不動産を相続したら手続きはどうする?
配信日: 2022.02.04
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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ひとごとではない相続登記の義務化
相続財産の中に不動産が含まれていた場合、「不動産を誰が相続するのか」の相続協議がまとまらずに、時間ばかりが過ぎてしまうことがあります。相続財産が多く相続税が課税される場合は、期限までに納税が必要なので遺産分割協議書の作成がなされますが、そうでない場合は、この問題が未決着のまま放置される場合も散見されます。
例えば、父親が亡くなり相続人が兄弟2人の場合、登記簿の名義変更をしていなくても相続人宛てに固定資産税の納付書は送られてきます。納税していれば、これまでは「早急に不動産の相続登記をしてください」という督促はありませんでした。
ところが不動産登記法の改正により、相続を知った時から3年以内に登記することが義務付けられました。正当な理由なく登記申請を怠った場合は、10万円以下の過料が課せられます。これはすでに相続が発生していて、まだ登記が済んでいない場合も含みます。該当するという方もいらっしゃると思いますが、期限は改正不動産登記法の施行日から3年以内なので注意が必要です。
どうして不動産の相続登記がなされないのか、理由は大きく2つあります。
1つ目は、誰が相続するのか決めていないので、登記はせずに共有財産にしている場合が多いことです。“将来不動産の管理や処分をめぐってもめることが多いので、共有財産にすることは避けるべき”というセオリーがありますが、“とりあえず”が、いつしか“ずっと”になっている場合が該当します。
2つ目の理由は、相続登記の手続きが面倒な点です。簡単な手続きで完了するのなら、いつまでも棚上げしないかもしれません。申請に必要な書類がたくさんあり、それをそろえるのが大変なのです。下表に、相続登記におおむね必要な書類を整理しました。遺言書がある場合や、相続関係によっては他の書類が必要になる場合もあります。【登記原因証明情報】【住所証明情報】に分類してみました。
【図表1】
相続登記には、相続人を特定し、相続人全員が不動産の名義変更に同意していることを証明することが必要です。書類の多さはやむを得ないといえますが、必要書類の請求先が複数におよぶことが面倒だと感じる原因となっています。
まずは現状の確認から
今回の改正では罰則も盛り込まれましたが、登記簿謄本を確認したことがない方も多いはずです。相続が発生していなくても、自分の、あるいは親の所有している不動産の登記がどうなっているかを確認しておくほうが良さそうです。長く住み続けている場合は、“先々代の名義のまま”というケースもあります。
土地や建物に関する現在の状況は法務局で確認します。登記事項証明書、地図証明書、地積測量図等の図面証明書の交付は、オンラインでも請求できます。窓口に出向くことなく郵送で受け取れます。窓口請求600円に比べて郵送受け取り500円で手数料も割安です。具体的な請求方法は法務局のホームページ(※2)を参照ください。
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専門家に依頼する場合の注意点
「調べてみたら相続登記がされていなかった」となった時、もちろん自分で登記申請はできますが、相続人が多いなどの理由で手に負えない場合もあります。このような場合は、司法書士などの専門家に依頼する必要があります。
司法書士などの専門家に依頼できる主な内容は、下記のとおりです。
●申請に必要な戸籍、不動産書類の収集
●遺産分割協議書の作成
●登記申請書の作成
●専門家による代理申請
相続人や不動産の数などによって報酬は変わってきますので、依頼する前に見積もりを取ることが大切です。筆者への相談者の中に、“専門家に見積もりをしてもらった結果、予算がオーバーしたので戸籍の収集は自分で行った”という例もありました。契約前に、必要なサービスの範囲と料金設定を詳しく調べることをお勧めします。
これに添付書類(戸籍謄本等)の取得実費と登録免許税が掛かります。
登録免許税は不動産の固定資産評価額に応じてかかる税金です。申請書に収入印紙を貼付する形で提出するので印紙代とも呼ばれています。自身で手続きしても同じように掛かります。相続による所有権移転登記の場合は、固定資産税評価額×0.4%で計算されます。
参考までに、売買や贈与による所有権移転登記の場合の税率は2%です。
最近はAIを駆使することで、申請手続きに必要な書類作成を低価格で提供するサービスもあります。相続登記の需要が増すことが予想される中、このような選択肢が増えるのではないかと考えます。放置していると、ますます面倒な状況になります。早期対応の一助にしてください。
出典
(※1)法務局「不動産登記の申請書様式について」
(※2)法務局「登記事項証明書(土地・建物)、地図・図面証明書を取得したい方」
(参考)
法務局「不動産の所有者が亡くなった」
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士