更新日: 2023.10.16 年収
増える「中小企業」の倒産。大手企業と中小企業は年収・退職金がいくら違う?
今回は、大手企業と中小企業における、年収と退職金の違いについて見ていきます。就職や転職の際に、大企業と中小企業のどちらを選ぶか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
中小企業の倒産の状況は?
中小企業庁が取りまとめ、公開している資料「倒産の状況」によれば、中小企業の倒産件数は2022年4月以降、常に前年同月の件数を上回っています。
2023年の倒産件数は著しく、9月までの9ヶ月でおよそ6200件以上の倒産が報告されています。平均で毎月およそ697件の中小企業が倒産しており、前年同月比で比較すると毎月平均35.3%増となっています。特に直近の8月は倒産件数が高く、前年同月比で54.4%の増加率と、前年よりも大幅に増加しています。
また、この資料によれば、倒産原因は「販売不振」と「既往のしわ寄せ」が目立っており、中小企業には厳しい状況が続いています。
大企業と中小企業とでは年収がどれくらい違う?
厳しい状況にある中小企業ですが、大企業と中小企業とではどれくらい給与に差があるのでしょうか。
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」第1表「学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」によれば、企業規模10人から99人の企業(中小企業とする)の平均的な年収は422万9400円となります(きまって支給する現金給与額を12倍し、年間賞与その他特別給与額を加えた額)。それに対して企業規模1000人以上の企業(大企業とする)となると、585万4100円となるようです。
大企業の収入は、中小企業に比べると1.4倍近い金額となるようです。ただし、インセンティブが多く支給される職種があるなど、給与形態によっては中小企業の方が高い収入になることもあります。
参考までに、労働時間で比較してみると、大企業は実労働時間数が176時間(所定内実労働時間数と超過実労働時間数を足したもの)であり、それに対して中小企業は179時間と、ほぼ横ばいです。
給与形態については基本大企業の方が有利と考えておいてよいですが、実際の支給額については、個別の企業ごとに給与形態を確認しておく必要があるでしょう。
大企業と中小企業とでは退職金がどれくらい違う?
厚生労働省の「令和3年賃金事情等総合調査」第11表「産業別退職事由ごとの平均退職金額」によれば、資本金5億円以上、労働者1000人以上の企業(大企業とする)の退職金の額は、自己都合の場合で平均447万3000円となるようです。定年退職の場合ではなんと、平均1872万9000円も支給されているようです。大企業であれば、老後は退職金だけでも生活していくことができそうです。
また東京都産業労働局の調査によれば、中小企業のモデル退職金の額は、大卒の自己都合退職の場合で362万4600円(勤続年数ごとの額を集計し、その平均額を算出したもの)となるようです。定年退職(この調査の場合、区分は会社都合に当たる)であれば、退職金額は1091万8000円となります。
退職金の額は産業や勤続年数によって大きく変わる部分でもありますが、やはり退職金も中小企業より大企業の方が、基本的には金額が大きくなるようです。
なお、近年では企業規模にかかわらず退職金が不支給となる会社も珍しくはないため、退職金の有無や額についても、個別の企業ごとに確認していく必要があります。
大企業の方が収入は安定する可能性が高い
大企業と中小企業には、年収や退職金に大きな違いがあります。中小企業の倒産が増えていることも踏まえると、大企業に就職した方が、将来の安定性は高いと考えられます。
就職や転職で、中小企業に行くか大企業に行くか悩んでいるのであれば、一つの視点として、こういった安定性について考えてみると、自分が選ぶべき答えが見つかるかもしれません。
出典
中小企業庁 倒産の状況
e-Stat 厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査 第1表「学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
厚生労働省 賃金事情等総合調査:統計の概要
e-Stat 厚生労働省 令和3年賃金事情等総合調査 第11表「産業別退職事由ごとの平均退職金額」
東京都産業労働局 令和4年版中小企業の賃金・退職金事情
執筆者:柘植輝
行政書士