更新日: 2024.04.25 年収
地方に住む親から「会社を辞めて地元で安定した公務員になりなさい」と言われています。地方公務員は収入が安定しているのですか?
今回はまず気になる「給料」について考えてみたいと思います。公務員といっても、行政職と公安職(警察や消防など)税務職、教育職など職種ごとに給料の基準も上がり方も異なりますが、今回は、ご質問の主旨から一般事務的な行政職という前提で話を進めます。
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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目次
地方公務員(一般行政職)の平均年収は638万円>民間企業の平均年収は523万円
総務省の「令和4年地方公務員給与実態調査」によれば、全国すべての地方公共団体の一般行政職の平均給与月額は40万円1372円となっています。これにボーナスの平均額156万円を含めた年収では約638万円となります。
一方で、国税庁による「令和4年分 民間給与実態統計調査」からみる民間企業の平均年収は443万円、雇用形態別で見ると正社員(正職員)の平均年収は約523万円となっています。この平均額だけを取り上げて比べれば、地方公務員は魅力的だと映りますね。
ただし、こちらに記載したのは平均額ですから、首都圏や政令指定都市から大きく離れた地方自治体では月額給与平均約31万円などと、自治体によって大きな差があること、ボーナスに関しても同様ですので「どこの地方公務員」なのかを確認したほうがよいでしょう。
昇給の仕方も明確に決まっていて将来を見通しやすい
次に、どのように給与が決まっていくかについてです。民間企業は企業ごとに独自の仕組みで給与を決めますが、公務員の場合は開示されている「給料表」がベースになっています。
給料表は、役職を表す「級」と職務の経験年数を表す「号給」で構成されています。役職は主事→主任→課長代理→課長→部長、と職務内容が複雑になり責任が重くなるにつれて上がっていくものです。経験年数が増えていくにつれて、1年に一度昇給していくのが「号給」となります。同じ、課長という職位に合っても経験年数が増えれば給与も上がっていきます。
先にも述べたように「給料表」は私たちでも見ることができますので、将来を見通しやすいといえるでしょう。加えて、地方公務員であればそれほど大胆な転勤もないと考えていいでしょうから、腰を落ち着けてライフプランを進めていくには適しているといえます。地方に住む親御さまが望まれるのも納得ですね。
平均給与額と「給与表」だけを取り上げれば、地方公務員の魅力は安定している
ということで、勤務態度が目立ってよくない等の失態をしてしまうなどといったことがなければ、地方公務員の魅力は大きいという結論に至ります。
また最近では地方公共団体も新卒者以上に、既卒者、社会人の採用枠拡大を打ち出していて、筆者も「民間企業から地方公務員にシフトしたい」というご相談を受けることが増えています。
それでも逆に「地方公務員から民間企業への転職を検討する人」も少なからずいるということも紹介しておきましょう。最大の理由は「仕事の内容」が考えられます。行政職の地方公務員は、地元住民の税金で地元住民が住みよい環境を整えるために「縁の下の力持ち」的な役割を担っています。
「こういうことがしたい」「こんなビジネスを始めればきっと多くの顧客が利用してくれるだろう」といった思い切ったことを自分の意思で進めたいと考えている人や、「成功すれば、給料が大きくアップする!」といったことを望んでいる人にとっては、窮屈感や物足りなさを感じるかもしれませんね。
出典
国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査
総務省 令和4年地方公務員給与の実態 令和4年4月1日地方公務員給与実態調査結果
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者