普通科の高校に通う子どもの就職先が決まりません……。やはり「商業」や「工業」などの専門科目がある高校の方が就職率は高いのでしょうか?
配信日: 2025.04.05

本記事では、高校の普通科における就職事情や高卒者と大卒者の収入の違い、就職を成功させるためのポイントを解説します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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普通科の生徒は就職しづらいのか?
高校卒業後の進路は、普通科と専門学科で大きく異なります。文部科学省のデータによると、普通科では卒業生の約7割が大学・短大等へ進学し、就職する人はわずか6.2%に過ぎません。
一方、商業科や工業科などの専門高校(専門学科)では約半数の47.2%が卒業後に就職しており、就職を選ぶ生徒の割合自体が高くなっています。この違いから、「普通科だと就職が難しいのでは?」と不安に思うのでしょう。
しかし、就職を希望する生徒の就職率を見ると、大きな差はありません。同じく文部科学省によると、令和6年3月卒業生の場合、普通科の就職率は95.9%で、専門学科と比べても極端に低いわけではありません(専門学科では工業科99.5%、商業科98.9%などほとんどの学科で98%以上)。
つまり、普通科でも「就職しづらい」わけではなく、就職を希望して積極的に活動すれば高い確率で内定を得られると考えられます。ただし、専門高校は企業とのつながりや実習を通じたスキル習得などサポート体制が整っている分、普通科生徒は自分で工夫する必要があるともいえます。
高校卒業後の収入の違いとは?
高卒で働き始める場合と大卒では、初任給や生涯収入にどの程度差が出るのでしょうか。厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」によれば、高校卒の平均初任給は16万7400円(月額)です。これに対し、大学卒の平均初任給は21万200円(月額)とされ、高校卒との間に月4万円以上の差が開いています。
この初任給の差は年間で約50万円、長い職業人生で見るとさらに大きな差となります。
実際に、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2024」によれば、フルタイム正社員として60歳まで働いた場合の生涯賃金(退職金は含まない)について、表1のような推計も出ています。
表1
生涯賃金(高校卒) | 生涯賃金(大学卒) | |
---|---|---|
男性 | 2億1000万円 | 2億5000万円 |
女性 | 1億5000万円 | 2億円 |
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2024」を基に筆者作成
男性大学卒で2億5000万円に対し、男性高校卒は2億1000万円と推計されており、その差は4000万円です。女性では大学卒が2億円に対し高校卒が1億5000万円と、5000万円の差となっています。基本的に高校卒は大学卒より4年ほど早く働き始めますが、それでも生涯収入では学歴の高い方が上回るのが現状です。
普通科の生徒が有利に就職するためには?
普通科から就職を目指すなら、在学中に以下のような工夫をすることで有利に就職活動を進めることができるかもしれません。
(1)資格取得に挑戦する
授業以外で専門知識を証明できる資格を取れば就職に大いに役立ちます。例えば日商簿記や基本情報技術者、フォークリフト免許など、資格を取得すれば仕事で即戦力になれることをアピールできるほか、企業によっては資格手当がつき給与アップにつながる場合もあります。
(2)インターンシップや職業体験を活用する
学校や自治体が実施する職場体験や企業見学、インターンシップの機会があれば積極的に参加しましょう。実際の仕事を体験することで業界研究が深まり、志望動機にも説得力が増します。
(3)高卒採用を積極的に行う企業を探す
就職情報は大学生向けだけでなく、高校生向けの求人も数多く存在します。特に地元のハローワークや学校の就職担当の先生は、高卒求人の情報源として重要です。学校の進路指導室で過去の就職実績を調べてもらったり、企業の採用ページで高卒採用コースがあるか確認したりして情報収集すると、自分に合った就職先が見えてきます。
まとめ
高校の普通科でも工夫次第で十分に就職は可能と考えられます。専門学科より職業教育は少ない傾向にあるものの、自由に進路を選べる利点があります。早めに将来を意識し、スキルや資格を身につければ、明確な意志を持って就職活動に臨めるでしょう。
不安を抱くよりも自分の強みを磨き、企業から求められる人材になることが大切です。
出典
文部科学省 高等学校卒業者の学科別進路状況
文部科学省 令和6年3月高等学校卒業者の就職状況(令和6年3月末現在)に関する調査について
厚生労働省 令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1 学歴別にみた初任給
独立行政法人労働政策研究・研修機構
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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