更新日: 2021.06.23 その他相続

「遺産?大してないから調べてない」その考えは要注意。親から借金を受け継ぐことになるかも。

「遺産?大してないから調べてない」その考えは要注意。親から借金を受け継ぐことになるかも。
今年8月9日に、これまでの通説を覆す判断が最高裁でありました。「親の親族の債務、認知後3ヶ月は相続放棄可 最高裁」(2019年8月9日 日本経済新聞)という新聞記事が報道されましたので、読んだ方もいるでしょう。
 
しかし、知らなかったらいつまでも相続放棄できると安易に考えるのはとても危険です。
 
宿輪德幸

執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)

CFP(R)認定者、行政書士

宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
相続専門の行政書士、FP事務所です。書類の作成だけでなく、FPの知識を生かしトータルなアドバイスをご提供。特に資産活用、相続トラブル予防のため積極的に「民事信託(家族信託)」を取り扱い、長崎県では先駆的存在となっている。
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資料を画面共有しながら納得がいくまでの面談で、納得のGOALを目指します。
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相続放棄とは

相続財産はプラスの財産(積極財産)と借金等マイナスの財産(消極財産)があります。マイナスが多い場合には、相続放棄をすれば、一切の財産を相続しないとすることができます。プラスの財産だけ相続して、マイナスの財産は放棄するなんてことは許されません。
 

 
相続放棄には期限(熟慮期間)が3ヶ月と決められています。通常は、被相続人が亡くなってから3ヶ月です。
 
しかし、債務者が亡くなって4ヶ月後に相続人に対して請求をする債権者もいます。「借金を知っていれば相続放棄をしたのに」という場合は、“熟慮期間のスタートは債務を知ったときから”として相続放棄を家庭裁判所が認める場合もあります。
 

今回の裁判

親が熟慮期間中に相続放棄せず亡くなり、債務が子に引き継がれる「再転相続」でした。
 

 
これまで再転相続に関しては相続人(子)の認識にかかわらず、被相続人(親)の死亡を知ったときから熟慮期間がスタートとする法解釈が通説でした。通常の相続と再転相続で、熟慮期間の解釈が違っていたのです。
 
今回、最高裁第2小法廷は「再転相続で相続人になったことを知らないまま熟慮期間が始まるとすると、相続を認めるか放棄するかを選ぶ機会を保障する民法の規定の趣旨に反する」と指摘し、再転相続人になったことを知った時点(通知が届いた日)を起算点にすべきとしました。通常の相続と同じ考え方がされたといえるでしょう。
 

 
これまでの通説に従えば、父親が亡くなったときから3ヶ月を経過すると相続放棄できないということになりますが、上記の理由で原告の相続放棄が認められました。
 

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債務を知らなかったのに相続放棄が認められないこともある

相続開始から3ヶ月経過後の相続放棄が認められなかった裁判の理由の多くは、熟慮期間の起算日を以下のように判断しています。
 
「相続人が相続すべき積極及び消極財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうるべきときから起算すべきものと解するのが相当である。」財産調査を十分に実施せずに、知らなかったとして放棄することはできない。やるべきことをやってない人まで法は助けないのです。
 

まとめ

相続開始から3ヶ月以内であれば、相続放棄は確実に認められます。まずは早急に財産および債務の調査を実施しましょう。「財産なんか大してないからほっとけ」は危険です。もし、調査に長期間かかるような場合には、家庭裁判所にその旨を申し立て、熟慮期間を伸長することができます。(民法第915条第1項のただし書き)
 

 
出典 
日本経済新聞2019年8月9日 「親の親族の債務、認知後3カ月は相続放棄可 最高裁」
 
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士
 

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