【数万円の差が!?】自営業の「専従者給与」と「配偶者控除」。どちらを使えば節税になりそう?
配信日: 2023.02.21
本記事では、どちらを使えばいくら節税になるのか、試算を交えて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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専従者給与・配偶者控除とは?
専従者給与とは「個人事業主が生計を同一にしている家族・親族に支払う給与」を指します。個人事業主(副業を含む)であり、必要条件を満たせば、働いている家族・親族に給与を支払える制度です。
大きく分けて「事業専従者控除(白色申告専従者)」「青色事業専従者給与」の2種類があります。
配偶者控除とは「所得が一定金額以下の配偶者が居る場合、税金を軽減する」という制度で、会社員の年末調整などにも使われ一般的に知られています。控除額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額によって異なり、例えば納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合、38万円(配偶者が70歳以上の場合は48万円)が控除されます。
「専従者給与」と「配偶者控除」は併用できないので、どちらを選択したら節税になるのか、確定申告を行う前に試算してみることが必要です。
2種類の専従者給与制度の違いは?
専従者給与には2種類あり、それぞれに控除できる金額が違うのが大きな特徴です。
<事業専従者控除(白色申告専従者)>
(1)配偶者の場合は86万円、そのほかの親族の場合は50万円
(2)前年の事業所得の金額を「1+専従者の人数」で割った金額
上記2つの、どちらか少ない金額を所得金額から控除できます。
最大86万円が所得控除になりますが、高額な給与を支払っていても控除額は86万円が上限です。
<青色事業専従者給与>
金額に上限がないため、支払った給与の全額が「経費」として計上できます。この制度を利用するためには、税務署に事前に「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」の提出が必要です。
ただし、支払う給与は「仕事の対価として適正な金額であること」が必須で、節税になるからと高額な給与を支払ったと申告すると、税務署から問い合わせが来る可能性があるので注意が必要です。
両方に共通する「専従者にできる条件」は、以下の3点です。
●確定申告者と生計を一にする配偶者やそのほかの親族である
●その年の12月31日時点で15歳以上である
●年間で6ヶ月を超えて、申告者が行う事業に従事している(ほかに仕事をしていない)
いくら節税になるか試算してみよう
配偶者控除、事業専従者控除、青色事業専従者給与、それぞれを行った場合で試算してみます。
<試算モデルケース>
●40歳未満で、収入370万円、経費70万円、配偶者に90万円支払っている個人事業主Aさんの場合(国民年金と国民健康保険に加入。医療費控除などはない。配偶者との2人家庭)
配偶者控除の上限38万円、事業専従者控除の上限86万円なので、事業専従者控除を申請する方が課税所得が少なくなります。
【図表1:配偶者控除と事業専従者控除(白色申告専従者)の場合の比較】
配偶者控除のみ | 事業専従者控除を適用 | |
---|---|---|
所得(収入-経費70万円) | 300万円 | 300万円 |
基礎控除 | 48万円 | 48万円 |
事業専従者控除 | 0円 | 86万円(上限額) |
配偶者控除 | 38万円(上限額) | 0円 |
国民年金保険料 | 39万8160円 | 39万8160円 |
国民健康保険料 | 約35万3100円 | 約27万1900円 |
課税対象になる所得 | 約138万7920円 | 約98万9920円 |
所得税(課税所得×5%) | 約6万9396円 | 約4万9496円 |
筆者作成
※国民年金保険料は令和4年度の1万6590円で算出しています。
※国民健康保険料は自治体によって違うため、概算を出しています。
青色事業専従者給与の場合は、支払った給与の全額が経費として計上できる上、青色申告を行っている場合は青色申告控除65万円が適用されるため、課税所得はさらに少なくなります。
【図表2:青色事業専従者給与の場合】
所得(収入-経費70万円) | 300万円 |
基礎控除 | 48万円 |
青色申告控除 | 65万円 |
青色事業専従者控除 | 90万円 |
国民年金保険料 | 39万8160円 |
国民健康保険料 | 約20万6800円 |
課税対象になる所得 | 約56万4000円 |
所得税(課税所得×5%) | 約1万8246円 |
筆者作成
※国民年金保険料は令和4年度の1万6590円で算出しています。
※国民健康保険料は自治体によって違うため、概算を出しています。
まとめ
白色申告を行っている場合での事業専従者控除と配偶者控除では、配偶者への給与として、年86万円以上支払った場合には事業専従者控除の方が税金でのメリットがあり、年38万円以下(月に約3万円程度)を支払った場合には配偶者控除の方が税金でのメリットがあります。
青色事業専従者給与の場合では、専従者に支払った給与全額が経費となるため、白色申告よりもメリットが大きいですが、給与を支払いすぎると逆に配偶者に税負担が発生するので注意が必要です。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1191 青色事業専従者給与と事業専従者控除
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部