「年収500万」より「年収300万」の人のほうが貯蓄が多い? 収入別の「貯蓄割合」について解説

配信日: 2023.06.30

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「年収500万」より「年収300万」の人のほうが貯蓄が多い? 収入別の「貯蓄割合」について解説
貯蓄は個人や家族の経済的安定、老後を幸せに過ごすために重要な要素ですが、一般的には年収が高ければ貯蓄も多いと思われがちです。
 
しかし、総務省統計局の家計調査によると、年収が多いからといって必ずしも貯蓄が多いわけではないようです。年収と貯蓄額が比例しないのはなぜなのか、そして年収が少なくても貯蓄を進めるにはどうしたらいいのか、見ていきましょう。
御手洗康之

執筆者:御手洗康之(みたらい やすゆき)

CFP、行政書士

収入別の貯蓄額と負債額

総務省統計局の家計調査によれば、収入別の貯蓄と負債の割合は図表1のように示されています。貯蓄から負債を引いた額、つまり「単純な貯蓄額」に関しては、年収が500~550万円台の貯蓄額よりも300~350万円台の貯蓄額のほうが多いことが分かります。
 
負債は年収が多くなるほど増える傾向にあるので、貯蓄から負債を差し引いた金額は、年収700~750万円のグループよりも年収300~350万円のグループのほうが多くなっています。全体的には年収が増えるほど貯蓄も増える傾向にありますが、中間層では高年収ほど単純な貯蓄額が多いとは限らないようです。
 
図表1
 

年収 貯蓄(万円) 負債(万円) 貯蓄-負債(万円)
200~250万円 729 204 525
300~350万円 1031 240 791
400~450万円 850 570 280
500~550万円 937 603 334
600~650万円 1130 839 291
700~750万円 1298 1155 143
800~900万円 1628 1044 584
900~1000万円 1811 1000 811
1000~1250万円 2271 1113 1158
1500万円以上 3861 1364 2497

 
総務省統計局 家計調査 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 2022年 8-2 年間収入階級別を基に筆者作成
 

年収と貯蓄額が比例しない要因は?

年収が多いにもかかわらず、単純な貯蓄額がより低い年収の人よりも小さくなる場合が生じるのは、以下のような要因が考えられます。
 
まず1つは、生活水準の向上やライフスタイルの変化があります。年収が高くなるほど生活水準は上がる傾向にあります。無駄な出費はしていないつもりでも自然と消費が増えてしまったり、高級品の購入や旅行などの出費が増えたりすることがあります。
 
また、年収別に「住宅や土地のための負債」の額に違いがあることも要因としてあげられます。負債額は、特に400万円台と700万円台で大きく上昇しています。年収が一定の水準に達すると、住宅購入が増える傾向があると考えられます。
 
図表2
 

年収 住宅・土地のための負債(万円)
300~350万円 218
350~400万円 261
400~450万円 512
600~650万円 788
650~700万円 778
700~750万円 1078

 
総務省統計局 家計調査 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 2022年 8-2 年間収入階級別を基に筆者作成
 

年収が少なくても貯蓄を進めるアドバイス

年収増が必ずしも貯蓄増につながらないことが分かりました。そこで、将来の安定した生活を送るために、以下のポイントを見直してみましょう。
 
まず一番重要な点は、収入と支出をきちんと把握することです。お金の流れ、つまりキャッシュフローが分かれば、無駄な出費を減らし、節約意識を高められます。おのずと貯蓄を増やせます。また、現在だけでなく、将来を見越したキャッシュフローのプランを検討しておくことも重要です。
 
さらに、貯蓄の一部を資産形成に回しましょう。少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)といった国が準備している制度を上手に活用することで、効率的に資産形成を進められます。
 
自分だけで考えるのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家のアドバイスを受けることも有効です。生活の収入と支出だけでなく、住宅や保険、資産運用など多角的な面で今後の戦略をサポートしてくれます。
 
本記事で紹介した結果をみても分かる通り、年収が比較的低い人々の中にも積極的に貯蓄を行っている人は存在します。人それぞれの事情はあるかと思いますが、大切なのは自分の収入と支出を理解し、貯蓄習慣を身につけることです。小さな貯蓄から始めて徐々に増やしていくことで、将来のための安定した資産を築くことができるでしょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 2022年 8-2 年間収入階級別

 
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級

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