更新日: 2021.10.11 相続税

亡くなった母が娘名義で定期預金。これは相続税の対象になる?

亡くなった母が娘名義で定期預金。これは相続税の対象になる?
親が子に代わって子の名義で銀行口座を開設し、将来のために定期預金をしているということがあります。しかし、その定期預金の取り扱いが相続税において問題となることもあります。
 
今回は、亡くなった母親が娘名義の口座で行っていた定期預金について、相続税の対象になるのか検討していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

親が行った子名義の定期預金は名義預金となることも

親が子のためを思って子名義で口座を開設し、お金を貯めること自体は決して悪いことでもなければ、驚くほど珍しいことでもありません。しかし、そういった預金口座は、相続の場においては「名義預金」として扱われることがあります。
 
名義預金とは、口座の名義人と実際にその口座を管理・使用していた方が異なる預金、つまり、亡くなった方名義の預金ではないものの、本人の財産として扱われて相続税が課税されてしまう預金のことを指します。
 
亡くなった方の名義ではないため、相続財産ではないと通常は考えてしまうところですが、名義預金の背景や実態によっては事実上、亡くなった方の財産であると考え、相続税が課税されてしまうことがあるのです。
 

どんなときに定期預金が名義預金となるのか?

本記事の「亡くなった母親が娘名義の口座で行っていた定期預金は相続税の対象となるのか」という疑問の結論としては、「相続税の対象となることもあれば、ならないこともある」となるのですが、なぜそうなるのか2段階に分けて説明していきます。
 
第1段階では、口座の名義についてはあくまでも判断材料の1つに過ぎず、実質的に誰が管理する財産となっていたのかで判断されます。例えば、口座の管理を行っていたのが母親であり、娘は口座の存在自体を知らなかった場合は名義預金と判断される可能性が高いです。
 
第2段階として、口座に入っているお金の出どころという点も判断材料の対象になります。仮に、預金が母親のお金であるというような場合、母親には娘への贈与の意思、娘には贈与を受ける意思がなければ、名義預金と見なされる可能性は高いといえます。
 
つまり、口座の管理者とお金の出どころはどこであるか、この2段階において娘本人の口座だと判断されれば名義預金とはならず、相続税は課税されないといった具合です。
 
余談にはなりますが、口座の種別が定期預金か普通預金かといった違いは、相続税の対象となるか否かには関係ありません。
 

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娘名義の口座の定期預金が相続税の対象とならないようにするには?

母親が行った娘名義の口座の定期預金が相続税の課税対象とならないようにするためには、先に挙げた名義預金の判断材料となる第1段階と第2段階で、念入りに準備をしておくことです。
 
これを徹底できれば、税務署に名義預金ではなく、娘本人の口座のお金であると証明できます。
 

第1段階での準備

まず行いたいのは、口座の管理者を娘にすることです。口座の存在を知らせておくことはもちろんですが、できる限り以下のような対応をしておく必要があります。


・銀行の届出印は娘のものを利用する(母親が使っている届出印と同一にしない)
・娘に通帳やカードの保管場所を知らせておき、本人がいつでも使えるようにしておく(届出印の管理も同様)
・口座に関する郵送物の送付先は娘の住所地や生活の本拠地へ設定
・口座の開設はできる限り娘に行わせる(筆跡を調査されることがある)

上記を実践できていれば、第1段階では問題がないでしょう。
 

第2段階での準備

第2段階では、口座の預金が娘のお金であると証明することが大切です。具体的には、以下を実践しておくことが望ましいです。


・毎年、母親から娘へ金銭の贈与を行い、それが口座に入ったと証明するために贈与契約書を作成する
・娘に贈与の事実を都度知らせる
・できれば母親の口座経由で入金する

第1段階と合わせて、ここまで徹底できていれば、名義預金と見なされることはないでしょう。
 

子のためにする定期預金は名義預金扱いに注意

親が子のためを思って、子名義の口座でコツコツ貯めた定期預金であっても、相続においては名義預金だと判断されて相続税が課税されることがあります。
 
子の名義で親が定期預金をするのであれば、名義預金と見なされないよう、子と話し合いながら準備を進めて行うようにしてください。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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