世帯年収「600万円」の会社員。病気の治療で「月8万円」支払っていますが、高額療養費制度の“限度額”が引き上げられたら、どれだけ負担が増えるのでしょうか? 上限額を試算

配信日: 2025.05.20

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世帯年収「600万円」の会社員。病気の治療で「月8万円」支払っていますが、高額療養費制度の“限度額”が引き上げられたら、どれだけ負担が増えるのでしょうか? 上限額を試算
病気やけがなどで医療費が高額になったときに、患者の金銭負担を軽くする公的制度として「高額療養費制度」がありますが、制度が見直されて限度額が引き上げられると話題になりました。
 
結果的に8月の制度改正は見送りとなりましたが、今後高額療養費の限度額が引き上げられた場合、毎月の医療費負担がどのくらい変化するのでしょうか。本記事で試算してみます。
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年収ごとの上限金額はいくら?

高額療養費制度での医療費負担は、年齢と年収ごとに上限金額が決められています。年齢では70歳未満と70歳以上に区分され、そして年収ごとに分けられています。
 
例えば、70歳未満と70歳以上で同じ年収でも、70歳以上からは外来の受診額にも上限が設定されているのです。
 

<例>

世帯年収360万円で60歳のAさんの負担上限額:世帯ごと月額5万7600円
世帯年収360万円で72歳のBさんの負担上限額:世帯ごと月額5万7600円・外来(個人ごと)1万8000円

 
そして、過去12ヶ月以内に3回以上医療費負担が上限額に達した場合には、4回目から「多数回該当」となって上限額が下がるように設定されています。
 

家族も病気になって医療費がかかった場合、どうなるの?

ひとり1回分の医療費負担額が上限額を超えていないケースでも、同じ医療保険に加入している扶養家族(配偶者など)の医療費自己負担額を1ヶ月単位で合算することができ、これを「世帯合算」といいます。
 

<例>

同じ月に世帯年収360万円で72歳のBさんが入院、同居する配偶者Cさん71歳が病気で外来診療を受けたケース
 
Bさんの入院費用(自己負担額)4万8000円+Cさんの外来診療費9000円+Cさんの薬局自己負担額5000円=世帯合算額6万2000円

 
Bさん世帯の自己負担額上限は5万7600円なので、世帯合算額6万2000円から上限額5万7600円を差し引いた4400円が高額療養費制度の支給見込み金額になります。70歳以下の人の受診では、2万1000円以上の自己負担のみ合算されるので注意が必要です。
 
世帯合算には、もうひとつ注意すべき点があります。それは「同じ世帯でも、加入している健康保険が違うと世帯合算できない」ことです。例えば、夫婦共働きや、同居している親と子がそれぞれ違う健康保険に加入していると、高額療養費制度では「2世帯」という扱いになり世帯合算できません。
 

制度が変わると、どのくらい負担が増えそう?

高額療養費制度の上限額引き上げ見送りになりましたが、25年8月から年収の区分によって2.7%から15%の範囲で引き上げが予定され、さらに26年8月からと27年8月からとで、段階的に上限額が引き上げられるとされていました。
 
もし予定どおり見直されていた場合の例として、世帯年収600万の50代会社員が入院して医療費50万円(窓口負担15万円・制度適用後の負担額は約8万円)のケースでは、高額療養費の上限額はどう変化するのか試算してみましょう。
 

<試算例>

・25年8月までの上限額の計算式
上限額=8万100円+(医療費-26万7000円)×1%
8万100円+(医療費50万円-26万7000円)×1%=上限額見込み約8万2430円
 
・25年8月から26年7月までの上限額の計算式
年収370万円から770万円までの引き上げ幅は10%です。
 
上限額=8万8200円+(医療費-29万4000円)×1%
8万8200円+(医療費50万円-29万4000円)×1%=上限額見込み約9万260円

 
試算すると、約7830円の負担増になって、返ってくるお金が減ることになります。
 

まとめ

病気やけがなどで医療費が高額になったときに、患者の金銭負担を軽くする「高額療養費制度」の限度額の上限の引き上げは見送られました。
 
ただし今後は負担額が上がっていく可能性があります。医療保険・がん保険などに加入して思わぬ出費増加に備えたり、健康診断を受けて早めに治療し医療費負担を抑えたりすることが望ましいでしょう。
 

出典

厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ
厚生労働省 高額療養費制度の見直しについて
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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