更新日: 2023.09.19 年収

「市役所職員」は安泰な職業? 年収600万円超えのうわさは本当?

「市役所職員」は安泰な職業? 年収600万円超えのうわさは本当?
市役所の職員は年収600万円超えで将来が安泰している。そんな話を聞いたことはないでしょうか。本当に市役所職員として働くと、年収600万円を超えるほどの高収入を得ることができるのでしょうか。市役所職員の収入について解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

市役所職員なら年収600万円超えも可能

「令和4年 地方公務員給与の実態(令和4年4月1日地方公務員給与実態調査結果)」によれば、全地方公共団体の一般行政職における年収は637万6432円と推定されます(給与月額合計を12倍し、期末手当と勤勉手当を足して算出)。
 
団体区分を市に絞ってみても、一般行政職の年収は628万9114円(同様に、給与月額合計を12倍し、期末手当と勤勉手当を足して算出)となり、平均的な年収は600万円を超えていると推定されます。ここから、市役所職員で年収600万円を実現することも不可能ではなさそうです。
 
しかし、全地方公共団体における一般行政職の平均年齢は42.1歳、団体区別を市に絞ると平均年齢は42歳となっています。年収600万円を超えるのは40歳前後の年齢に達する頃だと推定され、若いうちから高年収を実現することは難しいでしょう。
 
また、都道府県別に市の職員の初任給を見てみると、平均で18万4552円、高くても19万5500円です。低ければ16万9500円程度と、やはり若いうちから年収600万円を得られるわけではなさそうです(いずれも大卒の一般行政職の試験採用で算出)。
 

地域による差に注意

市役所職員の場合、その収入は自治体によって大きく異なります。その理由は自治体の予算にあります。基本的に、予算が潤沢で人件費に回せる費用の多い自治体ほど、市役所での年収も高くなりやすい傾向にあります。また、都心など物価や家賃の高いとされている地域も同様です。
 
例えば、大阪府大阪市における行政職の平均年収(令和5年度見込)は637万8871円です。一方で、青森県今別町における令和4年度の職員1人当たりの給与額は546万4000円となっており、地域によってある程度ばらつきがありそうです。市役所職員なら必ず年収600万円を超える、とは思わない方がよいでしょう。
 

「市役所なら安泰」というのも絶対ではない

市役所職員は給与の額を除いても比較的安定している職業です。民間企業のように、突然勤務先が倒産してしまうということもありませんし、年齢を重ねていくごとにある程度昇給もしていきます。また、法令に基づき給与形態が決まっているため、業績悪化による突然な賞与の不支給や給与の大幅カットもそうありません。
 
しかし、だからといって一生安泰とも限りません。景気が悪くなり、民間企業との差が大きくなれば、給与や賞与が減額されることもあります。
 
また、公務員はクビにならないといわれることもありますが、働きぶりなどによっては勧奨退職がなされます。勧奨退職は、勤務先から辞めてほしいということを伝えられるものです。勧奨退職は拒否することもできますが、その後厚遇がなされることは考えにくく、きつい部署に飛ばされるなど実質的に不利益を被る可能性もあります。
 
世間でいわれているように、「市役所職員なら絶対に安泰」であるとも限らないのです。
 

まとめ

自治体による差はあるものの、市役所職員は40歳前後の年齢で年収600万円を超える可能性のある職業です。公務員であるとはいえ、絶対に安泰であるとは言い切れない部分もありますが、比較的安定している職業でもあります。
 
しかし、仕事は30年、40年と長く続けるものです。年収や安定性だけで決めてしまうと、後悔することにもなりかねません。市役所職員を含む、公務員について興味があれば、仕事内容や働き方などを含め、総合的な面で就業について検討することが必要でしょう。
 

出典

総務省 令和4年 地方公務員給与の実態 第4表 初任給
総務省 令和4年 地方公務員給与の実態 第5表 総務省 職種別職員の平均給与額

青森県今別町 今別町の給与・定員管理等について(令和4年度)

総務省 令和4年 地方公務員給与の実態 第3表 職種別、年齢別職員数

大阪市 大阪市職員のモデル年収額(令和5年度見込)

総務省 令和3年度 地方公務員の退職状況等調査

 
執筆者:柘植輝
行政書士

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