35歳で転職して「年収500万円」から「700万円」に増えたのに、手取りは思ったほど変わりません…。なぜでしょうか?
本記事では、年収アップ後の“控除・課税・保険料”の仕組みを具体的に解説し、増えた分を無駄にしないためのポイントをお伝えします。
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目次
年収が増えても手取りが大幅に増えない“壁”の正体
年収が上がれば当然手取りも増えるものですが、実際には「可処分所得(手取り)」が予想より伸びないことがあります。その理由は主に次の要素です。
・所得税・住民税が累進課税で税率が上がること
・社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料など)が比例的に増えること
・所得控除・各種控除の影響が相対的に小さくなること
・税金や保険料の壁(年収の節目)に当たること
つまり、収入が増える分、その増加分に対しても一定の税・保険料が課されるため、手取りの伸び幅は抑えられやすいのです。実際、家計の例や税務解説でも「収入が増えるほど、控除後の差し引き額が大きくなる」点が指摘されています。
税金と社会保険料でどれくらい差が出るか
実際の数値を使ったシミュレーションを以下の図表1で見てみましょう(モデルケース・おおよその想定値)。
図表1
| 項目 | 年収500万円時 | 年収700万円時 |
|---|---|---|
| 総支給収入 | 500万円 | 700万円 |
| 社会保険料(健康保険・厚生年金等) | 約60〜80万円※ | 約90〜110万円※ |
| 所得税・住民税 | 約35〜60万円 | 約80〜110万円 |
| 控除・各種控除の割合 | 比較的大きく効く | 相対的に控除の比率が下がる |
| 残る手取り(概算) | 約350〜380万円程度 | 約470〜500万円程度 |
筆者作成
※社会保険料は事業所・加入保険の種類・年齢などにより変動します。
このように見てみると、年収が+200万円上がったとしても、税金・保険料で差し引かれる額はそれなりに大きく、手取りの伸び幅は予想より小さくなることがわかります。
控除や“年収の壁”が収入増加を抑えるポイント
手取りの伸びを抑える要因には、税制上・保険上の“壁”や控除制度が関係しています。
・累進税率・所得税率区分
所得が高くなるほど、課税所得に対する税率も上がるため、増えた部分に重い税がかかります。
・社会保険料の上昇
収入が増えると、健康保険料や厚生年金保険料も比例的に増えるため、差し引きが大きくなります。
・控除の逓減・控除対象の縮小
各種所得控除(医療費控除・扶養控除・生命保険料控除など)は一定額で上限があるため、所得が大きくなると控除の影響が相対的に小さくなります。
・年収の壁制度
ある年収を超えると税率が変わる、社会保険料の段階が変わる等の壁が複数存在します。これが、収入を増やしても“段階的に伸びにくい”印象を与えます。
年収アップ後に手取りをできるだけ残す方法
増えた年収をできるだけ手取りとして残したいなら、以下のような工夫や対策が考えられます。
・所得控除を最大限に活用する
医療費控除、ふるさと納税、生命保険料控除、確定拠出年金(iDeCo)など、使える控除を積極的に活用する。
・副収入・収入構造を分散させる
給与以外の収入(不動産収入・投資収益など)を持つことで、給与所得だけに重税がかかるリスクを軽減する戦略を検討する。
・福利厚生給付や非課税手当を有効活用する
交通費・通勤手当・住宅手当・資格手当など、非課税・課税優遇のある手当を制度利用する。
・税制改正を見据えて備える
法改正後の控除額や課税基準が変わる可能性を注視し、年収アップ計画や節税戦略を最新制度に合わせて調整する。
・シミュレーションをこまめに行う
年収アップが決まった段階で、税理士・FPに相談して、増収後の手取り見込みを確認して戦略を立てる。
まとめ
年収が500万円から700万円に増えても、手取りが思ったほど増えないのは、所得税や住民税、社会保険料が増加するためです。累進課税や控除の影響で、年収アップの恩恵を実感しにくいこともあります。収入を増やすだけでなく、控除の活用や支出の見直しなど、手取りを最大化する工夫も大切です。
出典
国税庁 No.2260 所得税の税率
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
