扶養内で働くには月いくらまで?「損をしない」年収とは?
配信日: 2023.07.31
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
税や社会保険の負担が最も軽いのは年収103万円以下
妻本人に所得税などの負担が発生せず、かつ、配偶者控除によって夫の税負担が最も軽くなるという観点で考えると、パートの年収は103万円以下に抑えるとよいでしょう。基礎控除が48万円、給与所得控除の55万円が適用されるため妻本人にかかる所得税が0円で税金がかからないからです。
加えて、配偶者の合計所得金額(簡単に言うとパート収入から給与所得控除55万円を引いた金額)が48万円以下であれば、夫には最大38万円の控除が受けられる配偶者控除が適用され、夫の税金も安くなるからです。
また、103万円以下の年収で働けば、基本的には健康保険や年金についても夫の扶養に入り続けることができ、社会保険料の負担も小さくすることができます。
税や社会保険料の負担を極力減らすという点であれば103万円以下が損をしないといえそうです。ただし、得られる収入自体も103万円以下と少なくなります。
住民税と社会保険料については注意が必要
年収が103万円以下であっても、住民税が発生してしまうことがある点には、注意が必要です。例えば、東京都中央区の場合、年収が100万円を超えると住民税が発生することになります。
また、社会保険については令和4年10月以降、健康保険と厚生年金に加入する従業員数100人以上の勤務先で働いていると、年収106万円以上(月額8万8000円)で、週の所定労働時間が20時間以上となるなど一定の要件を満たすと、厚生年金・健康保険の加入対象となります。すると、年収103万円を少し超えただけで、健康保険と厚生年金に加入し、自身で保険料を支払う必要があるため注意が必要です。
図表
出典:日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内
配偶者特別控除の存在も踏まえると年収130万円未満がお得
配偶者控除から外れるほど稼いでも、配偶者特別控除の対象となります。所得税を例に説明すると、年収103万円を超えても、201万6000円未満であれば夫の収入に応じて適用されます(夫の合計所得金額が1000万円以下の場合)。
そして、配偶者特別控除は満額で38万円の控除が受けられます。満額の適用となるには、配偶者の所得が48万円超から95万円以下、すなわち妻の年収が150万円以下である必要があります。とはいえ、130万円以上稼いでしまうと、健康保険と厚生年金の保険料が発生して損をした気分になってしまう方もいらっしゃいます。
仮に健康保険と厚生年金に加入すると、介護保険料については考慮しない額で計算しても、健康保険料で4400円、厚生年金保険料が8052円と毎月1万2000円以上手取りから引かれます。
そういった観点からいうのであれば、所得税や住民税が発生するものの社会保険料は夫の扶養に入れて、かつ、配偶者特別控除の適用が最大限受けられる130万円未満とするのが最もお得に感じられるかもしれません。
働き方については完璧を求めず割り切りも大切
夫の扶養から全く外れず、かつ極力税負担も少ないことを条件にするなら、年収103万円以下になるよう働くことになるでしょう。多少税が生じてもいいのであれば、130万円未満になるよう働くことで、社会保険に加入せず、かつ、配偶者特別控除によって実質的に扶養から抜けずに働くことも可能で、家計の手取りを増やすことができます。
社会保険料や税のルールは複雑です。働き方については完璧を求めず、働いても全額税や社会保険料に取られてしまうわけではないと割り切り、無理のない範囲で働くことをおすすめします。
出典
日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内
執筆者:柘植輝
行政書士