「世帯年収1000万円」でも、共働きの場合と片方が働いている場合で「手取り」が変わるって本当?

配信日: 2025.03.08

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「世帯年収1000万円」でも、共働きの場合と片方が働いている場合で「手取り」が変わるって本当?
近年の共働き世帯の増加にともない、世帯収入の構成パターンも多様化しています。実は同じ世帯年収1000万円でも、共働きなのか、夫婦どちらかの単独所得なのかによって、実際の手取り額に大きな違いが生じます。
 
今回は、世帯年収1000万円の場合に、共働き世帯と単独所得世帯それぞれの実質的な手取り額の違いから、賢い収入の組み合わせ方まで解説していきます。
FINANCIAL FIELD編集部

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所得税の基本的な仕組み

所得税は、給与収入から給与所得控除や各種所得控除を差し引いた課税所得に対して課税されます。重要なポイントは、課税所得が高くなるほど適用される税率が段階的に上がっていく「超過累進課税制度」が採用されていることです。
 
例えば、課税所得が195万円以下の場合は5%の税率が適用されますが、330万円を超えると20%に、695万円を超えると23%になります。つまり、同じ世帯年収でも、その収入構成によって税負担は大きく変わってきます。
 
この超過累進課税制度は、高所得者により多くの税負担を求める仕組みとして機能しています。そのため、世帯年収が同じでも、1人に収入が集中するか分散するかで、実際の税負担額に大きな差が生じることになります。共働き世帯と単独所得世帯で手取り額に違いが出る主な理由は、この税率の違いにあります。
 

収入パターン別の実質手取り額の比較

それでは、具体的な数字を見ながら、収入パターン別の実質的な手取り額の違いを見ていきましょう。同じ世帯年収1000万円でも、その内訳によって実質的な手取り額には大きな違いが生じます。
 

単独所得世帯の場合

世帯年収1000万円を1人で稼ぐ場合、高額所得層向けの税率が適用されるため、税負担が重くなります。
 
課税所得が高くなるほど適用される税率も引き上げられ、手取り額は大きく目減りすることになります。特に給与収入が1000万円を超えると、所得税率は33%に跳ね上がり、実質的な手取り額に大きな影響を与えます。
 

共働き世帯の場合

対照的に、同じ1000万円の世帯年収を夫婦で600万円と400万円に分散させた場合の状況を見てみましょう。収入を分散させることで、所得税の税率を効果的に抑えられる可能性があります。税負担がどのように変わるのか、表1で確認します。
 
表1

収入パターン 世帯年収 課税所得 所得税額 住民税額 社会保険料 実質手取り額
単独所得 1000万円 574.5万円 73.66万円 57.45万円 144.5万円 724.39万円
共働き
(600+400)
1000万円 481.5万円 30.52万円 48.15万円 144.5万円 776万円

金融広報中央委員会「所得税の仕組み」を参考に筆者作成
 
表1から分かるように、同じ世帯年収1000万円でも、共働きのほうが年間で約61万円多く手取りを得られる結果となっています。これは主に、所得税の累進課税制度によるもので、収入が分散することによって適用される税率が下がるためです。
 

効率的な収入配分のポイント

共働き世帯で税負担を最適化するには、夫婦の収入をなるべく均等に近づけることで、高い税率の適用を避けることができます。
 
社会保険料については、給与収入が130万円を超えると負担が発生するため、パート収入の場合は年収調整も検討が必要になります。
 
また、2025年の通常国会で配偶者控除を年収123万円に引き上げる審議が始まりますが、現時点では年収103万円以下なら世帯全体の税負担を抑えることができます。これらの制度を理解し、自身の状況に合わせた最適な収入配分を検討することで、より効率的に手取り収入が得られます。
 

賢い収入配分で手取り額をアップ

世帯年収1000万円の場合、収入の分散方法によって手取り額に年間約61万円もの差が生じます。ただし、共働きを選択する際は、生活スタイルの変化や家事分担なども考慮に入れる必要があります。
 
例えば、子育て中の家庭では保育費用の発生や、介護が必要な家族がいる場合は在宅時間の確保など、それぞれの状況に応じた収入配分の検討が必要です。大切なのは、家計の効率化と家族の生活の質の両立を図ることです。自分たちの家庭に最適な収入バランスを見つけることが、結果として豊かな生活につながるでしょう。
 

出典

金融広報中央委員会 知るぽると 所得税の仕組みを理解しよう!
国税庁 No.2260 所得税の税率
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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