更新日: 2024.04.16 年収
32歳高卒で「年収340万円」は低いですか? 大卒の友人は「800万円」ほどもらっているそうです。都内住みで生活がカツカツなのですが、転職すべきでしょうか…?
本記事では「生涯賃金」という視点から、高卒の男性が転職によって生涯賃金がどのように変化するか学歴や職種も交えて比較しながら、生涯賃金をアップするためのポイントなどについて解説します。
執筆者:根本由佳(ねもと ゆか)
FP2級、中小企業診断士
生涯賃金って何?
生涯賃金とは「1人の労働者が生涯にわたって得る賃金の総額」のことです。生涯年収と呼ぶ場合もあり、一般的には学校を卒業した後に就職して定年退職するまでの賃金を指します。昨今は働き方が多様化しており、転職、非正規雇用(アルバイトやパートなど)やフリーランス、副業、再就職、定年後も働くなど、個々人の職業人生のあり方によって生涯賃金は変化します。
転職は生涯賃金を下げる!?
転職によって生涯賃金がどのように変化するか、一般的な傾向を検証してみましょう。独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2022」によると、男性で大卒・総合職(管理・事務等)が、1つの会社で働き続け1度も転職せずに定年を迎えた場合と、転職を1度してから定年を迎えた場合とで生涯賃金にどの程度差が出るかを試算したところ、転職をした場合はしない場合に比べて約4%生涯賃金が減少するとのことです。
転職時の年齢により減少率は異なり、25歳であれば1.0%ですが、35歳で4.9%、40歳で5.6%、45歳で5.7%と、中高年になるほど減少率は上がります。
同条件の人で1つの会社で定年まで働き続けた場合の生涯賃金(同一企業型)は、約2億8000万円と試算されています。減少率4.9%の場合、生涯賃金が約1372万円も少なくなってしまいます。
転職による生涯賃金の減少率は、1989年の統計では約12%となっており、年々縮小しているようです。しかし転職で生涯賃金が下がるという一般的な傾向に変わりはありません。「転職で年収倍増」というのは、思いのほか難しいのかもしれません。
学歴や職種・業種による生涯賃金の違い
次に学歴による生涯賃金の違いについて見てみます。「ユースフル労働統計2023」によると、フルタイム正社員の男性で高卒の場合は約2億円(60歳定年、退職金を除く)、大卒だと2億5000万円と、約5000万円の違いがあります。就職時期が早い高卒の方が労働期間は長いにもかかわらず、大卒より生涯賃金が少ないという厳しい現状です。
また、職種や業種によっても生涯賃金は変わります。パーソルキャリア株式会社が運営する転職・求人サービスdodaが登録者を対象に行った調査によると、職種別では男性の場合、企画・管理系は3億111万円、営業系は2億6247万円、販売・サービス系は1億8246万円と、職種により1億円以上の差があります。また業種別でも、金融は3億1991万円、IT・通信では2億7840万円、小売・外食では2億693万円と、差が開いています。
転職によって生涯賃金を上げたいのであれば、職種や業種から転職先を検討するのは有効であるといえるでしょう。
生涯賃金を上げるためのポイント
では転職して生涯賃金を上げたい場合、どのようなことに留意したらよいかポイントを見ていきましょう。
スキルの習得とキャリアアップ
スキルの向上は、生涯賃金を上げるための最も確実な方法の1つといえます。希望する職種や業界に応じたスキルや資格の取得を積極的に行い、自分の市場価値を高めることが重要です。
人的ネットワークの活用
人脈も転職やキャリアアップにおいては必要です。希望する業界の専門家や友人・知人などとの関係を築き、情報を得ることで転職につながるきっかけをつかむことができるかもしれません。
今ある自分のスキルや経験を磨く
資格取得や人脈などを新たに得るのは難しいという場合は、今持っているスキルや経験をもう1度見直してみましょう。現在の職場で得たスキルや経験が、希望する職種や業種にも生かせそうなものはないでしょうか。
営業力や折衝力など、どのような仕事にも必要なスキルは数多くあります。具体的な実績と合わせて自己PRをすることで転職の可能性が広がります。
まとめ
転職することで生涯賃金を上げることは難しく、必ずしも成功するとはいえません。まずは現在の職場で年収を上げる方法がないか検討してみましょう。それでも現状を打破したい、転職したいというのであれば、転職先や自分のスキル、人脈などを十分確認したうえで、慎重に検討することが重要です。
リスクを冒すことで大きな好転を生むこともありますが、成功率を高めるためには焦らずしっかりと準備をすることが大切でしょう。
出典
独立行政法人労働政策研究・研修機構 ユースフル労働統計2022
独立行政法人労働政策研究・研修機構 ユースフル労働統計2023
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執筆者:根本由佳
FP2級、中小企業診断士