「家族間の信託」は具体的にどのような人が、どんな使い方をしたらいいのか?

配信日: 2018.04.13 更新日: 2019.05.17

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「家族間の信託」は具体的にどのような人が、どんな使い方をしたらいいのか?
遺言や後見を補完する仕組みとして注目されている「家族間の信託」について、具体的にどのような人が、どんな使い方をしたらいいのか、具体例を見ながら解説をしていきます。
竹内美土璃

Text:竹内美土璃(たけうち みどり)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、企業年金基金管理士、さくら総合法律事務所・FP部門、確定拠出年金相談ねっと認定FP。
FPでありながら、ある時は夫婦問題カウンセラー、ある時は相続アドバイザーとなり、「お金と気持ちを一気に解決」することを得意とする。
法律事務所で13年間勤務して得た知識と、5年間のファイナンシャルプランナーとしての実績で、「お客様を幸せで豊かな未来へ導く案内人」として定評が高い。
1972年生まれ。愛知県豊田市出身。現在は、名古屋市在住。

竹内裕詞

監修:竹内裕詞(たけうち・ゆうじ)

弁護士

1993年愛知県弁護士会登録。
弁護士として25年の経験を元に、地元企業の顧問弁護士として、契約、債権回収、労務など事業活動に関する相談を得意とする。また、遺言、家族信託を利用した事業承継、財産承継にも取り組んでいる。
依頼者の話を注意深く聴き、依頼者の希望は何なのかを掘り下げて、解決策を考えることを常に心がけて相談に当たっている。
1966年生まれ。愛知県名古屋市出身。現在は、名古屋市在住。
http://www.sakura-sogo.jp/

信託とは

 
信託とは、「財産を持っている人(委託者)が、自分が信頼する人(受託者)に財産を託して、定められた目的(信託目的)にしたがって財産を管理・処分してもらい、財産から得られる利益を定められた人(受益者)へ渡す仕組み」のことです。
 
一般的には、下記の図のようになります。
 


 

事例から信託を見てみると

おじいさん(Aさん)は、おばあさんと息子さん(Bさん)と3人暮らしです。
 
Aさんは自宅のほか、賃貸アパートや月極駐車場などの収益不動産を持ち、大家業を営んでいます。そのほか、株式や投資信託といった投資資産を持っています。Aさんはこれからの人生について、下記のように思っています。
 
・これからもAさんは、必要に応じてアパートを建て替えたり、資産を積極的に運用して利益を得たりしたいと考えている。
・相続の際には、自分が死んだあとの相続税の支払いに備えて、駐車場を売却して現金化したいと考えている。
・将来、自分が重病や認知症になったら、自分の希望どおりに資産活用や処分ができなくなるのではないかと心配している。
 
というのも、自分が判断力を失ったときに財産を管理してもらう「後見」制度は、本人の財産を守るための制度なので、リスクを取って資産を運用したり、収益性を上げるためにアパートを建て替えたり、納税資金を準備するために不動産を売却したりすることはできないと聞いたからです。
 

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後見による解決方法

高齢になると、体力や判断力が減退したり喪失したりして、自分で自分の財産を管理・処分することが、難しくなるということが起こりがちです。
 
このようなときに、本人に代わって財産を管理処分するために利用するのが、成年後見制度です。成年後見制度は後見人が本人(被後見人)のために、本人に代わって財産を管理処分するものです。
 
しかし、後見制度を利用すると、いろいろと不都合なことが起きます。
 
例えば、後見が始まると本人は「被後見人」となり、一切の財産を管理処分することができなくなります。会社の取締役や監査役になれませんし、遺言も特別な要件の下でなければ作れません。
 
また、後見人が行う財産の管理処分は、本人の財産の維持管理に必要・有用である場合にしか認められません。
 
本人の自宅不動産の処分は、生活費や入院・介護費用を賄うために売却する場合にしか認められませんし、自宅以外の不動産の処分もその必要性が問われます。納税資金を確保するために不動産を売却したり、財産を組み替えたりすることは認められませんし、投機的な取引もできません。
 
いったん後見を始めると、判断能力を回復しない限り本人が死ぬまで継続することとなります。
 

信託による解決方法

信託を利用すれば、管理・処分を委ねる必要のある財産だけを選んで信託を設定すれば良いですし、本人が能力や資格に制限を受けることもありません。
 
信託契約にどのように管理処分をするか定めておけば、アパートを建てたり、不動産を売ったり、投機的な取引を行ったりすることも可能です。
 

信託による具体的な解決方法

家族間信託を使い、息子(Bさん)を受託者にして管理してほしい財産を信託し、自分自身を受益者にしておけば、Aさんが判断力を失ったあとも、Bさんがリスクを取って資産を運用したり、相続税の節税や納税資金を準備するために不動産を処分することができます。
 
信託では、委託者が判断力を失ったあとも、財産が信託目的に従って管理処分されますので、後見ではできない積極的な財産管理処分をすることができます。
 
このケースの場合、上記の図で考えると、Aさんが委託者=受益者となり、Bさんが受託者となります。
 
また、弁護士などの専門家を信託監督人や受益者代理人に選任しておけば、受託者であるBさんに適切に任務を行わせ、受益者の権利を守ることもできます。
 

まとめ

信託を利用して、後見では実現できなかった希望を実現することができます。ただし、信託が一番いいわけではありません。信託を後見に代えて利用したり、後見と組み合わせて信託を設定して、本人の希望に添った財産管理を実現することが大切です。
 
Text:竹内 美土璃(たけうち みどり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、DCプランナー2級、企業年金基金管理士、さくら総合法律事務所・FP部門、確定拠出年金相談ねっと認定FP。
監修:竹内裕詞(たけうち・ゆうじ)
弁護士

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