昇給で「月給30万円」になったのに、手取り「約23万円」でショック! どうしてこんなに引かれるの? 会社員の“引かれるお金”を解説

配信日: 2025.06.16

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昇給で「月給30万円」になったのに、手取り「約23万円」でショック! どうしてこんなに引かれるの? 会社員の“引かれるお金”を解説
給与明細書を見て「どうしてこんなに引かれるの?」と感じる人は多いのではないでしょうか。本記事では、会社員が毎月の給料から何をどれだけ引かれているのか説明します。節税の視点も簡単に紹介します。
福嶋淳裕

日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

リタイアメントプランニング、老後資金形成を得意分野として活動中の独立系FPです。東証一部上場企業にて、企業年金基金、ライフプランセミナー、DC継続教育の実務経験もあります。

https://www.fp-fukushima.com/

前提

前提は以下のとおりです。

・会社員(業種は「農林水産・清酒製造、建設」以外)
 
・40歳以上65歳未満
 
・東京都在住
 
・単身世帯、扶養親族なし
 
・健康保険は「協会けんぽ」に加入
 
・月給30万円(各種の手当を含む額面合計)
 
・月給から引かれているものは社会保険料と税金のみ

社会保険料

会社員が自己負担する社会保険料には、厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料(40歳以上)、雇用保険料の4つがあり、月給から天引き(源泉徴収)される形で納付します。それぞれの計算式を見ていきましょう。なお、労災保険も社会保険の1つですが、労災保険料は全額が事業主(会社)負担であるため割愛します。
 

厚生年金保険料

厚生年金保険料の自己負担額は、標準報酬月額×保険料率(18.3%)×自己負担割合(50%)です。
 
計算例:30万円×18.3%×50%=2万7450円
 
月給(「報酬月額」といいます)に対応する「標準報酬月額」は、日本年金機構の「厚生年金保険料額表」で確認できます。
 

健康保険料

健康保険料の自己負担額は、標準報酬月額×保険料率(9.91%)×自己負担割合(50%)です。
 
計算例:30万円×9.91%×50%=1万4865円
 
標準報酬月額は、協会けんぽに加入している場合、全国健康保険協会の「保険料額表」で確認できます。
 

介護保険料

介護保険料の自己負担額は、標準報酬月額×保険料率(1.59%)×自己負担割合(50%)です。
 
計算例:30万円×1.59%×50%=2385円
 
こちらの標準報酬月額は、健康保険料の標準報酬月額と同じです。
 

雇用保険料

雇用保険料の自己負担額は、業種別の労働者負担率をかけて計算します。「農林水産・清酒製造、建設」以外は「一般」に分類され、労働者負担率は0.55%です。
 
計算例:30万円×0.55%=1650円
 

税金

月給から天引き(源泉徴収)される税金は、所得税と住民税です。ここでは源泉徴収される税額の決まり方について説明しますが、2024年の「定額減税」のような時限措置は割愛します。
 

所得税

所得税は、1年間の所得に応じて適用される税率が決まりますが(5%から45%まで)、月給から源泉徴収される税額は、その年分の所得税額が年末調整または確定申告によって確定する前の暫定的な額です。源泉徴収される税額は、基本的には次の流れで決まります。

・その月の月給から社会保険料を差し引き「社会保険料控除後の給与等の金額」を求める。
 
・国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」にて「社会保険料控除後の給与等の金額」と「扶養親族等の数」に応じた「税額」を確認する。
 
例:社会保険料控除後の給与等の金額=30万円-4万6350円=25万3650円、扶養親族等の数=0人の場合、6640円

住民税

住民税は、前年の所得を基に計算され、会社員の場合、当年6月から翌年5月までの月給から源泉徴収される形で納付します。所得割と均等割の2つの要素で構成され、基本的な流れは以下のとおりですが、異なる市区町村もあります。

・前年の課税所得の算出(所得税の課税所得の考え方とほぼ同じだが、計算方法は一部異なる)
 
・所得割の計算(前年の課税所得に対して、市区町村民税6%、都道府県民税4%などが適用される)
 
・均等割の加算(市区町村民税3500円、都道府県民税1500円などが一律に加算される)
 
・調整控除の適用(所得税と住民税の控除額の差を調整し、市区町村長が住民税額を決定する)
 
例:1万8000円前後(前年の課税所得を209万円と仮定し、所得割が年20万9000円、均等割が年5000円、合計21万4000円を12で割ると約1万8000円)

節税するには?

私的年金制度である「企業型DC(確定拠出年金)」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、加入者掛け金の全額を「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除できます(課税所得を減らせます)。
 
つまり、運用成績とは関係なく、所得税と住民税を確実に軽減することができます。加入者掛け金の額、加入期間、所得税の適用税率によっては、「会社員時代の累計節税額100万円超え」もあり得るでしょう。未加入の会社員、特に若い世代の人は調べてみましょう。
 
そのほか、さまざまな所得控除や税額控除を忘れずに申告すれば、税金の過払いを回避できます(社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、扶養控除、医療費控除、住宅借入金等特別控除など)。特に、家族の国民年金保険料や医療費を負担した年や、同居老親が配偶者と死別した年などは、申告漏れに気を付けましょう。
 

まとめ

所得税は所得に応じて税率が変わります(5%から45%まで)。住民税(所得割)の税率は原則10%です。
 
会社員の多くは、月給の15%程度を社会保険料の自己負担分として天引きされている計算になります(厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料の計算の基礎となる標準報酬月額には上限があるため、月給の高い人は実質的な自己負担率が低くなります)。
 
月給から15%引かれることは相当な負担ですが、事業主(会社)はそれ以上の額を負担していることも知っておきましょう。
 

出典

日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
厚生労働省 令和7(2025)年度雇用保険料率のご案内
国税庁 令和7年分 源泉徴収税額表
総務省 個人住民税
 
執筆者 : 福嶋淳裕
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

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