大学進学のため「通塾」を希望するわが子。年収450万円のわが家では塾代「30万円」がキツイけど、将来を考えると“借金”してでも通わせるべき?「学歴別の年収」もあわせて解説
配信日: 2025.04.10

本記事では、大学などの進学に際してかかる学費と、学歴別の年収の差、奨学金の注意点について解説します。

執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
大学など高等教育機関への進学にかかる費用
高校卒業後、大学など高等教育機関に進学する場合の学費について見ていきましょう。初年度にかかる入学料と、在籍期間中にかかる授業料の合計金額は以下の通りです。
・専門学校…約220万円(2年分)
・高専…約60万円(高校3年分を除く2年分)
・公立短大…約100万円(2年分)
・私立短大…約200万円(2年分)
・国立大学…約250万円(4年分)
・私立大学…約500万円(4年分)
これらはあくまでも平均値である点に注意してください。専門学校や私立大学などは、国や地方自治体が一律で学費を定めている国公立とは異なり、学校や学部によって学費が変動します。
専門学校、高専、短大は通学期間が2年という場合が多く、大学に比べて学費が少なく済む場合が多いでしょう。ただ、その観点で考えると、4年通うにもかからず、学費が約250万円で済む国立大学のコスパの良さが際立ちますね。
進学先の違いによる年収の差
進学する学校によって学費は大きく異なりますが、「学費が安いから」という理由だけで進学先を決めるのは時期尚早です。進学先によって、就職できる職種や将来得られる年収は変わってきます。厚生労働省の調査によると、令和5年における学歴別の年収は次のとおりです。
・高校…281万9000円
・専門学校…300万2000円
・高専・短大…297万4000円
・大学…369万4000円
・大学院…476万7000円
高校、専門学校、高専・短大は280~300万円程度であまり差がありませんが、大学は370万円程度、大学院は480万円程度となっています。
「大学、大学院」卒の年収と、「高校、専門学校、高専・短大」卒の年収を比較するとその差は大きいことが分かります。大学卒と専門学校卒では約70万円、大学院卒と専門学校卒では約180万円の差となっています。この差が40年続くとすると、大学卒と専門学校卒では約2800万円、大学院卒と専門学校卒では約7200万円の差になります。
もし私立大学に進んで約500万円の学費がかかったとしても、大学と専門学校の年収の差である約70万円をふまえると、約7年ほどで500万円の学費分を回収できることが分かります。
本記事のケースでは、塾代の年間30万円を捻出することが大変とのことですが、3年間塾に通ったとしてもかかる費用は90万円、1年強で回収できる計算になります。
子どもが成績優秀で有名大学に通える可能性があるのであれば、さらに年収は上がっていくことも考えられるでしょう。
とは言え、大学進学にあたっては学費以外にも費用がかかる可能性があります。遠方の大学に進学し、一人暮らしをするとなると、下宿代としてさらに数百万円の費用が必要となるでしょう。しかし、それでも生涯年収差を考えると、子ども本人が希望するのであれば、大学進学を検討してみてもよいのではないでしょうか。
奨学金の負担も知っておこう
「それならば、借金をしてでも塾に通って大学進学を」という考えになるかもしれません。ただ、本記事のケースでは、親の年収が450万円とのことなので、手取りにすると360万円ほどで、生活費は月々30万円ほどと考えられます。
その中から数百万円の学費を準備することは難しいかもしれません。そこで味方になってくれるのが「奨学金」です。貸与型の奨学金を借りた場合、将来返済する必要があります。その負担について見ていきましょう。
例えば、独立行政法人日本学生支援機構で500万円の奨学金を借りたとし、有利子のもので、貸与利率は利率固定方式の1.641%と仮定します。この場合の月々の返済金額は約2万5000円で、これが20年続くのです。
大学や大学院に進めば年収が高くなる可能性が高くはなりますが、それでも就職したてのころは年収も低い場合が多く、お子さんの生活を圧迫する可能性が高くなるかもしれません。
奨学金を借りるにせよ、こういった奨学金の返済を背負う重さも知っておくべきです。
まとめ
生涯年収の観点からは、大学や大学院へ進学させたほうが、経済的にゆとりある人生を送れる可能性が高いでしょう。特にお子さんが成績優秀なのであれば、有名大学に進学できる可能性が高く、奨学金を利用してでも大学へ進学することを前向きに検討したほうがよいかもしれません。
ただ、奨学金はあくまでも借金であり、親も子どもの負担を知っておく必要があります。
出典
厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査の概況
文部科学省 国立大学と私立大学の授業料等の推移
文部科学省 私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士