日本は平均年収「460万円」の一方、実態は「半数が400万円以下」という厳しい現実! 格差が広がる理由とは? 統計をもとに“格差社会の実情”を解説
配信日: 2025.07.05

本記事では、日本社会における年収の偏りの構造やその背景、さらに中間層の消失による格差社会の進行、そしてSNSや「自己責任論」がもたらす精神的なプレッシャーまで、格差社会の実情を解説します。

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目次
「平均」は高所得者層が数値を上げやすい
「周りに平均年収である460万円を稼いでいる人はそんなにいない」といった感覚に陥る理由の1つが、「平均値」の計算方法にあります。
統計における「平均年収」は、全ての人の年収を足して人数で割った値です。このとき、一部の高所得者の存在が全体の数値を大きく引き上げるため、多くの人々が感じる生活水準とは、かい離した数字になる傾向があります。
実際、「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、平均年収は約460万円ですが、年収が400万円以下の人の割合が全体の50.7%を占めています。
1000万円以上稼ぐ人は増加傾向
年収400万円以下の人が過半数を占める中、反対に年収1000万円以上稼ぐ人の絶対数や割合はここ数年増加しています。同じ調査によると、2020年には年収1000万円以上の人は238万8000人、全体の4.7%でした。その後、1000万円以上稼ぐ人は年々増え、2023年では279万1000人、全体の5.5%となっています。
この現象は、社会全体として「豊かになっている」ことを意味するわけではありません。むしろ、高所得層とそれ以外の層の差が広がっていることを表していると考えるのが妥当でしょう。
非正規雇用の増加と業種間格差が格差を広げる
このような年収の二極化が起こっているとすれば、その原因としては、非正規雇用の増加と業種間格差が挙げられます。
厚生労働省の「令和6年度版厚生労働白書」によると、非正規雇用として働く人の数や割合はここ十数年でかなり増加してきています。
パートやアルバイト、契約社員などの非正規労働者は、正社員と比べて賃金が低い傾向にあり、ボーナスや昇給も限られがちです。中長期的に見た非正規雇用者の増加により、日本全体の給与水準の増加が抑えられている面はあるでしょう。
さらに、業種ごとの賃金格差も深刻です。ITや金融、専門職といった高収入が得られる業種がある一方で、介護・福祉・保育など社会的に重要な役割を担う業種では、依然として賃金が抑えられているケースが多いです。こうした産業構造の偏りも、格差拡大の一因と言えます。
「自己責任」の風潮が強まるなかで、厳しい現実に直面する人も
格差社会が進むなかで、「自己責任論」が一層強調される風潮も見られます。
例えば、老後の資金準備についても「国の年金制度に頼るな」「自分でNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)で資産形成を」といった声は少なくありません。もちろん、資産運用は重要ですが、そもそも月々の生活で精いっぱいな人にとっては、投資に回す余裕などないのが現実でしょう。
SNS時代の見えすぎる現実が精神的負担に
現代特有のストレス要因として、SNSによる「見えすぎる生活格差」も挙げられます。SNSでは、海外旅行、高級ディナー、ブランド品に囲まれたライフスタイルが日常的に投稿され、多くの人の目に触れます。
こうした投稿を見るたびに、「自分とは住む世界が違う」「自分は何のために働いているのか」と虚しさや劣等感を覚える人も少なくありません。特に、努力しても報われにくい環境にある人にとっては、他人の成功が自分の失敗に見えてしまう心理的な圧力もあるでしょう。
まとめ
表面上は「平均年収460万円」という数字があっても、年収400万円以下が過半数というのが実態です。その背景には、非正規雇用の増加や業種間の賃金格差など、構造的な課題があります。
そしてそれに追い打ちをかけるように、自己責任論やSNS時代の精神的負担が、多くの人の暮らしと心を圧迫しています。
個人としては、平均値だけで語られない「暮らしのリアル」を直視すること、そして社会としては、多様な働き方・生き方に対応した制度や支援の整備が求められていると言えるでしょう。
出典
国税庁 令和5年分民間給与実態統計調査
厚生労働省 令和6年度版厚生労働白書 正規雇用と非正規雇用労働者の推移
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー