給与のデジタル払いが解禁。メリット・デメリットは?
配信日: 2023.04.27
本記事では、給与のデジタル払い制度の概要と、そのメリット・デメリットについて紹介します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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給与のデジタル払いとは?
2023年4月1日から、給与のデジタル払いが解禁となりました。労働者が同意した場合に限り、給与の一部または全部を指定された資金移動業者の口座に支払えるようになり、銀行口座などへの振り込みも引き続き利用できます。
給与のデジタル払いを始めるにあたっては、各事業場で労使協定を締結し、個々の労働者に説明して同意を得る必要があります。
給与のデジタル払いは、スマートフォンの決済アプリや電子マネーへの送信により振り込まれますが、現金化できないポイントや仮想通貨での支払いは認められません。また、仮想通貨での支払いは不可です。
賃金のデジタル払いは選択肢の一つであるため、全ての労働者の支払い・受取方法を変更する必要はありません。また、賃金のデジタル払いを強制することはできず、強制した場合は労働基準法違反となります。
給与のデジタル払いのメリット
給与のデジタル払いが本格的に認められたことで、利便性が大きく向上します。これまで常識とされていたことが、時代に合わせて大きく変わることによって、さまざまな点がメリットとして挙げられますので、理解しておきましょう。
本項では、給与のデジタル払いが企業と従業員の双方に与えるメリットについて解説します。
従業員側のメリット
日常的に電子マネーを利用している従業員が給与のデジタル払いを選択すると、キャッシュレス決済時の利便性が向上する点が最大のメリットです。
これまではデジタル払いを利用しても、チャージやクレジットカードの設定などが必要で手間がかかっていました。これからは、自分のキャッシュレス決済口座に入金された給与をすぐに利用して、手間や時間を省略できます。
さらに、デジタル給与の導入によって、キャッシュレス決済の利用によるポイント還元を受けられます。高額なほど、従業員にとって経済的なメリットが大きいです。
会社側のメリット
給与のデジタル払いは、銀行振込よりも手数料が安い可能性が高いです。一般的に、資金移動業者の口座に対する送金手数料は、銀行の振込手数料に比べて安い傾向にあり、これにより会社の経費を抑えられます。
また、外国人労働者など何らかの事情で銀行口座を持っていない人も、デジタル払いであれば簡単に口座開設しやすいため、給料支払時の利便性が高まるでしょう。
給与のデジタル払いのデメリット
デジタル給与の導入には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットもあります。デジタル給与払いを導入してから困ったことにならないよう、あらかじめデメリットを把握して対策していきましょう。
本項では、デジタル給与の導入によって生じる従業員側と会社側のデメリットについて解説します。
従業員側のデメリット
デジタル給与を利用する場合、従業員側のデメリットの一つは、希望の資金移動業者を使用できない場合があることです。労使協定で締結された資金移動業者が、自身が使用する資金移動業者と異なる場合は、会社に希望の資金移動業者の口座を開設してもらうか、デジタル給与の利用を諦めるかになります。
また、資金移動業者の口座は入金できる金額の上限が100万円です。給与や賞与をデジタル給与払いで受け取るなら、残高が100万円を超えることのないよう調整が必要です。
会社側のデメリット
デジタル給与を利用する場合、会社側のデメリットの一つは、給与支払いに関する業務量が増加することです。デジタル給与の導入に伴い、社内システムやプロセスの変更、通常の賃金払いとの二重運用が必要になるため、手間や時間がかかるうえに管理コストも上昇する可能性があります。
また、デジタル給与には従業員の個人キー情報が必要で、管理が難しい点も問題です。さらに、個人キー情報は重要な個人情報のため、情報漏えいや不正アクセスに厳重な対策をしなければなりません。
銀行口座以外でも給料を受け取れる! 希望するなら手続きを忘れずに
給与のデジタル払いが解禁されたことによる多様な支払い方法の導入は、従業員の利便性が向上し、給与支払いにかかる時間や手間が削減されます。従業員側だけでなく、会社側にも振込手数料を削減できるなどのメリットがあります。
ただし給与のデジタル払いは、従業員と会社の双方にとってメリットがある一方で、デメリットも存在します。適切な導入方法を検討し、セキュリティー対策を徹底することが重要です。
出典
厚生労働省 資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について
厚生労働省 労働者・雇用主の皆さまへ 賃金のデジタル払いが可能になります!
厚生労働省 資金移動業者登録一覧
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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