内縁関係の夫婦が亡くなったら、財産分与はできるの?
配信日: 2022.01.24
今回は内縁関係の夫婦の一方が亡くなった場合、財産分与の効果が生じるかについて詳しく解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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内縁関係について
内縁関係とは、婚姻の実質はあるものの婚姻届を提出していない男女関係を指します。成立要件として、夫婦関係を成立させる合意と共同生活の実態が必要で、単なる同棲生活では内縁関係とは認められません。また内縁関係の夫婦であっても、婚姻関係に準ずるものとして、婚姻の法的効果が認められるものがあります。
例えば貞操義務(民法732条)や日常家事債務の連帯責任(761条)、同居・協力・扶助義務(752条)などはその効果が及びます。逆に夫婦同氏の原則(750条)や成年擬制(753条)などの効果は認められません。これらは婚姻届に関係する法的効果だからです。
死亡により内縁関係が解消された場合の財産承継について
では内縁関係の夫婦の一方が死亡した場合、その財産はどうなるのでしょうか。通常、内縁関係を合意により解消した場合には、財産分与(768条)の規定が類推適用されます。法律上の夫婦が離婚した時と同様、一方が他方に財産を請求できます。
しかしながら、死亡により内縁関係が解消となった場合は財産分与より先に相続が問題となります。そして相続の規定(887条~890条)は取引安全の観点から強行規定とされています。
したがって当事者による一方的な変更は許されず、内縁関係の当事者には相続権がありません。よって死亡者から内縁関係の生存者への財産承継は認められません。
ならば、死亡時にも財産分与の規定を類推適用して、財産を回収できないかが問題となります。しかしこれも判例は否定しています。最高裁は死亡による内縁関係の解消はあくまで相続の問題であると判決文で述べていました。結論をまとめますと内縁関係の夫婦の一方が死亡した場合、生存している配偶者はその財産を承継することはできません。
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対応方法
上述のように内縁関係では死亡時に相続も財産分与も認められませんが、財産を移転する方法はいくつかあります。まず生前贈与(549条)であらかじめ財産を移転する方法です。
また遺贈(964条)という手段も存在します。遺言で内縁の配偶者に財産を引き継がせることを明記しておけば、死亡時に効果が生じます。これらは配偶者が生存している時にあらかじめ準備しなければなりません。
死亡した配偶者に相続人がいない場合には、特別縁故者(958条の2)として財産を取得できます。期限は相続人がいないことが確定してから3ヶ月以内です。また不当利得返還(703条)を相続人に対して請求できるのではないか、と学会で議論されていますが認められた判例はまだありません。
配偶者が死亡した場合には、住居の問題も生じます。死亡した配偶者に相続人がいない場合は借家の賃借権が承継され、継続して住むことが可能です(借地借家法36条1項)。相続人がいる場合でも、判例によれば相続人が承継した賃借権を援用することで住み続けられます。仮に相続人による家屋明け渡し請求がなされたとしても、それ自体が法律の権利乱用となり、認められません。
さらに遺族年金などの社会保障制度については配偶者に受給資格があります。一定の書類を提出することで内縁関係を証明すれば、法律上の婚姻関係と同様に扱う旨が規定されているからです(厚生年金保険法3条2項、国民年金法5条7項)。
困ったら専門家に相談を!
内縁関係の死亡解消による財産分与は認められていませんが、いくつかの法的戦術を用いて財産を回収することは可能です。ただし専門用語が多く、個人で対応するには限界があります。死亡時にトラブルにならないようにあらかじめ遺言などの準備をしておきましょう。そして本当に困ったときは、弁護士をはじめとする専門家に相談してみてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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