更新日: 2023.12.21 年収
冬のボーナスは「3ヶ月分」のはずなのに、金額がかなり少ない気がします。税金が多いのでしょうか?
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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ボーナス「×ヶ月分」は基本給が基準
毎月支給される給与には基本給の他に、残業手当や通勤手当、家族手当、資格手当といったさまざまな手当も含まれていることがあります。一方で、通常ボーナスについて「給与の×ヶ月分」という場合、このときの「給与」とは給与の総支給額ではなく、基本給を基準としています。
もし、月の給与の総支給額が30万円であっても、その内訳が「基本給20万円と残業手当や通勤手当など総額10万円」だった場合、ボーナスは「総支給額30万円の3ヶ月分」である90万円ではなく、「基本給20万円の3ヶ月分」で、60万円となります。
毎月もらっている総支給額の数ヶ月分のボーナスを期待していると、実際の支給額はそれに比べてかなり少なく感じられるでしょう。
額面金額と手取り額は違う
「ボーナスが期待していたより少ない」と感じる場合、額面金額ではなく手取り額を見たからかもしれません。
給与と同じく、ボーナスからも厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料(40歳以上64歳以下)といった社会保険料や、雇用保険料と所得税が控除されます。それぞれ控除される金額は、表1の計算式で求められます。
表1
厚生年金保険料 | ボーナス額面(1000円未満切捨て)×厚生年金保険料率(18.3%)※1×1/2 |
健康保険料 | ボーナス額面(1000円未満切捨て)×健康保険料率※2×1/2 |
介護保険料 | ボーナス額面(1000円未満切捨て)×介護保険料率※2×1/2 |
雇用保険料 | ボーナス額面×0.6%(一般の事業の場合)※1 |
所得税 | (ボーナス額面-社会保険料等)×ボーナスの源泉徴収税率※3 |
※1:厚生年金保険料、雇用保険料の保険料率は、日本年金機構「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)」および厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内」より
※2:健康保険料率、介護保険料率は加入中の保険組合や勤務地によって異なります
※3:国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 5 年分)」に当てはめて決定します
ボーナスから控除される社会保険料や所得税の総額は、額面のおおよそ2割から3割程度になる、と考えておくとよいかもしれません。
例えば、基本給20万円の人がボーナスに「基本給の3ヶ月分」として60万円を期待していると、額面の2割となる12万円が控除された場合、手取り額は48万円です。これを額面の数字と比較した際に「手取り額が少ない」と感じてしまうでしょう。
会社の業績悪化による影響
ボーナスは毎月の給与と違い、「会社の利益を社員に還元する」という意味合いが強くなります。ボーナスは給与の3ヶ月分とされていても、業績の悪化により、そのときのボーナスの支給額が少なくなることもあります。
業績の悪化は、業界での他社との競争に負けたり、提供している商品やサービスが世の中に必要とされなくなったりすることで起こります。他にも、コロナ禍や戦争のような社会情勢の激変によって引き起こされることもあります。
会社の業績が悪化したときは、例えば当初はボーナスが給与の3ヶ月分とされていたところ、一律で1ヶ月分のボーナスカットなどが行われ、2ヶ月分しか支給されないことなどもあるでしょう。
会社の業績はボーナスに影響しますので、自身の会社の業績がどうなっているのかも確認するようにしましょう。
個人評価が振るわなかった
会社によっては、ボーナスを全社員一律に支給するのではなく、一定期間内の個人の業務実績や能力を査定し、その評価に応じてボーナスの支給を定めているところもあります。また、能力だけでなく、勤務態度(欠勤や遅刻の頻度、他者とのコミュニケーションにおける態度など)も評価の対象にしていることもあります。
求められた目標を達成できなかった場合や、勤務態度に問題があった場合などに、ボーナスの支給額がより少なくなる場合もあるでしょう。
ボーナスにおいて個人業績が加味されている場合、上司との評価面談などで、自身の評価内容をしっかり確認することが大切です。
ボーナスの支給は法律で義務づけられているわけではない
そもそも法律上、ボーナスの支給は必ずしも義務づけられているわけではありません。会社が「賞与は支給しない」と就業規則で定めていても、基本的に違法とはなりません。
一方で、就業規則にボーナス支給に関する規定があっても、同時に「業績次第ではボーナスを支給しない」という旨が明記されている場合もあります。そのような場合は、いくら「ボーナスは給与のXヶ月分」とされていても、会社自体が会社業績や個人業績によって、支給額を変動させやすいといえます。
まとめ
「ボーナスが見込みよりも少ない」と感じるときの要因を見てきました。実際に、ボーナスは会社業績や個人業績によって変動しやすいものです。そのため、家計における生活費の支出や住宅ローンの返済に、ボーナスの収入を見込んだ計画を立てることは、できるだけ避けるようにすることが賢明でしょう。
出典
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)
厚生労働省 令和5年度雇用保険料率のご案内
国税庁 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和5年分)
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)