更新日: 2022.12.29 年収

【2023年4月】「デジタル給与」が解禁に! その背景やメリットを解説

【2023年4月】「デジタル給与」が解禁に! その背景やメリットを解説
2022年10月に、厚生労働省の労働条件分科会は「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案」を発表しました。省令案では、デジタルマネーでの給与受け取りを可能にする制度改正案が盛り込まれ、25年ぶりに給与の振込先が拡大します。
 
しかし、なぜ2023年4月に「デジタル給与」が解禁されるのでしょうか。その背景とメリットについて解説します。
川辺拓也

執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)

2級ファイナンシャルプランナー

デジタル給与が解禁される背景と仕組みは?

デジタル給与が解禁される背景には、以下の理由があります。
 

●キャッシュレス決済の普及促進と利便性向上
●外国人を対象にした労働環境の整備

 
経済産業省は、将来的なキャッシュレス決済比率を、2025年までに4割程度、将来的に世界最高水準の80%まで上昇させることを目標に、普及を推進しています。そのためにも、デジタル給与を活用して、キャッシュレス決済を促す事業が欠かせません。
 
また、銀行口座を開設できない外国人の、労働環境を整備する必要もあります。デジタル給与が解禁されると、銀行口座を開設しなくても収入を受け取れるので、働きやすくなるでしょう。
 
こうした背景のもと解禁されるデジタル給与ですが、取り扱える業者(資金移動業者)は厳格な基準をクリアする必要があります。資金移動業者がデジタル給与を取り扱うには、以下の要件を満たす必要があります。
 

●デジタル給与を受け取る口座残高を上限100万円に設定可能
●資金移動業者が破綻した場合に口座残高の全額を保証
●不正な取引が発覚した場合の補填(ほてん)が可能
●口座残高に変動があった最終日から10年間は利用可能
●1円単位で資金の移動が可能
●毎月1回は手数料等の負担不要で賃金の受け取り可能
●業務や財務の状況を厚生労働大臣へ報告可能
●社会的な信用を維持できる業務レベル

 
以上の要件を満たした上で、厚生労働大臣から指定を受ける必要があります。また、労働者が同意しなければ、企業はデジタル給与で払えません。では、デジタル給与によってどのようなメリットがあるのでしょうか。
 

デジタル給与のメリットとは?

デジタル給与を導入するメリットは、企業側と従業員側それぞれにあります。それぞれのメリットは、図表1の通りです。
 
図表1
 

 
筆者作成
 
企業側のメリットは、これまでの振込手数料というコストの削減と、多様な給与支払いに対応することにより人材を確保しやすくなるという期待が高まることです。
 
ただし、デジタル給与での受け取りに従業員が同意しなかった場合は、現行の賃金払いと並行して運用するため、事務作業の負担が増します。従業員側はデジタルマネーが直接送金されるので、資金移動する手間がかかりません。給与口座がなくても収入を得られるので、利便性が向上する点が、メリットといえます。
 

デジタル給与が今後のキャッシュレス決済の普及を推し進めるか注目

デジタル給与が解禁される背景やメリットについて解説しました。企業と従業員にとって、メリットもあれば懸念される点もあるので、導入企業がどこまで増えるかは慎重に見る必要があります。
 
金融庁に登録されている資金移動業者は2022年12月時点で84業者です。すでに「PayPay」や「楽天Pay」「au PAY」など、次々とデジタル給与の導入を決めています。今後、どこまでデジタル給与が浸透していくのか、引き続き注目していきましょう。
 

出典

厚生労働省 労働基準法施行規則の一部を改正する省令案

経済産業省 2021年のキャッシュレス決済比率を算出しました

金融庁 資金移動業者登録一覧

 
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー

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