更新日: 2022.09.06 年収
年収ごとの手取り額はいくら? 最もお得な年収について解説
年収は高くなるほど税率も上がり、「高年収ほど損」といわれることもあります。この記事では年収ごとの手取り額と、最もお得な年収について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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額面から控除されるお金
まずは額面から控除されるお金にはどんなものがあるか、みていきましょう。
健康保険料
医療費の自己負担が3割となる国の医療保険制度です。給与・賞与によって決まる「標準報酬月額」と、「標準賞与額」保険料率をかけて、保険料を算出します。
保険料率は健康保険組合によって異なりますが、10%前後であることが多いでしょう。保険料の半額を事業主が負担するので、実際には4~5%となります。
厚生年金保険料
国民年金保険の上乗せとして、会社員や公務員が加入する年金制度です。
保険料は「標準報酬月額」と「標準賞与額」に保険料率をかけて算出します。保険料率は18.3%ですが、事業主と折半するため実際には9.15%となります。
雇用保険料
失業や休業した場合の手当が受給できる制度です。
保険料は、月の賃金総額に保険料率をかけて算出します。事業種類によって保険料率は異なりますが、一般的な事業の場合、労働者の負担は0.3%です(2022年10月からは0.5%に引き上げ)。
所得税
個人の収入に対してかかる税金が所得税です。
所得金額から所得控除の額を差し引いた「課税所得金額」に、所定の税率をかけて算出します。所得税率は図表1の通りで、所得が多くなるほど税率も高くなります。
【図表1】
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」
住民税
住んでいる都道府県・市区町村に納める税金です。
前年の所得に税率をかけて算出し、6月から翌年5月まで毎月分割して支払います。会社員の給料などは、税率10%がかかります。
年収ごとの手取り額一覧表
次に、年収ごとの手取り額をみてみましょう。
40歳以上の会社員で、配偶者(年間収入103万円以下)と16歳未満の子どもがいる人を想定し、おおよその金額を表にまとめています。年収に対する手取り額の割合も記載していますので、参考にしてみてください。
【図表2】
※住民税および健康保険料は、東京都の料率により算出
※厚生年金保険料は東京都のもので標準報酬月額を基に算出
※雇用保険は0.3%で算出
基本的に年収が高くなるにつれて、税金や保険料も上がります。
また、年収に対する手取り額の割合を見ると、年収が増えるほど手取り額が減っていくことが分かります。
最もお得な年収はいくら?
前の項目で説明のとおり、年収が低いほど手取りの割合は高く、お得といえます。
一方で、国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査結果」によると、会社員の平均年収は433万円となっており、実際には年収250万円~600万円前後の人が多いでしょう。
ここでは、お得の定義を「所得税率10%であること」として、世帯形態ごとのお得な年収を検証してみます。
所得税額10%が適用されるのは、課税所得金額が195万円超 330万円未満の人です。
独身の会社員の場合
年収ごとの課税所得金額をシミュレーションした結果は図表3のとおりです。
【図表3】
年収 (万円) |
給与所得控除(万円) | 基礎控除 (万円) |
社会保険料控除(万円) | 課税所得金額(万円) |
---|---|---|---|---|
500 | 144 | 48 | 74.6 | 233.4 |
600 | 164 | 48 | 91 | 297 |
700 | 180 | 48 | 107.3 | 364.7 |
800 | 190 | 48 | 120.4 | 441.6 |
課税所得10%に収まるボーダーラインは年収600万円と700万円の間になるため、年収650万円前後が最もお得な年収といえるでしょう。
夫婦と子ども2人の家族の場合
妻がパートをしており年収103万円以下、子ども2人は小学生とします。
夫婦の場合は配偶者控除が適用されますが、これは妻の年収が103万円以下でないと満額控除されません。
【図表4】
年収 (万円) |
給与所得控除(万円) | 基礎控除(万円) | 社会保険料控除(万円) | 配偶者控除(万円) | 課税所得金額(万円) |
---|---|---|---|---|---|
500 | 144 | 48 | 74.6 | 38 | 195.4 |
600 | 164 | 48 | 91 | 38 | 259 |
700 | 180 | 48 | 107.3 | 38 | 326.7 |
800 | 190 | 48 | 120.4 | 38 | 403.6 |
課税所得金額10%に収まる、年収700万円前後が最もお得な年収です。
また、子どもがいる家庭は図表5のとおり、児童手当の支援を受けることができますが、所得金額が高いと対象外になってしまいます。
【図表5】
児童の年齢 | 児童手当の額(一人当たり月額) |
---|---|
3歳未満 | 一律1万5000円 |
3歳以上小学校修了前 | 1万円(第3子以降は1万5000円) |
中学生 | 一律1万円 |
出典:内閣府「児童手当制度のご案内」
年収103万円以下の配偶者と子ども2人を扶養する場合は、所得上限限度額が972万円、収入額の目安が1200万円となります。
児童手当を受けられるという観点でも、年収700万円前後はお得といえるでしょう。
まとめ
年収が上がるほど税率も高くなり、手取り額の割合は減ってしまいます。生活していける収入で考えると、税金がお得なのは年収700万円前後となるケースが多いでしょう。
なお、今回紹介した手取り額はあくまで目安です。より正確な情報を知りたい人は、インターネット上のツールを活用してシミュレーションしてみてください。
出典
全国健康保険協会
全国健康保険協会 令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
日本年金基金機構 厚生年金保険料額表
厚生労働省 令和4年度の雇用保険料率
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2260 所得税の税率
東京都主税局 個人住民税
国税庁 令和2年分 民間給与実態統計調査結果
内閣府 児童手当制度のご案内
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部