「年収は“普通”でいいから平和に暮らしたい…」実際、普通の年収で暮らせるの?
配信日: 2022.11.29
今回は、日本の平均年収から「普通」の年収がいくらなのか検証してみます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
日本の平均年収はここ10年で増えている
国税庁が公表している「民間給与実態統計調査」によれば、令和2年の日本の平均年収は433万円です。過去10年をさかのぼってデータを参照すると、この10年の平均年収は増加傾向にあります。10年前の平成22年は平均年収が412万円でした。令和に入って少し減少しますが、それでも10年間で日本の年収は少しずつ伸びているといえます。
平均年収を「普通」の年収と見なすとすれば、令和2年の平均年収433万円がいわゆる「普通」の収入だといえそうです。ただ、ここ10年で平均年収自体は増加傾向ですが、ここには物価の変動による影響は含まれていません。特に物価が高騰している時代では、物価の変動を加えて考えなければ実態は見えてきません。では、日本の物価はこの10年でどのように推移しているのでしょうか。
物価が上昇すれば「普通」の年収があっても生活は苦しくなる
総務省統計局の「消費者物価指数」には、令和2年(2020年)を基準とした物価の動向を調査したデータがあります。それによれば、令和2年の物価を「100」とした場合、10年前の平成22年(2010年)の物価は「94.8」です。
これはつまり、令和2年に比べて平成22年は物価がかなり安かったことを意味しています。確かに、日本の平均年収はここ10年で増加傾向にはありますが、物価も同じように高くなっていることを考慮すると、生活の質としてはほぼ変わらないか、あるいはより苦しくなっているともいえるわけです。
また、令和2年と比較して、令和4年はさらに物価が上昇しています。令和4年11月時点ではまだ通年のデータは発表されていませんが、月別の物価動向を見ると、前年より3%ほど物価が上昇している月が続いています。このまま物価が上昇し続ければ、いわゆる「普通」の年収があっても、消費支出が増えて生活が苦しくなってしまうかもしれません。
平均年収とは違う? 年収の中央値とは
平均年収を「普通」と考えれば、年収433万円が「普通」の年収といえますが、同調査においては、平均値をもって実態を把握するには「欠陥指標だ」という意見もあります。
なぜなら、平均値は一部の高い数字によって「上振れ」を起こす恐れがあるからです。平均年収でいえば、高額所得者の存在によって全体的な数値が押し上げられ、実態がつかみにくいという側面があります。
そのため、より実態に近い数値を求めるためには、平均値より中央値を参照したほうが良いといえます。中央値とは、データを小さい順に並べたときに、ちょうど真ん中にくる数字のことです。平均値のように一部の大きな数字による上振れが起こらず、より正確な実態的数値を把握することができます。
厚生労働省の「令和3年賃金基本構造統計調査」には、賃金の中央値が掲載されたデータがあります。国税庁の調査とは算出方法が異なるため一概に比較はできませんが、それによれば日本で働く一般労働者の賃金中央値は269.1万円です。平均年収とは相当な開きがあり、これを「普通」の収入と見なすとすれば、近年の物価変動の影響はより大きくなりそうです。
「普通」の年収では厳しい? 平和な生活を望むなら普通以上が必要か
日本の平均年収から「普通」の年収を算出した場合、その金額は令和2年のデータで433万円となります。単身者で年収が433万円あれば、基本的には穏やかで平和な生活が送れるかもしれません。
しかし、物価の変動を加味した場合、普通の年収があっても平和な生活が送れるとは限りません。また、平均値ではなく中央値を「普通」と考えると状況はより厳しくなります。物価が高騰する時代では、「普通以上」を望む必要があるのかもしれません。
出典
国税庁 令和2年分 民間給与実態統計調査
総務省統計局 消費者物価指数年報 令和3年 2021年(令和3年)平均消費者物価指数の動向
総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)9月分
厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部