更新日: 2023.04.22 年収

春に残業すると「秋からの手取りが減る」って本当? 将来的には「得」になるの?

春に残業すると「秋からの手取りが減る」って本当? 将来的には「得」になるの?
「春に残業すると社会保険で損する」と耳にしたことはありませんか? 社会人の経験が長いと、その理由まで知っている人も多いでしょう。
 
社会保険料が上がると給与の手取りが減ることになるため、「とにかく損だ!」と思ってしまうかもしれませんが、実は得もあるのです。春の残業で社会保険料が上がることは、完全なる悪ではないことを知っておきましょう。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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春の残業で社会保険料が上がる理由

給与から天引きされている社会保険料の金額は、従業員それぞれの給与を基に日本年金機構が定めた「標準報酬月額」を使って算出されています。しかし、日本年金機構はどうやって従業員の給与を把握しているのでしょうか。それが「算定基礎届」です。
 
会社は毎年7月に日本年金機構へ、従業員それぞれの4月、5月、6月に支払われた給与を記載した算定基礎届を提出しなければなりません。そして日本年金機構は算定基礎届に基づいて、9月から翌年8月まで適用される標準報酬月額を決定します。これを定時決定といいます。
 
つまり、「春に残業すると社会保険で損する」というのは、春(4月、5月、6月)の給与は算定基礎届に書かれるため、残業代がつく分だけ高い給与になってしまい、標準報酬月額も高くなります。9月から翌年8月までは、基本的にその標準報酬月額によって社会保険料が計算されることから、残業代なしの月であっても残業代がある月と同じ社会保険料が天引きされることになるのです。
 

社会保険料には得もある

税金は支払っても自身に直接的な見返りがあるものではなく、「捨て金」のイメージが強い人も多いかもしれません。
 
社会保険料に対しても同じイメージを抱いている場合には、「春の残業は社会保険で損する」と思うかもしれませんが、社会保険料は税金と異なり、本人に直接見返りがあります。そして支払った金額が大きい人ほど、見返りの金額も大きくなるのです。具体的には以下のとおりです。
 

将来の年金が増える

社会保険料には見返りがあると聞くと、まずピンとくるのが年金でしょう。一般的に社会保険料とは、厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料の総称です。そのうちの厚生年金保険料は自身の将来の年金を支払っているのです。
 
また、老齢年金だけではなく遺族年金や障害年金にも影響するため、厚生年金保険料を多く支払っていれば、万一のときの助けも多くなります。
 

傷病手当金・出産手当金が増える

病気やケガで会社を休み給与を受け取ることができなかった場合には、健康保険から傷病手当金が支給されます。出産の場合には出産手当金です。支給額はいずれも標準報酬月額を基に計算される仕組みとなっているため、標準報酬月額が大きいほど、受け取ることができる傷病手当金または出産手当金が増えることになります。
 

育児休業給付・失業給付が増える

育児休業給付とは育児休業期間中に受け取ることができる給付金です。失業給付は会社を退職した人が次の就職先が見つかるまでの間に受け取ることができる手当で、失業保険、失業手当などとも呼ばれます。いずれも雇用保険の制度です。
 
支給額は、育児休業給付は原則として産前産後休業開始前6ヶ月間、失業給付は原則として離職した日の直前6ヶ月間の給与を基に計算されます。標準報酬月額が関係するわけではありませんが、対象となる6ヶ月間の中に春をはさんでいる場合には影響することになります。
 

まとめ

春に残業をすると社会保険料が上がる可能性がありますが、上がったからといって損しているわけではありません。将来の年金が増えるなど、社会保険料には見返りがあることも知っておきましょう。
 

出典

日本年金機構 定時決定(算定基礎届)

日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額

 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

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