更新日: 2022.01.28 その他相続
実家の相続。名義人が「祖父」の場合、どんな手続きが必要?
また、祖父よりもまだ上の曾祖父(そうそふ)名義になったままというケースもあるでしょう。このような場合、相続においてどのような手続きが発生するのでしょうか。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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通常の相続の流れ
被相続人が亡くなった後は、相続が開始した日(被相続人が亡くなった日の翌日)から10ヶ月以内に相続税を納める必要があります。その申告の際に必要となるのが、相続人全員による「遺産分割協議書」の作成です。
まず、相続人全員で遺産分割協議を行い、それに全員が合意したうえで作成します。この遺産分割協議書は不動産の相続登記や金融機関での手続きの際に必要となる、非常に重要な書類です。
相続人の合意内容を詳細に記載し、そのうえで相続人全員の署名捺印が必要となります。
祖父名義の実家を相続するための手続き
通常では、亡くなった親(父もしくは母)の名義であるはずの実家が祖父名義であった場合、被相続人を祖父とした遺産分割協議書を作成しなければなりません。
つまり、祖父が亡くなった時の相続人全員に集まってもらい、実家を自分が相続することに合意してもらったうえで、相続人全員の署名捺印が必要となります。
今は核家族化が進んでいますが、昔は6人兄弟などというケースも珍しくなく、祖父の相続人となると、伯父・叔父や伯母・叔母にあたる人、代襲相続が起こっていればいとこにあたる人と話を進め、遺産分割協議書を作成しなければなりません。相続人となる権利を持っている人が今よりも増える可能性があります。
日頃から付き合いのある親戚同士なら良いかもしれませんが、住んでいるところも全国各地に散らばっており、そんなに会うこともない親戚であれば、段取りを整えるだけでもひと苦労でしょう。
なかには連絡は取れたけれど、合意が得られなかったというケースも考えられます。
相続人全員と連絡が取れ、全員の合意が取れるようであれば、日程を調整して集まり、そこで遺産分割協議書を作成します。その遺産分割協議書をもって初めて祖父名義の実家を相続できます。
■相続人の合意が得られなかった場合は?
仮に1人でも合意しない相続人がいれば、遺産分割協議書を作成できません。そのような場合は、家庭裁判所に対して、自分以外の相続人全員を相手とした遺産分割の調停を申し立てる必要があります。
調停を申し立てると、家庭裁判所主導で他の相続人からの聞き取りや話し合いが進められますが、相続人の数が多いほど時間もかかり、なかなか相続登記までたどり着けないことは容易に想像がつきます。
■相続人が高齢の場合は意思能力の問題も
また、祖父の相続人であれば、父親と同年代となることも多く、年齢的にも高齢となっている可能性が高いのではないでしょうか。その際、認知症などを患っている人がいれば、その人に合意してもらうのではなく、成年後見制度を利用する必要があります。
成年後見制度は任意と法定の2種類がありますが、どちらにしても家庭裁判所の手続きが必要となり、その分時間もかかるでしょう。
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民法および不動産登記法の改正により、相続登記が義務化に!
これまでは相続登記に期限が設けられていなかったことから、登記手続きがおざなりにされていたという背景があり、その結果、上記のような問題が散見されています。そのため、民法の一部および不動産登記法が改正されることになりました。
■改正の概要
この度の改正により、登記が円滑に行われることを目的とし、不動産登記制度が見直されます。
具体的には、「相続登記・住所変更登記の申請義務化」や「相続登記・住所変更登記の手続きの簡素化・合理化」などで、相続登記の義務化関係の改正については令和6年4月1日までをめどに施行される予定になっています。
また、不動産登記法も改正され、今後「不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から2年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける」ことが決定しています。正当な理由がなく2年以内に相続登記を行わなかった場合には、過料が課せられます。
■相続登記がしやすい環境整備
また、法改正に合わせ、「相続人申告登記の新設」や登記の際の登録免許税の減免措置も検討されています。
まとめ
現行の法律上では、名義人が祖父のままだった場合、祖父が亡くなった当時の相続人全員で遺産分割協議書を作成する必要があります。登記手続きはおろそかにされがちなことから、実家の名義が2代以上さかのぼる先祖のままというケースもあるかもしれません。
ただ、今後はそのようなケースに対応するために、相続開始から10年を経過したときは個別の案件ごとに画一的な法定相続分で遺産分割が行える仕組みが確立される予定です。
自身に同様な事態が発生するおそれがあるならば、まず実家の名義が誰になっているか確認し、祖父やそれ以上さかのぼった親族のままであれば、親が生きている間に相続登記を行ってもらいましょう。
合わせて今後の法改正の具体的な動きを確認し、必要な情報を得ておくことが大切です。
出典
(※1)厚生労働省「成年後見制度」
(※2)法務省民事局「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」(令和3年12月)
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員