10月の給与明細で「社会保険料」が“3000円”も高くなっていた!? 昇給したわけでもないのになぜでしょうか?「引かれる保険料」が増えるケースとは
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「社会保険料」は「健康保険料」と「厚生年金保険料」の合計
社会保険料は、主に健康保険料と厚生年金保険料の合計です。40~64歳の人は介護保険料も追加で徴収されます。社会保険料は、企業と労働者が半額ずつ負担する労使折半となっているため、会社員の場合は毎月支払っている金額の2倍が本来の社会保険料です。
なお、狭義の社会保険料は前記の通り健康保険料と厚生年金保険料から成りますが、広義の社会保険料には雇用保険料や労災保険料も含まれます。ただし、雇用保険料は基本的に企業負担のほうが大きく、労災保険料は全額企業負担が原則です。
昇給しなくても「社会保険料」が高くなるケースとは?
社会保険料は、報酬月額を等級ごとに区分した標準報酬月額によって決まります。報酬月額とは、基本給や各種手当などを含む毎月の給料です。
日本年金機構によると、実際の報酬と標準報酬月額との間に差が生じないように、その年の4月・5月・6月の報酬月額を基に等級が決定します。この手続きが定時決定で、毎年7月に行われます。
新たな標準報酬月額はその年の9月から来年の8月まで適用され、この計算には基本給だけでなく残業手当も含まれます。そのため、4月・5月・6月の残業手当などを含めた給料が高いと、9月以降の社会保険料が高くなる仕組みです。掲題のケースでは、残業の影響で4月・5月・6月の給料が高くなった可能性があります。
なお、定時決定は原則として全従業員が対象ですが、以下のいずれかに当てはまる人は対象外です。
・その年の6月1日から7月1日までに資格取得(保険に加入)した
・その年の6月30日以前に退職した
・その年の7月改定の月額変更届を提出する
・その年の8月か9月に随時改定が予定されている旨を申し出た
等級が上がると「社会保険料」はいくらくらい高くなる?
ここでは、東京都の会社に勤める40歳を例に、等級が上がった場合の社会保険料の差額をシミュレーションします。全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料額表を基に、標準報酬月額が30万円から上がった場合の社会保険料額とその差額を図表1にまとめました。なお、図表1内の社会保険料は健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料の合計です。
図表1
| 標準報酬月額 | 健康保険の等級 (厚生年金保険の等級) |
社会保険料(折半額) | 22(19)等級との差額 |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 22(19) | 4万4700円 | - |
| 32万円 | 23(20) | 4万7680円 | 2980円 |
| 34万円 | 24(21) | 5万660円 | 5960円 |
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表を基に筆者作成
1等級上がるごとに約3000円高くなっていることから、掲題のケースでは標準報酬月額が1等級上がったものと考えられます。実際の等級適用や保険料率の適用開始時期などは、勤務先の給与締め日や支払形態によって異なるため、気になる人は自身の給与明細を確認しましょう。
まとめ
社会保険料は標準報酬月額によって決まり、標準報酬月額はその年の4月・5月・6月の報酬月額を基に等級が決まります。そのため、4月・5月・6月の残業手当などを含めた給料が高いと、9月以降の社会保険料が高くなる場合があります。具体的には、1等級上がるごとに社会保険料が約3000円高くなる可能性があります。
標準報酬月額の増加は一概に損ともいえませんが、社会保険料を抑えたい人は、算定期間中はあまり多くの残業を避けたほうが無難かもしれません。
出典
日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
