夫婦で「年収1000万円」以上! それなら“パワーカップル”と呼べる?「手取り・生活費」をもとに生活レベルを検証
配信日: 2025.03.28

「パワーカップル」の実際の手取りや生活ぶりはどのようになっているのでしょうか。実際のデータをもとにシミュレーションしてみます。

執筆者:山田圭佑(やまだ けいすけ)
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
そもそも「パワーカップル」とは、いつできた言葉なのか。
「パワーカップル」とは、夫婦がともにフルタイムで働き、高所得を得ているカップルのことを指し、2013年に出版された「夫婦格差社会 ―二極化する結婚の形」(橘木俊詔・迫田さやか著、中央公論新社)の中でこの言葉が使われたことで、広く知られるようになったとされています。
この言葉はすでに一般化していますが、12年前当時は「夫婦で年収1000万円以上」が、おおよその目安として「パワーカップル」の定義に用いられていたと筆者は記憶しています。
12年間のうちには、社会保険料の増加や消費税率の引き上げ、インフレに伴う給与増などの影響もあり、現在は世帯年収1000万円以上でなく「1400万円以上」がパワーカップルだとされる場合もありますが、明確な定義は無いようです。
筆者は、12年前と現在では「年収1000万円世帯」の生活ぶりは大きく異なっていると認識していますので、「パワーカップル」のイメージも見直していく必要があるのではと考えています。
2024年現在、「世帯年収1000万円超」勤労世代はどのくらいの割合?
総務省の行う家計調査 家計収支編の2024年分によると、2024年において現役世代(勤労者世帯)のうち、1年間の実収入が1000万円以上(月額で83万3333円以上)である世帯は第IX区分(全世帯のうち、収入額の上位10%~20%に入る区分)に属しており、かなりの高収入世帯であると言えそうです。
統計を詳しく見ていくと、第IX区分の「世帯主の配偶者のうち女の有業率」は78.1%で、全区分のうちで最も高くなっています。高収入である家庭の多くは、女性も労働による収入を得ていると言えるでしょう。
では、夫婦ともに「年収500万円」で共働きし、16歳未満の子どもを1名を養っている世帯の手取り収入額や暮らしぶりはどのようになっているのでしょうか。東京都在住で、世帯主・配偶者ともに40歳未満(介護保険料はかからない)の家庭の手取り額は以下の通り計算されます。
収入:500万円(給与収入のみ)
所得税:約10万2000円
住民税:約24万4000円
厚生年金:約45万円
健康保険:約24万5000円
雇用保険:約3万円
年間手取り額:約392万9000円
夫婦ともに年収500万円の世帯の場合、年間手取り額は392万9000円×2=785万8000円、月間手取り額では約65万5000円となります。これに児童手当(月額1万円、年間12万円)を加えると、月間手取り額は「約66万5000円」です。
一方、2024年の家計調査によると、第IX区分の世帯において、1ヶ月あたりの主な支出費目・金額は以下の通りです。
食糧費:10万2612円
光熱・水道費:2万4341円
家具・家事用品:1万5036円
被服費:1万6329円
保険医療費:1万6145円
交通・通信費:5万8865円
その他消費支出:7万8795円
小計:31万2123円
これに加え、ファミリータイプの住居を賃貸している場合、東京都内では月額15~30万円程度、子どもが私立学校へ通っていたり習い事をしたりしている場合は、教育費が月額5万円程度必要になると予想されます。
仮に住宅費に25万円、教育費に5万円を支払っているとすると、1ヶ月あたりで必要になる生活費は全体で61万円程度となります。
この場合、夫婦の収入がボーナスを含んでいると考えると、ボーナスがない月の家計はおそらく赤字の状態です。今後、インフレ進行に給与の上昇が追いつかない状況であれば、非常に危険な状況だと言えるでしょう。
一昔前は「パワーカップル」と言われた世帯年収1000万円程度の家庭でも、現在の日本の都市部で生活している場合は、家計に十分な余裕が有るとは言いづらくなっているようです。
まとめ
最新のデータによれば、夫婦で年収1000万円以上を達成している家庭でも、住んでいる場所や生活様式によっては家計に余裕がない家庭も多いと予想されます。
「パワーカップル」という言葉が一般化してから12年が経過し、社会保険料や消費税の上昇、インフレ進行などの要因によって、同じ収入額でも生活の余裕は大きく減ってしまいました。
かつての「世帯年収1000万円はパワーカップル」というイメージは改めていく必要がありそうです。
出典
総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 2024年
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント