更新日: 2021.12.09 その他相続
認知症になった親の年金を子が引き出す。これは問題になる?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
原則、親の年金を子が引き出すことはできない
銀行は口座内のお金について基本的には口座名義人本人のお金として管理されるため、本人以外が引き出すことを認めていません。仮に子が認知症となった親の年金の引き出すというためという理由があっても同様で、原則、子が親の年金を引き出すことはできないようになっています。
また、銀行は口座の所有者が認知症であることを知った場合、その口座の利用を制限します。具体的には、口座からのお金の引き出しや定期預金の解約など、口座の契約内容に関する変更などができなくなります。
しかし、口座自体が凍結されるわけではないため口座への年金の振り込みは続きますし、各種料金の支払いの引き落としなども継続されます。
バレなければよいと考え、親のカードと通帳を使ってこっそりATMからお金を引き出し続けるという方もいらっしゃいますが、その方法は本来銀行が意図しているものではなく、万一金融機関がそれを覚知した場合、口座が思わぬタイミングで利用制限や注意・警告を受けることになります。
親が認知症になった後、年金を引き出すにはどうしたらいい?
親が認知症になり、子が年金を引き出す場合、本来の筋としては成年後見制度といわれる本人の財産を保護する制度を用いた上で引き出すことが原則です。そのため認知症になったことを金融機関に知られた後に年金を子どもが引き出すことは、成年後見制度の利用後でなければできないことになります。
しかし、成年後見制度はすぐに利用できるわけではなく、申し立てを行ってから成年後見人が選定され、その方を通じて年金を引き出せるようになるまで数ヶ月程度かかることが通常です。
そうするとその間お金が引き出せないことになり、家族の方が認知症となった方本人に関する支払いで困窮してしまう可能性があります。
そういった実情を踏まえ、現在では全国銀行協会より成年後見制度の手続きを完了していないなど、やむを得ない状況であれば個別の事情に応じて本人以外の子や親族などからの引き出しに応じるのが望ましいと指針を出しています。
全ての金融機関がこの指針どおり、個別の事情を重視して対応しているわけではありませんが、金融機関によっては相談の上お金を引き出す必要性を考慮し、子が親の年金を引き出すことができる場合があります。
その際、下記の書類を持って金融機関の窓口に相談することでスムーズに話が進めることができます。
・親名義の通帳、銀行届出印、キャッシュカード
・手続きをする方の免許証など身分証および戸籍など関係性が分かる書類
・お金を引き出す理由を証明できる書類(病院や介護施設からの請求書など)
詳細については親の口座が存在する金融機関へお電話などでご相談ください。
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親が認知症となったら、年金を引き出す前に金融機関へ相談を
親が認知症になった後は、本来子であっても親に代わって年金を引き出すことはできず、成年後見制度を利用して引き出すことになります。
しかし、金融機関によっては成年後見制度の手続きが完了する前であっても子が親の年金を引き出すことができる場合があります。親が認知症となった後、子が代わって年金を引き出したいと考えたときは、子が親のカードや通帳を使って引き出すのではなく、まずは金融機関に相談するようにしてください。
出典
一般社団法人全国銀行協会 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会
福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)
一般社団法人全国銀行協会 預金者ご本人以外の預金のお引出しには原則として、預金者ご本人の意思確認が必要になります。
執筆者:柘植輝
行政書士