更新日: 2024.08.24 年収

「公務員ほどよい仕事はない」って本当? 会社員と公務員の「生涯年収」を解説

「公務員ほどよい仕事はない」って本当? 会社員と公務員の「生涯年収」を解説
中高生のなりたい職業ランキングでも、上位に入ることの多い職業が「公務員」です。民間企業と比べ高額で安定した収入を得られると人気があります。
 
しかし実際、民間企業と公務員とでは、生涯年収にいくらくらい差があるのでしょうか?
 
そこで今回は、民間企業と国家公務員・地方公務員の生涯年収の違いを比較してみます。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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生涯年収の計算方法

生涯年収の簡単な計算方法は、2種類です。
 
例えば全年齢を合わせた平均年収に勤続年数を掛けることで、おおよその生涯年収が割り出せます。ほかにも、年代別の平均年収に、それぞれの年代の勤続年数を掛けて足す方法があります。
 
今回は、全体の平均年収を用いて、生涯年収を計算してみましょう。
 

公務員と民間企業の生涯年収

国家公務員・地方公務員・民間企業それぞれの生涯年収を、4年制大学を22歳で卒業してから60歳の定年まで38年間勤務したと仮定してご紹介します。それぞれ発表している媒体が異なり、給与額の内訳に若干の差が出るため、参考程度にはなりますが、比較してみましょう。
 

国家公務員の生涯年収

国家公務員の生涯年収は人事院の令和4年国家公務員給与等実態調査を基に算出します。国家公務員の中でも最も人数の多い「行政職(ー)」の生涯年収を計算しました(表1)。
 
表1

平均俸給額
(A)
平均給与月額
(B)
ボーナス
(A×4.4)
年収
(B×12+ボーナス)
生涯年収
(年収×38年)
31万6512円 40万1207円 約139万2653円 約620万7137円 約2億3587万1206円

※人事院「令和4年国家公務員給与等実態調査の結果」を基に筆者作成
 
「平均俸給額」とは民間企業でいう基本給の平均のことで「平均給与月額」とは、俸給額+諸手当(残業代などの所定外給与や通勤手当など実費弁償的な手当を除く)のことです。なお、ボーナスは令和4年の国家公務員のボーナス4.4ヶ月分で計算しています。
 
計算の結果、国家公務員の生涯年収は約2億3600万円となりました。
 

地方公務員の生涯年収

地方公務員の生涯年収は、総務省「地方公務員給与実態調査」の大学卒業の一般行政職を基に計算します(表2)。
 
表2

平均俸給額
(A)
平均給与月額
国比較ベース(B)
ボーナス
(A×4.4)
年収
(B×12+ボーナス)
生涯年収
(年収×38年)
31万2735円 35万8878円 137万6034円 568万2570円 2億1593万7660円

※総務省「地方公務員給与実態調査」を基に筆者作成
 
なお「平均給料月額」は民間企業の基本給と同等です。「平均給与月額(国比較ベース)」は、国家公務員の平均給与月額と同様の内容となっています。地方公務員のボーナスは、地域によって異なりますが、国家公務員同様に民間企業の支給状況に合わせることとなっているため、同じように4.4ヶ月分で計算しています。
 
生涯年収は国家公務員よりも2000万円ほど低い、約2億1600万円となりました。
 

民間企業の生涯年収

民間企業の年収は、厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査で企業規模が10人以上の会社の平均値を基に計算します(表3)。
 
表3

所定内給与額
(A)
きまって支給する
現金給与額(B)
ボーナス 年収
(B×12+ボーナス)
生涯年収
(年収×38年)
36万9400円 39万8300円 121万2700円 599万2300円 2億2770万7400円

※厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」を基に筆者作成
 
なお「きまって支給する現金給与額」とは、基本給に加え通勤手当や家族手当・超過労働給与額などを含めた額です。「所定内給与額」とは、きまって支給する現金給与額から、時間外手当や休日出勤手当など超過労働給与額を差し引いた額となります。
 
生涯年収は2億2770万7400円となり、地方公務員の生涯年収よりも多い額となりました。ただし、民間企業の年収には全ての諸手当が含まれているのに対し、国家公務員と地方公務員の年収には、時間外手当や通勤手当などが含まれていないため、完全な比較はできません。
 
例えば毎月通勤手当を1万円支給されている公務員の場合、年間12万円、60歳までには12万円×38年で456万円になります。実際には地方公務員が民間企業の生涯年収を超える可能性もあるでしょう。
 

民間企業と国家公務員の生涯年収の差は約800万円

国家公務員の生涯年収は約2億3600万円、民間企業の生涯年収は約2億2800万円となりました。地方公務員に限っては、民間企業よりも少ない生涯年収となっています。
 
ただし、今回の公務員の年収には、時間外手当や通勤手当などが入っていません。そのため、実際の生涯年収には違いが出る可能性があります。就職や転職を考えている方は、この数字だけを鵜呑みにせず、業務内容や時間外労働の量などを考慮し、就職先を見つけましょう。
 

出典

人事院 令和4年国家公務員給与等実態調査の結果〔参考1〕行政職俸給表(一)の年齢階層別、給与決定上の学歴別人員及び平均給与月額(大学卒)
人事院 令和4年国家公務員給与等実態調査の結果(第7表)適用俸給表別、経験年数階層別、給与決定上の学歴別人員及び平均俸給額(行政職俸給表(一)大学卒)
人事院 国家公務員給与の実態 適用俸給表別平均俸給額及び平均給与月額(3ページ)
人事院 給与制度の基本的な枠組み(1)
内閣官房 国家公務員の給与 期末・勤勉手当(ボーナス)(14ページ)
総務省 公表様式の用語解説(50音順)
総務省 地方公務員の給与改定等に関する取扱いについて 1 本年の給与改定について(3ページ)
総務省 地方公務員給与の実態 令和4年4月1日地方公務員給与実態調査結果 第7表の1職種別,年齢別,学歴別職員数及び平均給料月額
総務省 令和4年地方公務員給与実態調査結果等の概要 <第8表>団体区分別平均給与月額(一般行政職・R4)(6ページ)
総務省統計局 政府統計の総合窓口 e-stat 令和4年賃金構造基本統計調査 産業大分類 雇用形態別年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計・大学)
厚生労働省 賃金構造基本統計調査で使用されている主な用語の説明
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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