「130万円の壁がなくなった」と聞きました。主婦(夫)が「130万円以上」稼ぐ際の注意点を教えてください。
配信日: 2024.03.24
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
「130万円の壁」がなくなった理由
これまで「130万円の壁を超えない方がよい」と言われていた理由は、社会保険料の存在です。家族の扶養内で働くのであれば、健康保険も年金も、保険料が発生しませんでした。
しかし、年収が130万円を超えるとそれらが発生し、収入に対する手取りの割合が減るため、働く時間を抑える方がいたのです。これが俗に「130万円の壁」といわれています。
これが今、労働者不足で企業が人材確保に四苦八苦する状況に拍車をかけているとして、その結果2年間の時限措置として、130万円を超えて稼いでも一定の条件を満たした場合は扶養に入っていられるようになりました。これが「130万円の壁がなくなった」といわれるゆえんです。
事業主と保険組合から認められることが必要
まず確認しておかなければならないのは、「130万円の壁を超えても被扶養者のままでいるには、事業主と健康保険組合の両方から認められなければならない」ということです。
事業主は、人手不足を理由とした一時的な収入変動でなければ、健康保険組合に提出するための書類を作成することができません。そうでないのに作成すれば、事業主は虚偽の書類を作成したことになります。
その後はその書類を、加入している保険組合に提出することになるのですが、事業主の証明があっても、最終的に扶養認定が下されるかどうかは、健康保険組合の判断による部分もあります。
例えば、雇用契約の内容から恒常的に年収が130万円を超えると認められたり、収入要件以外の部分も含めて総合的に「収入アップが、人手不足が原因でも一時的でもない」と判断されたりして、扶養に入りつづけられない可能性もあります。
高い収入に慣れてしまって、働きつづけることになる可能性もある
130万円の壁を超えても入りつづけられるのは、あくまでも社会保険における扶養です。そのため、税金は免除されず、通常どおり発生します。特に住民税は要注意です。住民税の税率はおよそ10%であり、年収200万円と考えると(給与所得控除55万円と基礎控除43万円のみで計算)、年間でもおよそ10万円発生します。
さらに、住民税は本年の収入で計算したものを、翌年から翌々年にかけて支払います。つまり前年にたくさん稼いだ場合、その収入を基準に生じる住民税を払うことになります。2年後は収入を減らして扶養に入りつづけることを選ぶのであれば、手取りは今以上に少なくなるわけです。
加えて、2年間たくさん稼いだ収入額に慣れてしまうと、2年後に扶養内の額に戻すために130万円未満まで収入を落としたとき、生活が維持できない可能性もあります。それによって扶養を外れ、今まで以上に稼がざるを得なくなってしまう可能性もあります。
まとめ
130万円の壁がなくなったといわれますが、実際にはなくなったというわけではなく、事業主と健康保険組合の証明・承認を受けているだけです。また、税金は免除されず、加えて高い収入に慣れると、生活レベルを落とすことができず2年後も働きつづけることになる可能性もあります。
130万円の壁を超えようとしている場合、それらに注意し、2年後も意識した上で働くようにしましょう。
出典
厚生労働省 事業主の証明による被扶養者認定Q&A
厚生労働省 パート・アルバイトで働く「130万円の壁」お困りの皆さまへ
執筆者:柘植輝
行政書士