更新日: 2021.07.30 相続税

遺産を相続することになった。相続税はいくらから発生するの?

遺産を相続することになった。相続税はいくらから発生するの?
遺産を相続したときは相続税について考えなければなりません。
 
ただ、相続税は必ずかかるわけではなく、相続した財産の価格が一定額を超えたときに生じます。相続税はどういう条件で発生するのか、詳しく見ていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

相続税の概要

相続税とは、親や親族などから相続・遺贈によって取得した財産に課される税金です。相続税には富の再分配や担税力に応じた公平な税負担といった目的があり、税制として今日まで存続しています。
 
相続人が通常どおり相続したり、遺贈によって特定の財産を取得した場合はもちろん、相続人以外の方が遺贈で取得した財産も相続税の対象となります。つまり、遺贈によって財産を得た方が払う税金は、贈与税ではなく相続税になるのです。
 
基本的に相続の対象となる財産が相続税の対象となるため、お金や株といった代表的な資産はもちろん、借地権など金銭に換価できるものも基本的に全て財産として相続税の課税対象となります。
 
ただし、宗教や慈善、学術など公益目的で利用されることが確実なものや、お墓や仏壇など日常礼拝しているものなど、一定範囲の財産は相続税がかからないことになっています。
 

3600万円が相続税発生の目安

相続税は全ての相続において発生するわけではありません。基本的に相続税は課税対象となる相続財産のうち、相続人が1人の場合は3600万円を超える部分に対して発生します。
 
なぜそうなるかというと、相続税における基礎控除額が3000万円+600万円×法定相続人の数となっており、基礎控除額未満であれば相続税が発生しないからです。
 
例えば、相続人が亡くなった方の妻と長男、長女という構成であれば、少なくとも3000万円+600万円×3人で4800万円までは相続税がかからないことになります。相続税と聞くと最初は身構えてしまいがちですが、意外にも相続税がかからないというケースも多いものです。
 

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もし相続税が発生したらいくらになる? 計算してみましょう

では相続税が発生した場合、その金額はいくらになるか順を追って計算してみましょう。例として、相続人は亡くなった方の妻と成人した長男、長女という構成で、課税対象となる相続財産は1億円で計算してみます。
 
相続人以外への遺贈や相続時精算課税などの特例は無しでシンプルに考えていきます。
 

各相続人の相続税の額を概算

まず、相続税には税率があります。相続税における税率は、基礎控除を差し引いた後、いったん法定相続分(法律によって定められた財産の分配割合)どおりに財産を相続したとして相続人ごとに決まります。
 

出典:国税庁 「財産を相続したとき」
 
相続財産の総額から基礎控除を差し引いた課税遺産総額を法定相続分で取得したと仮定して、それぞれ税率を掛けた合計を相続税の総額として算出し、その総額に対して実際の相続分で各相続人に相続税が課税されます。
 
今回の例で計算すると、それぞれの法定相続分は下記のようになります。
 
課税対象の金額:1億円-基礎控除(3000万円+600万円×3)=5200万円
 

妻:5200万円×2分の1=2600万円
長男:5200万円×2分の1×2分の1=1300万円 
長女:5200万円×2分の1×2分の1=1300万円

 

出典:国税庁 「財産を相続したとき」
 
今回は法定相続分どおりでの相続で計算するため、仮の相続税額は下記となります。
 

妻:2600万円×15%-50万円=340万円
長男:1300万円×15%-50万円=145万円
長女:1300万円×15%-50万円=145万円

 
しかし、まだ完全に相続税の額が確定したわけではありません。この後、個別の事情に応じた控除が発生します。
 

控除を忘れずに

最後に控除の計算です。控除には主に次のようなものがあります。
 
(1)配偶者の税額軽減(配偶者控除)
配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した相続額が1億6000万円までか、法定相続分相当額までであれば、配偶者には相続税がかかりません。
 
(2)未成年者控除
相続人が20歳未満の方の場合は、20歳に達するまでの年数1年につき10万円が控除されます。
 
(3)障害者控除
相続人が障害者の場合は、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)が控除されます。
 
(4)暦年課税に係る贈与税額控除
相続財産に加算された「相続開始前3年以内の贈与財産」の価額に対する贈与税額が控除されます。
 
(5)相続時精算課税に係る贈与税額控除
相続財産に加算された「相続時精算課税の適用を受ける贈与財産」の価額に対する贈与税額が控除されます(控除しきれない金額がある場合には、申告をすることで還付を受けられます)。
 
上記のうち、今回の例で適用されるのは配偶者控除になります。長男と長女には特例はないと考えると、最終的な相続税額は下記となります。
 

妻:0円
長男:145万円
長女:145万円

 

相続税の発生ラインは3600万円と覚えておくとよい

相続税は全ての方に発生するわけではなく、相続人が1人であれば相続財産の価格が3600万円を超える場合に発生してきます。そして相続人が1人増えるごとに600万円ずつ、この非課税となる範囲が広がっていきます。
 
相続税は非常に複雑な仕組みです。計算式はもちろんですが、相続財産の範囲や各種特例など判断が難しい部分も少なくありません。相続税が正しく納税できていないと、脱税として扱われる可能性もあります。
相続が発生したら、明らかに相続税は不要だと判断できる場合を除いて、できる限り税務署や相続関連を得意とする税理士など専門家に確認するようにしてください。
 
出典
国税庁 財産を相続したとき
国税庁 No.4108 相続税がかからない財産
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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