更新日: 2023.03.12 年収

37歳専業主婦ですが「私の家事労働はタダ」ですか? 実際に費用を請求するならいくらが妥当でしょうか?

37歳専業主婦ですが「私の家事労働はタダ」ですか? 実際に費用を請求するならいくらが妥当でしょうか?
「家事に対する妥当な賃金はいくら?」 このような疑問を一度は持ったことがある人が多いのではないでしょうか。基本的に家事は直接的な収入が発生しないため、一見すると当たり前の奉仕のように思われがちですが、生活を成り立たせるためには決して欠かすことができません。
 
そこで本記事では、家事の価値を測るための方法として、家事労働の価値を金額に換算する方法を考えます。本記事を参考に、家庭内で家事について話し合う機会を設けてみてはいかがでしょうか。
橋本華加

執筆者:橋本華加(はしもと はるか)

2級ファイナンシャルプランニング技能士

家事労働の本当の価値は? 金額化するメリット

家事労働とは、洗濯・掃除・料理・育児などの家事全般を労働として捉える考え方です。総務省統計局が発表した「令和3年社会生活基本調査」によると、6歳未満の子どもを持つ世帯の1日当たりの家事関連時間は夫が1時間54分、妻が7時間28分です。特に小さな子どものいる家庭では、家事労働に多くの時間が費やされている実態が確認されました。
 
一般的に家事は賃金が発生することがないため、労働として認識しづらいという特徴があります。本記事では家事の価値を再認識するために、金額という物差しで定量化を試みます。給料をもらえる一般的な仕事と比較しやすい物差しを使うことで、価値の大きさをイメージしやすくするのが狙いとなります。
 
家事労働の価値を金額化することで、次のようなメリットが期待されます。
 

・家庭内で家事の価値への相互理解が生まれる
・家事負担分を分担する際の参考になる
・家事負担を減らすために何かを買う場合、掛けられる金額の参考になる

 
家事の価値を家族が共有し、家庭生活がより円満になるのが理想です。
 

家事労働費をお金に換算する方法とは

本記事の主題となる、家事労働費を金額に換算する方法を紹介します。内閣府が発表した「無償労働の貨幣評価」では、以下の3つの方法を挙げています。
 

・機会費用法
・代替費用法ジェネラリストアプローチ
・代替費用法スペシャリストアプローチ

 
以下で1つずつ、詳しく見ていきましょう。
 

機会費用法

機会費用法とは、家事労働を行った場合を「仕事に充てることもできた時間を家事に費やした」とみなし、仕事ができなかった分の損失額で家事労働費を算出する方法です。
 
例えば、厚生労働省が発表する「令和4年度地域別最低賃金額」の加重平均額961円を「家事労働がなければ稼ぐことができた最低額」として計算してみましょう。1日7.5時間を家事労働に費やした場合、機会費用法での家事労働費は以下のように計算できます。
 
1日当たり961円×7.5時間=約7208円
1ヶ月当たり7208円×30日=約21万6240円

 
つまり家事労働は、最低でも月収約21万6240円の労働と等しい価値があると考えられます。例として最低賃金を用いて計算しましたが、就業中や求職中、離職した人は、自分が働いている場合の時給を元に計算した方が、よりリアルな金額となります。
 

代替費用法ジェネラリストアプローチ

代替費用法ジェネラリストアプローチとは、家事代行サービス就業者の給与を、家事労働の金額としてみなす方法です。
 
求人検索エンジンIndeedによると、2023年3月時点での家事・清掃代行スタッフの平均時給は1306円です。これを元に毎日7.5時間の家事労働を行った場合の価値額を算出すると、以下のようになります。
 
1日当たり1306円×7.5時間=9795円
1ヶ月当たり9795円×30日=29万3850円

 
つまり家事労働は、月収約29万3850円の労働と等しい価値があるといえます。
 
なお、今回は家事代行サービス就業者の給与のみを参照しましたが、家事労働に子育てを含む場合は、子育てに費やした時間分をベビーシッターなどの職業の平均給与に当てはめるのが妥当です。
 

代替費用法スペシャリストアプローチ

代替費用法スペシャリストアプローチとは、家事に含まれる作業をそれぞれ内容の類似する専門職の賃金に置き換えて算出する方法です。
 
例えば毎日7.5時間の家事労働の内訳が掃除1時間・料理2時間・育児4.5時間だった場合を考えます。Indeedによると、2023年2月時点での平均時給は、清掃スタッフ1152円、調理スタッフ1117円、保育士1276円であるため、次のように金額を算出します。
 
1日当たり掃除(1152円×1時間)+料理(1117円×2時間)+育児(1276円×4.5時間)=9128円
1ヶ月当たり9128円×30日=27万3840円

 
つまり家事労働は、月収約27万3840円の労働と等しい価値があると考えられます。
 

見える化した家事労働費をどう生かす?

家事労働費の「見える化」を進めると、予想以上に高い金額が算出されて驚いた方も多いのではないでしょうか。家事にはそれほど大きな価値があるのだと、改めて認識できるはずです。しかし、家庭内で家事の対価の全額をお金で支払うのは厳しいと思いますので、次のようなアイデアが現実的ではないでしょうか。
 

・家庭内で家事分担を見直す
・お金ではない対価を設定する
・便利家電の購入を検討する

 
家事は誰かがタダ働きをして当然なものではありません。家庭内で上手に負担を分け合い、生活がうまく回るように協力し合えるのが理想的だといえるでしょう。
 

出典

総務省統計局 令和3年社会生活基本調査
内閣府 無償労働の貨幣評価
厚生労働省 令和4年度地域別最低賃金の全国一覧
Indeed 日本での家事・清掃代行スタッフの平均給与
Indeed 日本での清掃スタッフの平均給与
Indeed 日本での調理スタッフの平均給与
Indeed 日本での保育士の平均給与
 
執筆者:橋本華加
2級ファイナンシャルプランニング技能士
 

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