入社前に「前年度実績3ヶ月分」と聞いた「賞与」が1ヶ月分のみの支給。これは会社に騙された?

配信日: 2023.08.23 更新日: 2023.08.25

この記事は約 3 分で読めます。
入社前に「前年度実績3ヶ月分」と聞いた「賞与」が1ヶ月分のみの支給。これは会社に騙された?
多くの社会人が一度は悩んだことがあるだろう問題に、賞与の支給があります。賞与の取り扱いについて、入社前に聞いていた話と違うということもときたまあるようです。
 
そこで、実際に支給された賞与の額が、求人票記載の内容や入社前に聞いていた内容と違う、という場合の取り扱いについて考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

前年度実績より低い賞与を支給することは許されるのか

求人票を見ていると「業績により賞与支給あり ※前年度実績で3ヶ月分」などと、賞与の額について前年度の実績で記載されていることがあります。また、雇用契約書などでも似たような記載がされていることもあるでしょう。
 
その一方で、実際に賞与が支給される際は、それよりも低い額で支給されることもあるようです。例えば、前年度実績で合計3ヶ月分の賞与支給とあったところ、実際に初めての賞与を受け取った際は1ヶ月分のみの支給だった、というような場合です。
 
こういった場合でも、直ちに会社に問題が生じるわけではありません。「前年度実績」とあるように、あくまでも参考となるデータとして前年度実績を記載したにとどまり、次回の支給額を確約しているわけではないからです。
 
賞与は基本給と異なり、法律上必ずしも支給が義務付けられているわけではありません。会社が独自の規定や業績などに基づき、不支給とすることや支給額を前年度より下げるということも基本的には問題ないのです。
 
また、就業規則には賞与の支給時期のみの記載にとどめ、具体的な金額については「業績および勤務成績を考慮する。」というように記載のある場合、入社前に「3ヶ月分出る予定です。」といわれていたところ、1ヶ月分のみの支給となっても、直ちに違法となることはないでしょう。
 
なお、よくある例として「賞与の支給は入社半年経過後」など一定期間経過後に初めて支給する、という規定を設けている企業もあります。もちろん、就業規則や雇用契約書などで、そのような取り決めをすることも有効です。そのため、実務的には入社後最初の賞与は不支給であることや、寸志にとどまるということも珍しくはありません。
 

支給額が具体的に明記されている場合は違法性を帯びることも

賞与は基本的に、減額や不支給となっても直ちに違法性が生じるわけではありませんが、雇用契約書や求人票、就業規則などに「賞与は夏1ヶ月、冬1ヶ月を支給する。」というように具体的に支給時期や支給額などが明記されている場合は、記載された額での支給義務が生じます。この場合は賞与が夏と冬に1ヶ月分支払われることが確定しているからです。
 
ただし、その場合でも、「業績によって支給の有無や額が変動することがある。」など増減することが予定されている旨が記載されていれば、賞与の支給は確定したものではなくなります。不支給であったり減額があったりしても、直ちに違法とはならないでしょう。
 

もし賞与の支給額に納得いかない場合はどこに相談すればいい?

もし、賞与の考え方が会社と一致しないという場合、まずは就業規則や雇用契約書など賞与の算定に当たっての計算式が分かるものを確認しましょう。それでもおかしいと感じたときは人事担当者などに相談と確認をしてみましょう。
 
どうしても会社との間では解決できないという場合、管轄の労働基準監督署に相談するのも有効です。適切なアドバイスを求めることはもちろん、第三者的な視点から判断してもらうこともできます。場合によっては会社に対し注意指導が入り、誤りが是正されることもあるでしょう。
 

賞与についての取り扱いは社内の諸規則を確認するべき

賞与は基本給と異なり、働いた時間に応じて必ずしも支給されるわけではありません。多くの会社においては、会社の業績や本人の勤務実績など諸般の事情を考慮し、支給の有無と額が決定できるような規定を設けています。それゆえ、入社前に知らされていた目安となる支給額と実際に支給される額が大きく乖離することも十分あり得ます。
 
もし、賞与の額が入社前に知らされていた額と違うときでも、慌てず就業規則など会社での賞与のルールについて確認し、冷静に判断するようにしてください。
 

出典

厚生労働省 沖縄労働局 労働相談事例 賃金・賞与・退職金Q3
神奈川労働局 賞与、退職金、諸手当を払ってもらえないとき
 
執筆者:柘植輝
行政書士

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集