2024年一番「賃上げ率」が高かった職業は何? 賃上げの実態を調査!
配信日: 2025.04.01 更新日: 2025.04.02


執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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2024年の賃上げ率が高かった職業
厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、2024年に最も賃上げ率が高かった業界は「鉱業・採石業等」で、平均賃上げ率は約5.9%に上りました。
表1
業種 | 賃上げ率 | |
---|---|---|
令和6年 | 令和5年 | |
鉱業、採石業、砂利採取業 | 5.9% | 5.2% |
金融業、保険業 | 4.6% | 3.2% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 4.4% | 3.2% |
製造業 | 4.4% | 3.4% |
建設業 | 4.3% | 3.8% |
出典:厚生労働省「令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」を基に筆者作成
鉱業、採石業等の賃上げ率が全業種中トップで5.9%、それに次いで「金融業、保険業」が第2位の上昇率となっており、それぞれ令和5年を大きく上回りました。
一方、宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業などは賃上げ率が3%台にとどまり、教育・医療分野も2%台で、全体平均より低めです 。もともとの給与水準や業績の違いにより、業界ごとの差が現れています。
賃上げの具体的な事例と数字
賃上げ率が高かった業界・企業の具体例をいくつか見てみましょう。
(1)製造業
製造業全体の賃上げ率は4.4%でしたが、中でも鉄鋼大手の上げ幅は群を抜いていました。日本製鉄は月額ベースアップ3万5000円を含め14.2%の賃上げを実施。JFEスチールや神戸製鋼所も12%以上の昇給率で続きます。自動車業界でもホンダが月額2万1500円のベースアップを実施するなど、主要各社が賃上げを行っています。
(2)飲食・外食業界
コロナ後の人手不足が深刻な外食産業でも大きな動きがありました。ファミレス大手のすかいらーくホールディングスは、2024年春闘で6.2%の賃上げ率でした。ハンバーガーチェーンのモスフードサービスは8%の賃上げを実施し、牛丼チェーンの松屋フーズHDにいたっては10.9%もの賃上げを打ち出しました。
(3)小売業界
小売各社も相次いで賃上げを発表しました。スーパー大手のイオンは平均7%の賃上げを行い、家具大手のニトリは平均6%程度引き上げました 。家電量販店ではビックカメラが8年連続となるベースアップを発表しています。
これらの事例からも分かるように、多くの業種で顕著な賃上げが見られ、金額面でも「月1万円以上」のベースアップが次々と実現しています。長く低成長が続いていた賃金水準に、大きな変化が生じた年となりました。
賃上げが進んだ背景・要因
2024年に賃上げが進んだ背景には、複数の要因が重なっています。
(1)物価上昇(インフレ)への対応
消費者物価指数の上昇により、実質賃金の目減りを防ぐ必要性が高まりました。企業側も従業員の生活を守るため、物価上昇分を上回る賃上げを行う動きが広がりました。多くの労働組合が「物価以上の賃上げ」を要求し、結果として33年ぶりの高水準賃上げ率(主要企業で約5%)が実現しています。
(2)政府の賃上げ促進策
政府による賃上げ企業への税制優遇策や、最低賃金の引き上げなど政策面から後押しがあり、大企業だけでなく中小企業にも賃上げ機運が波及しました。実際、2024年度に賃上げを予定・実施した企業は全体の約85%に達しています。
(3)労働市場の人手不足問題
コロナ禍からの経済回復により求人が増える一方、少子高齢化で労働力人口は減少傾向です。特にサービス業や建設業などで深刻な人手不足が起こり、人材確保のために賃金引き上げが不可欠となりました。
ある調査によると、「業績が芳しくないが賃上げを実施予定」とするいわゆる「防衛的賃上げ」を行う企業が36.9%と最も多いとされており、人材の定着・採用のためにやむを得ず賃上げに踏み切るケースも目立ちます。つまり、業績に関わらず人材流出を防ぐための賃上げが広がったことが想定されます。
このように、インフレ、政策支援、人材不足、業績好調といった要因が重なり合い、2024年は日本全体で久しぶりに賃金が大きく伸びた年となりました。
まとめ
2024年は賃上げの動きが活発で、転職市場も活性化しています。賃上げ率の高い業界では人材需要が旺盛なため、転職や昇給のチャンスです。特に、即戦力の獲得競争が激しく、スキルを磨けば好条件での転職や昇給が期待できます。
ただし、2025年以降も賃上げが続くかは業界や企業規模によって差が出る可能性があるため、景気や政策の動向を注視しながらキャリア戦略を立てることが重要です。
出典
厚生労働省 令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況(5ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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