更新日: 2022.01.29 その他相続
親の介護は全て負担。相続でより多くの遺産を受け取れますか?
ただし、寄与分を主張するには法定相続人でなければならず、また、寄与と認められるための要件を満たす必要があります。今回は、寄与分の概要および、寄与分として認められるための判断基準について解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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寄与分とは
寄与分とは、民法904条の2に定められている「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」というものです。
2018年の民法改正により、法定相続人以外にも同じような権利が認められることになりましたが、これは特別寄与料(民法1050条)に当てはまります。
寄与分が認められるためには?
寄与分が認められる要件として、それが扶養義務を超える貢献度合いであったかどうかが論点となります。
■寄与分が認められる基準
要介護状態であったかどうかも1つの基準です。そしてその介護が無償で行われていたかどうかも基準となります。さらに一定期間継続して行われていたか、また、介護を行うために休職するなど、介護に専念していたかも判断の1つです。
■寄与分の計算方法
実際に介護に専念していた部分を加算するには、それを実際に専門的な人に行ってもらった場合の金額を基に計算します。具体的には、実際に介護士などに依頼した場合の日当に介護日数を乗じ、さらに裁量的な割合が加算されます。
また、立て替えた介護費用についても、相続分に加算できます。したがって、寄与分を主張するためには、要介護認定を受けた際の医師の診断書や、認定を受けるまでの手続き資料、さらには介護サービスの費用や、自身が介護を行った際の介護日誌などを保管しておくことが大切です。
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寄与分がある際の相続分の計算
相続人同士によって寄与分が認められた場合、まず相続財産から寄与分を差し引き、差し引いた額を法定相続割合で分割します。例えば、兄の寄与分が200万円あり、相続人は兄弟2人のみの場合、それぞれの相続分は以下のとおりです。
兄:(遺産総額-200万円)×1/2+200万円
弟:(遺産総額-200万円)×1/2
■寄与分上限
ただし、寄与分にも上限が設定されており、それを超えた額を寄与分とできません。具体的には、民法904条の2第3項に規定されているとおり、被相続人の相続財産から遺贈の金額を控除した残りの額を超えることができません。
介護以外にも寄与分が認められる場合がある
寄与分が認められるのは介護だけではありません。相続人が行った行為によって、被相続人の財産が維持もしくは増加した事実があれば認められます。具体的には以下のようなものがあります。
1.親が事業を行っていた際、それを継続するために無償でその事業を手伝っていた
2.親に対して金銭の贈与があった(ただし、事業資金や不動産取得のための資金などに限られます)
3.同居して生活の面倒を見ていた、もしくは一定の仕送りを行っていた
4.成年後見制度などで第三者に対して財産の管理を委託し、その費用を支払っていた
寄与分とは、被相続人の財産維持もしくは増加に貢献した対価ですので、上のようなケースも十分に当てはまるといえるでしょう。ただし、それを証明するための証拠が必要となるほか、それらの寄与分の計算もケースごとに異なります。
まとめ
相続が開始すると、前述のケースのように介護の負担の違いを理由に相続で差をつけたいと主張することも十分に考えられます。
話し合いがスムーズに行われ、寄与分について相続人全員の合意が得られればよいのですが、得られない場合は家庭裁判所への調停の申し立てなどに発展しかねません。
寄与分は遺贈の金額にも影響を受けるほか、遺留分を侵害するものであってはならないとされており、その判断および計算方法は非常に複雑です。無償で行っていたことを主張しても、親に対する介護だから当たり前だという考えを主張する相続人もいるでしょう。
寄与分の判断は「無償で」「一定期間」「それに専念していること」「被相続人との関係」が基準となりますが、その基準とする考え方は人によって異なります。さらに、寄与分を主張する人が生前贈与を受けていた場合はますます話し合いがこじれる原因になります。
もしも話し合いがまとまらない場合は、できるだけ早めに弁護士に相談するなどの対策をとるとともに、それが予測できるのであれば、自分の寄与分を主張できる証拠となる資料をあらかじめそろえておくことも大切です。
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員