながります。高卒でも、中学・高校時代にある程度のキャリアプランを固めて、その手段として進学か就職するかを選ぶようにすれば、生涯年収を上げられるかもしれません。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部