更新日: 2022.10.04 年収
年俸制と月給制はどちらがいいのか。メリット・デメリットは? 税金に違いはあるの?
現在月給制で働いているという方の中には縁のない言葉だと思っている人もいるかもしれません。しかし、従来のような月給制ではなく、年俸制を取り入れる企業の数は年々増えてきています。
そこで今回は、年俸制と月給制それぞれのメリットとデメリット、税金の面ではどちらがお得なのかを詳しく解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
年俸制を採用する企業が増えてきている理由
年俸制とは、一般的に過去1年間の成果や業績に応じて、翌1年間の賃金額を決定する制度です。年俸額は社員が所属している会社と直接交渉し、お互いに合意した額となります。
年俸の支払方法は毎月年俸の12分の1ずつ支給されるか、夏冬のボーナスがある場合は年俸を14分割し、そのうち12回分を毎月の給与として、残りの2回分をボーナスとして支給することもあります。
企業が年俸制を取り入れ始めている背景には、年俸制だと企業が事前に人件費を把握できることが挙げられます。
業績によって賞与が変動するというケースもありますが、基本的に年俸制では1年の最初にその年に支払う給与額を決定するため、1年の最初に企業はあらかじめいくらの人件費を支払わなければならないかを把握したうえで経営計画を立てられる、というわけです。とりわけ成果主義を採用している企業で多く取り入れられています。
一方、月給制の場合には給与額は毎月決定されます。職種にもよりますが、そもそも基本的に支給項目の金額が大きく変動することは少ないかもしれません。ただ、このように毎月給与額の決定をする場合はそのためのコストもかかりますし、企業にとっては将来にいくらの人件費がかかるのか事前に予想できないことになります。
年俸制のメリットとデメリット
それでは、社員にとって年俸制にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
年俸制の場合、その年にいくらの給与が支払われるのかを社員も事前に知ることができます。賞与分の変動はあるかもしれませんが、突然業績の悪化などの理由で減給されてしまうことはありません。長期ローンを組んでいる人にとっては返済計画を立てやすい制度だといえるでしょう。
また、年俸制を採用している企業の多くは成果主義を採用しています。そのため、結果を残せば大幅な給与額アップも期待できます。そのことをモチベーションにしてもっと頑張って働こう、と考える人も多いでしょう。
とはいうものの、年俸制の場合には逆に成果主義によって給料が下がることもあるので注意が必要です。成果を出し続けなければ、前年の年俸を維持することはできません。そのことをプレッシャーに感じる人もいるでしょう。
年俸制と月給制、保険料や税金はどっちが得?
年俸制における保険料や税金の支払い金額は、給与をどのような方法で受け取っているかで異なります。なぜなら、給与から天引きされる各種保険料や所得税・住民税額は標準報酬月額と標準賞与月額で異なるからです。
例えば、東京都に住んでいる年俸600万円の人が12回に分けて毎月給与を受け取っているとしましょう。その場合、標準報酬月額が30等級なので健康保険料は毎月4万9050円(折半額は2万4525円)、厚生年金保険料は毎月9万1500円(折半額は4万5750円)になります。
一方、14回に分けて給与を受け取っている場合、標準報酬月額が28等級となるので健康保険料は毎月4万3164円(折半額は2万1582円)、厚生年金保険料は毎月8万520円(折半額は4万260円)になります。しかし、14回に分けている場合はこの金額に賞与分を足さなければなりません。
標準賞与額は賞与額から1000円未満の端数を切り捨てて保険料率をかけた額です。この場合、85万7000円に9.81%をかけた額8万4071円(折半額は4万2035円)が健康保険料、18.3%をかけた15万6831円(折半額は7万8415円)が厚生年金保険料です。
合わせて健康保険料は年間で60万2039円、月額だと5万169円(折半額は2万5084円)になり、厚生年金保険料は年間で112万3071円、月額だと9万3589円(折半額は4万6794円)です。
重要なことは、ここまで述べてきた計算式は月給制の場合でも同じだということです。
年収600万円で賞与なしの月給制の人も、やはり健康保険料は毎月4万9050円(折半額は2万4525円)、厚生年金保険料は毎月9万1500円(折半額は4万5750円)になります。年収600万円のうち年に2回1ヶ月分の賞与額を受け取って年収600万円になる月給制の人は、健康保険料が月額5万169円(折半額は2万5084円)、厚生年金保険料が月額9万3589円(折半額は4万6794円)です。
つまり、年俸制であれ月給制であれ、各種保険料や健康保険の種類、税金額は受け取った金額や賞与額がいくらか、どこに住んでいるのかによって変わります。
そのため、年俸制と月給制のどちらの方が保険料や税金が得になるということはありません。年俸制であれ月給制であれ、支払う保険料や税金の額は同じ条件であれば同じ金額になるのです。
年俸制で契約する際はメリットとデメリットをよく考えよう!
年俸制であれ月給制であれ、各種保険料や税金の面では違いはありません。重要なことは、年俸制と月給制のどちらが自身の働き方やライフスタイルにとってメリットがあるかです。
仕事の成果を認めてもらって給与の額を上げていきたい上昇志向型の人にとって年俸制は大きなメリットがあるでしょう。一方、成果を求められることをプレッシャーに感じる人にとってはそうではないかもしれません。
出典
全国健康保険協会 令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー