パートの雇用契約書に「賞与あり」と記載されていました。この場合、一般的には何ヶ月分くらいもらえるものなのでしょうか?
配信日: 2025.02.03

このとき「同一労働同一賃金ガイドライン」により、労働者間では給与だけではなく賞与や福利厚生も公平とすることが原則となりました。「賞与」といえば、パートタイムの「賞与」の実態はどうなっているのでしょうか。
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執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)
夢実現プランナー
2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている
賞与支給は法的な義務はない
「正社員として勤める従業員には賞与(ボーナス)はあっても、パートタイムの労働者や有期労働者などには、賞与がなくても当然」と思う人もいるのではないでしょうか。
本来「賞与」とは従業員に対して臨時で支給する賃金で、企業の裁量によって決められていますが、実のところ法的には支給の義務はありません。したがって、賞与の制度を採用していないという企業もあります。
厚生労働省が調査している、「毎月勤労統計 令和6年9月分結果速報等」によると、調査産業全体の73%の事業所が賞与を支給しています。逆に考えると、27%の企業は賞与を支給していないということになります。
厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」の内容を見ると、賞与に関しては「同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。」と記載されています。
パートタイムや有期労働者でも正社員と同じような業務に熟達しているのであれば、同一の賞与を払う必要はあります。しかし、そもそも正社員にも賞与が支給されていなければ、支給する必要はないといえます。
支給規定も企業によってさまざま
前項のように、賞与は企業の裁量によって支給されるか否か決まりますが、賞与の金額や計算方法、支給回数なども、企業が自由に設定することができます。正社員の賞与の場合には、月給の3ヶ月や4ヶ月分などを年2回支給するというケースもあるのではないでしょうか。
ただしパートタイム労働者は、正社員と働く時間が違います。またパートタイムで働く場合、配偶者の扶養控除内で働いているという人も多いのではないでしょうか。
仮に月8万円の給与を受け取っている人の場合、年換算では96万円となります。これが正社員と同じような方法で計算され、月給3ヶ月分の賞与を年2回受け取ると年収は144万円となり、所得税や社会保険の扶養からも外れることになります。
また、配偶者(世帯主)の勤める企業によっては、所得税の扶養控除内で働いている場合に、配偶者手当が受け取れるケースもあります。所得税の配偶者控除は年収が103万円以下に受けられますので、年間7万円以上の賞与が出ると、この配偶者手当がなくなってしまいます。
さらに令和6年10月から、従業員数51人以上の企業に勤めるパートタイム労働者の場合は、年間収入が106万円を超えると社会保険に加入することが必要となりました。
その結果、上記の例のように月収8万円のパートタイム労働者は、この条件に当てはまる場合、年間10万円の賞与が支給されると社会保険の扶養から外れることになります。
企業の就業規則を確認しましょう
前述したように、賞与を支給しない企業があるなど、賞与は支給ルールがさまざまです。雇用契約書に「賞与あり」と記載されていたとしても、どの企業も同じ条件ではありません。
またパートタイムの場合は月給ではなく、時給で受け取っているケースが多いでしょう。すると、前項で述べたように高額な賞与を受け取った場合、扶養から外れてしまう場合もあり、例えば月給換算×0.4ヶ月や0.5ヶ月分といった寸志程度になる可能性もあります。
労働契約書に賞与の支給ルールが記載されている場合には、その内容を確認しましょう。労働契約書ではなく就業規則に記載されていることもありますので、確認してみましょう。
まとめ
2021年4月1日より、「パートタイム・有期雇用労働法」が中小企業にも適用されるようになり、同一労働同一賃金の実現に向けて、正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差が禁止されました。
賞与においても、各企業の賞与支給ルールにのっとった支給が求められるようになり、「パートタイム労働者にも賞与を支給する」という企業もあります。とはいえパートタイムの賞与については一般的な共通認識ないので、各企業の支給ルールを確認してみましょう。
出典
厚生労働省 令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査の概況
厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和6年9月分結果速報値等(特別集計:令和6年夏季賞与(一人平均)
厚生労働省 パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために
厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー