更新日: 2023.09.20 年収
「地方公務員」と「大手企業の会社員」を比較すると、どちらの方が高給取り?
両者の労働条件はさまざまな面で違いますが、特に「生活に直結する給与面が気になる」という方も少なくないはずです。そこで、地方公務員と大手企業、どちらで働く方が高給取りになれるか考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
地方公務員と大手企業の年収を比較すると、高給取りなのはどちら?
総務省の統計「令和4年 地方公務員給与の実態」によれば、全地方公共団体の一般職員における平均年収は640万6248円となるようです(「第5表 職種別職員の平均給与額」より、「一般職員計」の給与月額合計を12倍し、期末手当と勤勉手当を加えたもの)。
一方で、同じく総務省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、企業規模1000人以上の会社の平均年収は585万4100円となるようです(第1表「年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」より、きまって支給する現金給与額を12倍し、年間賞与その他特別給与額を加えたもの)。
平均で見れば、地方公務員の方が若干高収入といえそうです。ただし、その違いは年額55万円程度で、生活が大きく変わるというほどの差にはなりません。それも当然で、基本的に地方公務員含む公務員の給与額は民間企業をベースに決まっています。
今後も多少は地方公務員と大手企業とで給与に差が生じつづけることになるでしょうが、全体で見れば大きな差が付くことは基本的にないでしょう。
給与形態によっては、大手企業の方が高年収なこともある
全体で見れば、若干地方公務員の給与の方が高いように見えますが、給与形態によってはこれが大きく逆転する可能性もあります。
その根拠としては、インセンティブや歩合給などの存在が挙げられます。基本的に大手企業の営業職であれば、売り上げから一定割合をインセンティブとして支給する「業績連動型」の給与形態がとられていることがあり、実績次第で年収1000万円を狙うことも可能です。
営業が得意な方であれば、インセンティブの支給される大手企業の営業職として働いた方が、公務員よりも圧倒的な高収入を実現できる可能性もあります。
地方公務員と大手企業、向き不向きは?
地方公務員は全体の奉仕者であって、利益を追求することを求められている存在ではありません。
したがって、年功序列も根強く残っており、着実に昇給していくものの、若いうちは給与額の低い期間が続きます。一方で、結果を出したからといって、一度に大きく昇給することは基本的にはないという側面もあります。
例えば「令和4年 地方公務員給与の実態」によれば、全地方公共団体の一般行政職の平均給与月額は、24歳から27歳の間は27万3099円であるものの、56歳から59歳には50万7386円となり、年を重ねるごとに順調に給与が増えていきます。
一方で、大手企業であれば結果を出して昇進し、毎月60万円や70万円という地方公務員以上の高給を、30代や40代で得ることも不可能ではありません。
給与形態の問題から、若くして高給取りになりたいという方に、地方公務員は向いていません。その場合、大手企業の方が向いているといえるでしょう。逆に、年を重ねるごとに確実に安定して収入が増えていくことを望むのであれば、地方公務員が向いているといえます。
まとめ
地方公務員と大手企業(企業規模1000人以上の企業)とを比べると、統計上は地方公務員の方が高給取りといえそうです。
しかし、両者に驚くべき大きな差があるというわけでもなく、給与形態や勤務先など個別の事情次第では、大手企業の方が高給取りということも、往々にしてありそうです。地方公務員と大手企業とで悩んだときは、自分が希望する自治体と企業とで、給与形態を比較してみてください。
その上で、若くして高給取りになりたいか、それとも確実に収入が上がっていく安定性を希望するのか、自身のキャリアについてよく考え決定するようにしてください。そうすることで、転職や就職の決定について後悔せずに済むでしょう。
出典
総務省 令和4年 地方公務員給与の実態 第5表 職種別職員の平均給与額
総務省 第7表の2 職種別,年齢別,学歴別職員数及び平均給与月額
総務省 e-Stat 令和4年賃金構造基本統計調査
執筆者:柘植輝
行政書士