父の死後、預金から葬儀費用を支払ったら相続放棄はできないって本当?入院費は?
配信日: 2022.01.24
今回は相続放棄と単純承認の違いについて説明するとともに、事例として被相続人である父の死後預金から葬儀費用や入院費用を出した場合、相続放棄が可能か否かについても解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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相続放棄とは
被相続人が死亡した時に、被相続人の財産に属した一切の権利義務を相続人が承継することを相続と言います(民法896条)。「財産に属した一切の権利義務」とは預金・株・不動産などのプラス財産のみならず、住宅ローン・借金・損害賠償金などのマイナス財産も含みます。プラス財産だけ相続することはできません。
また被相続人の財産がマイナス財産しかない場合、相続人は相続により負債を抱えることになります。そこで法は相続放棄(938条)という規定を設けています。
相続放棄は、相続人が相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります(915条、938条)。また遺留分の事前放棄と異なり、相続開始前に相続放棄はできません。相続放棄をすると、最初から相続人ではないとみなされます(939条)。被相続人の財産相続に一切関与ができず、相続放棄者の子への代襲相続も不可能です(887条2項)。
単純承認とは
相続に関して、単純承認・限定承認・相続放棄の3種類があります。通常の相続のほとんどが単純承認であり、相続人は被相続人の権利義務を無限に承継します(920条)。単純承認は届け出の提出など特別な様式を必要としません。意思表示のみで可能です。そして単純承認を避けるために、相続放棄や限定承認をします。ただし民法921条以下の規定により、単純承認とみなされる場合があります。
まず相続放棄が可能な期間を過ぎると単純承認とみなされます(921条2号)。また限定承認や相続放棄後に相続財産の隠匿や目録不記載などをすると単純承認とみなされます(921条3号)。大事なのは、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」(921条1号)です。この文言の解釈が具体的な事例と問題点になります。
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葬儀費用・入院費用と相続放棄の関係
被相続人の死後、その財産から相続人が葬儀費用や入院費用を捻出した場合、民法921条1号の「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」に該当すると単純承認とみなされ、相続人は相続放棄をすることができません。
・葬儀費用
葬儀費用は下級審判決や学説では財産の処分に当たらないと考えられています。ただし社会通念上許容される額での葬儀を行う必要があり、豪華な葬儀を行った場合は単純承認とみなされる可能性があります。
・入院費用
入院費用に関して下級審判決が存在せず、学説も分かれています。入院費用の支払いが民法921条1号但書の「保存行為」にあたるとして相続放棄が可能とする説と単純承認とみなされる説があります。したがって、無用なトラブルを生じさせないためにも、入院費用を支払わない方が無難です。
ただし、相続人が保証人である場合や同居している配偶者などの場合、入院費用を支払う義務が生じるでしょう。すぐに入院費用を支払いたいと考えるならば、自分の財産から支払うことを推奨します。領収書などを保管して、後の遺産分割協議の際に清算しましょう。
・その他財産処分にあたらないと考えられているもの
他に、経済的重要性を欠く形見分け、預金を解約して墓石を購入する行為、被相続人の生命保険金による債務返済などは財産処分にあたらないとされています。
専門家に相談を!
相続放棄は家庭裁判所への申述が必要です。加えてどの行為が単純承認の行為にあたるかは高度な知識が要求されます。さらに最高裁判決が出されると、今までの学説が変更される可能性もあります。
相続の問題を個人で抱えるには限界があります。決して一人で悩まずに、司法書士や弁護士などの専門家に相談して、より良い解決方法を探してください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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