今年は「賃上げ」した会社が多いようですが、私の給与は「5000円」ほどダウンしました。勤続10年でも“給与ダウン”はあり得ることなのでしょうか?
配信日: 2024.07.12
しかし、給与の減額は全くあり得ないことではありません。本記事では、給与の減額についていくつかのケースを紹介します。
執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)
特定社会保険労務士・FP1級技能士
給与はダウンすることがある?
給与の引き下げは労働条件の「不利益変更」に当たります。そのため、会社が一方的に給与を減額することはできません。労働条件は会社と従業員との約束ですから、会社が勝手に破るわけにはいかないのです。しかし、例外として可能となるケースがあります。
個別同意がある場合
従業員の個別同意がある場合は、給与の引き下げも可能となります。労働契約法第8条では「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」とされ、同意を条件に給与の引き下げが認められます。
例えば、会社の経営状況が悪くなり「リストラを避けるには、どうしても従業員一人一人の給与を下げざるを得ない」といった場合には、個々の労働者から同意書を取り、給与減額をすることもあるでしょう。
就業規則が変更された場合
就業規則の変更により、労働条件が引き下げられることもあります。ただし、就業規則を変更する必要性や従業員が受ける不利益の程度などを勘案し、合理的な変更と認められる場合に限ります。さらに、就業規則は従業員に適正に周知されなければなりません。
給与がダウンするケース
そのほかにも、一定のケースに該当すると、結果的に給与が下がることもあり得ます。いくつかのケースを紹介しましょう。
役職等が変わった場合
懲戒処分などにより役職が降格となった場合は、給与が下がることがあります。例えば「課長」が「課長補佐」になったような場合に、それぞれの役職手当が異なれば、差額分だけ給与がダウンすることになります。
評価結果による場合
人事評価制度がある会社では、評価結果により賃金が下がることがあり得ます。ただし、適正な評価方法や賃金テーブル(賃金表)が就業規則等に整備・周知され、公正な評価が行われることが前提です。
仕事の内容が変わった場合
心身の状況や家庭の事情等により、一定期間、責任の程度が比較的軽い業務や残業の少ない部署への異動が行われることがあります。残業時間が少なくなれば手当も減少するため、結果的に給与が下がる結果になるでしょう。
労働時間が変わった場合
会社と従業員との同意により、所定労働時間が変更されることがあります。こうしたときは労働契約を結び直し、給与の見直しが行われます。例えば、フルタイムで働いていた人が、何らかの事情により1日6時間の勤務に変わるような場合だと、給与は下がることになるでしょう。
まとめ
給与は労働条件の中でも特に大切な項目です。会社側が一方的に給与をダウンさせることはできませんが、従業員の合意がある場合はその限りではありません。また役職の変更や労働時間の減少などにより、結果的に給与が下がることもあるでしょう。
ただ、給与のダウンに納得がいかないという場合は、労働条件や会社の制度・規則を確認したうえで、会社と話し合うことを考えてみましょう。
出典
e-Gov法令検索 労働契約法
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士